#99: 桜花舞い散る中で
#99-99: 心静かに花は散る――。
雨音が静かに浮かんでは消えていくのを聞きながら、私は今、ベッドに寝転がりながら、先の「イザベラの反乱」についてのサムが書いた特集記事を読んでいる。珍しくも
「あれからもう五ヶ月。出撃もないなんて不思議だね」
少し恥ずかしくなった私は、レオンにそう言ってみる。レオンは頷く。
「確かに不思議だ。アーシュオンにしてみれば絶好の機会なのに」
「あ、ううん。でも不思議じゃないかも」
「うん? どうしてだい?」
「だって、
実際のところはどうなのだろう。ナイアーラトテップ
だけど、それは多分カワセ大佐が考えるべきことだ。私たちは文字通りの歌姫としての活動に
私は立ち上がって、窓の外を見た。士官学校のあの部屋を引き払ってまだ三ヶ月だけど、この部屋にももう慣れた。レオンと二人で住む事を決めた小さな家だ。もちろん、セキュリティはあれこれと完璧だ。いざとなればジョンソンさんやタガートさんが助けに来てくれるし。
そして何より気に入ったのが、庭の奥、窓から良い感じの所にある大きな桜の木だった。そして、ちょうど今が見頃だ。私の隣にレオンがやってくる。レオンは本当に片時も私から離れようとしなかった。その追跡能力たるや、よく慣れた手乗り文鳥の
「雨が上がってるね」
本当だ。つい今さっきまで降っていたのに。私が来るのを待って止んだのかもしれないな、なんて
「ひさかたの光のどけき春の日に――」
レオンがふと呟いた。私は続きを知っていた。だけど、少しアレンジする。
「静心にて、花の散るらむ」
西暦二〇九九年五月。
ディーヴァのいない世界は続いている――。
静心にて、花の散るらむ: 歌姫による戦争継続のメソッド 一式鍵 @estzet
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