第2話 詐欺グループ『MINE』

 半ば呆れを含んだ表情のモントは、黒いカプセルを取り出しレイジへと手渡した。しかしすぐには【FINAL MOMENT】を出現させず、次の質問へと彼は態度と共に切り替える。


「そんじゃ次の話題や。ナイド達詐欺グループについて知ってる事、全部吐いてもらおか」


 右手の人差し指を向け、2回つつく動作。やや強面の顔も相まって威圧感はある。


「は、はい……。元々僕はとあるマフィアの一員だったんです。物心ついた時には既に。彼らは黒色を使って何かするつもりだったみたいでした……“悪魔の扉”がなんとか。

 だけどある日、ナイドさん達詐欺グループ『MINE』が襲ってきたんです。マフィアは皆殺しにされましたが、僕の命は助けられ、人質もとられ……ロックさんとナイアさんを殺すよう命令されたんです」

「うん。嘘は言ってないよ。詐欺グループの名称は『MINE』っていうのね」


 ナイアは【WANNA BE REAL】で本音を確認した後、ロックの表情も確かめた。彼はモントに哀れみの目を向け、怒りの感情は抱いていない様子。


「話は分かった。お前も……大切な人を失いたくはなかったんだな」

「許して、くれるんですか?」


 2人は顔を見合わせた。眉が下がっているモントは恐る恐る聞いていたが、ロックは優しい声色で返す。


「以前の俺なら許していただろうな。だけどな……俺とナイアを襲ったのも事実。いくら事情があっても、不快なものは不快なんだよ。もう治してもらったが、実際傷もかなりできた」

「ご、ごめんなさい……」


 反射的に中身のない謝罪を送ったモント。一度でもミスを犯してしまった場合、落とし前を付けなければならないのが裏社会。モントはそれを理解していたからこそ身体を震わせていた。


「……なぁモント、俺達と一緒にその人質を助けるつもりはないか?」

「え?」


 予想外の提案と救済に、モントは口を開け唖然としていた。


「この事を警察に話して、後は任せる……それも選択肢の1つではあったけどな。そうなったらお前は捕まるだろうし、人質になったお前の大切な人間も始末されるかもしれない。……まあ、警察に話せない理由としてはナイドの能力の事もあるんだが」


 少し照れくさかったらしく、彼は視線を外し右手で髪の毛を弄った。するとモントは小さい口で小さい笑みを作る。前髪が長いため右目はやや隠れていたが。


「わかりました……ありがとう、ございます。裏切ったりは、絶対にしませんから」

「ロックお前ほんま人たらしやんけオイ! オォイ!」


 少しだけだが頬を赤くしたモントを見ると、レイジは嫉妬から悶絶。オレンジ色の壁に両手を貼り付けプルプルと震え始めた。


「ちょっとレイジうるさい……モント、気にせず『MINE』の他のメンバーについても教えてくれない? 兄さん……ナイド以外にも」


 ナイアにとって大切な人間は兄であるナイド。彼の場合は完全に悪に染まっていたが、ナイア自身は信じきれずモントの証言を聞きたがっていた。

 ナイアは壁からレイジを引き剥がし、無理やり正座で隣に座らせ、モントの話を聞くよう顔で訴える。


「はい、ナイドさん以外で名前を知っているのは……“ジャム”という方のみです。他のメンバーはリーダー含め3人いるという話ですが、姿も見ていません……」

「いや充分だ。ナイドはメンバーの能力をある程度漏らしていた。……たった5人、思ったより人数は少なかったが」


 申し訳ない、という感情をモントは表しながら小さい声で話したものの責める人物は誰一人としていなかった。


「俺が聞いた限りでは……

 “外見を若返らせる”能力

 “肉眼で見た相手の思考を見通す”能力

 だな。ジャムって奴がどちらかだとありがたいんだが」


 かつてロックとイアの2人が、ナイドと対峙した際に聞いたメンバーの力。その時のナイドは余裕綽々だったため安易に話してしまっていたが、今こうして墓穴を掘っていた。


「だが俺達も、迂闊に調べられない理由がある。それはナイド……あいつが持つ能力だ」

「私にも明かしてくれなかったんだよね、兄さんは」


 信用してくれなかったのか、それとも巻き込みたくはなかったのか。とナイアは考え込んだが、もちろん答えは出ない。

 彼女の様子を鑑みたロックは、すぐさまナイドの能力について話し始める。


「【MIDNIGHTER】。それが奴の人形ドールだ。そして能力は“自身の事を調べようとしてきた人物の個人情報がデータとして手に入る”とかいう、詐欺グループみたいな悪人にはうってつけの力……!」

「そっ……か」


 憎悪に溢れた表情と声で、兄の能力をようやく知り得たナイア。やはり複雑な気持ちになっており下を向いていた。


人形ドール自体の性能も高い。ロボットの様な見た目をしていて、長い手足の攻撃に加え、口から弾丸も発射してきたんだよ……!」


 彼の脳裏には、イアが息を引き取る瞬間の光景が過ぎった。思い出したくないと願っていても、視界を覆い尽くす程の思い出は蘇る。



『ロッ、ク……うん。大、丈夫だから……。安心、して……だいじょ、うぶ』



 心臓に弾丸がめり込み、血反吐を溢れさせていた時の言葉。『大丈夫』ではないというのに嘘をついていた。


 優しい、嘘を。


 ロックは度々あの時の光景に支配されていた。レイジはとっくに知っていたが、歯を食いしばり額と手の甲に血管も浮き出ていた彼の姿に、ナイアとモントは多少の恐怖と……同情を抱いてもいた。

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