第2章 汚い、執着

第1話 色の基礎能力

「ほ〜……つまり、2人とも詐欺グループに関係のある人間って事やな!」


 勝手にテンションを上げていたレイジが大人しくなるまで、なんと1時間かかった。状況を理解し話を聞き入れた時には、既に外が暗くなっていた。

 青いズボンで胡座をかくレイジは常にニヤニヤとした様子で女性陣2人を見つめている。比較的強気な性格を持っているナイアはまだしも、内気なモントは見るからに怖気付いていた。部屋の端に居座り、俯き床に視線を向けて。


「美少女2人をたぶらかして、ほんま悪いやっちゃな~とか思ったけど違ったみたいやな! こっちが悪かった!」

「さっきからずっと説明してただろ……モントも怖がってるしお前、それだからモテないんだよ」

「ンンンンゥゥゥゥ!?!? 一言余計やねん一言ォ! だいたい俺に相応しい女性はなぁ!!」

「ちょっちょっと待って!! ここに来た目的は、モントから色々と聞き出す事。そうでしょ?」


 ロックに突っかかったレイジの肩を掴み、無理やり引き剥がしたのはナイア。嘘のない真っ直ぐな瞳を目にしたレイジは口を閉じ黙りこくる。


「それにロックも。レイジが大人しくなったんだから、無駄な事は言わないの!」

「うっ……」


 人差し指を向けきつい物言いで注意した。ロックはふざけて軽口を叩いたつもりだったが、ナイアの言い分が正しいと感じやはり黙る。


「ほらモント、私は襲ったりしないからこっち来て?」

「あ……はい」


 自身の人形ドールを壊した張本人の元へ歩き、彼女の右腕をぎゅっと抱きしめる事で寂しさを紛らわしている。反抗する手段はもう無いという事実や、ナイアは必要以上にいたぶってこないと判断し従っていた。


 彼らなら、大切な人質を救ってくれるかもしれない。そうモントは思い始めてもいた。


「それにしても、まさか『黒色』なんてな……12色や『白』にも当てはまらない存在。その事も気になるな」


 モントの、ボサボサと整えられていない黒い髪。ロックはそれを見つめ呟いた。恥ずかしがったモントはロックとは反対側の右方向に顔を少しだけ傾ける。


「12色には基礎能力が有るものと無いもので分けられるだろ? モントの【FINAL MOMENT】の特殊能力はこの目で見たが……基礎能力は何かあるのか?」

「あっあの……僕、人形ドールの事とか全然知らなくって。基礎能力、とかも。気づいたら裏社会の組織の一員で……あんまり勉強とか、してなかったんですよ」


 あくまで最低限の自分語り。質問をしてきたのはロック側のため、モントから話を広げる事はせず自分が自分の人形ドールの事を説明できない理由を明かした。


「だったらレイジ。お前が教えてやれよ。この中だったらお前が人形ドールに詳しいし……信頼取り戻せるかもな?」

「一言余計じゃないやん! 一言重要やん! よっしゃよく聞いとくんやぞ!!」


 相も変わらず大声だったためモントは怯む。しかし目線は離さずレイジに向いたままだった。


「ええか? 『人形の白』の力によって、全人類に等しく人形ドールが与えられてんねん。人形ドールの形状と特殊能力は総長の娘であるマイの知識、経験、願望が元になってんのや」


 この部分はモントも知っていた様で、コクコクと頷いて応じていた。


「んで、人形ドールは12色に分けられるんや。基礎能力が有るものは……


『雷を操る黄色』

『火を操る赤色』

『水を操る青色』

『氷を操る水色』

『風を操る緑色』

『自然を操る黄緑色』

『大地を操る茶色』

『肉体を操るベージュ色』

『機械を操る灰色』


 やな。あとの基礎能力が無いものは、代わりに特殊能力の傾向が決まっとる。


『感情を操る紫色』

『空間を操るオレンジ色』

『時間を操るピンク色』


 の3色やな。医療関係者はベージュ色が多いし、俺みたいな整備士は灰色ばっかりや。植物や動物関係も色々扱える黄緑色もなかなか当たりって感じするで。どや? 分かったか?」


 理解できるように、レイジにしては親切な口調で説明を終えた。受け取ったモントは少し考え込んだ後、再び頭を上げ自分なりの答えを口にする。


「だいたいは、理解できました……。でも僕の『黒色』は多分、基礎能力が無いと思っています」

「私の【WANNA BE REAL】は『緑色』で車輪に風を纏わせる事ができたけど、モントはそういうの無かったもんね」


 すかさずナイアがフォローを入れた。先程のモントとの戦闘時も、彼女はオートバイやスケートボードによる物理攻撃のみを行っていた。ロックの背中にキックを直撃させた時には黒いオーラを纏っていたが、それはあくまで人形ドールにこびり付いていたものが少し移っただけ。


「なるほどなぁ~。詐欺グループの仲間って聞いたからどんな奴なんかと思っとったけど、素直な女の子やんけ。どや? 人形ドールをちょっと弄らせてくれへんか?」


 友人に怪我を負わせたモントに多少の苛立ちを覚えてはいたが、人質を取られているという事情も考慮してレイジは提案をした。未知なる『黒色』の人形ドールを自らの手で好きに弄り回せるチャンスもあったからだが。


「……別に良いですけど。変なものとか、付け足さないでくださいね?」

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