145 異世界帰還者の胎動 10
挑戦者その2から5はダイジェスト。Dieジェスト。
いや、殺しちゃいないけど。
二人目は聖灰将軍レベル230のおっさん。元々、どっかの寺の坊さんらしい。
死体の灰を媒介に死者の全盛期の影を召喚する【支配の死灰】というスキルで召喚して戦うスタイルだ。
しかもたくさん。
さすが将軍だ。
というわけで二回戦目も【無尽歩兵・外装付き】を召喚して対抗。
数体数の争いだ。
質でも負けちゃいないと言いたいが【無尽歩兵】は数の暴力用なので一体一体はそこまで強くない。
十分ほど押し合いをしつつこちらが押し負け出したかも~? なところで【越屍武者】を投入。武者な巨人の大包丁で全部薙ぎ払って、坊さんが降参宣言。
三人目は超越武士レベル250。三国志な武将の格好をした高校生ぐらいの少年だ。
一騎打ちを強制する空間を作る【勝敗はこの一戦にあり】というスキルを使用してくる。
この空間に入ると、とにかく複数で戦う手段が封じられる。
外部からの補助も遮断され、スキル使用者が目標と定めた対象以外は空間外に追い出され、中に入ることはできない。
空間を解除するには、一騎打ちに応じて勝利しなくてはならない。
というわけで、勝った。
一騎打ちであれば、複数を召喚する手段でなければなんでもよいのなら、俺の手数はまだまだたくさんある。
というわけで勝った。
奴の方も一騎打ち限定で超強化される能力だったんだろうが、金さんの時のように肉弾戦限定にでもしない限り負けることはない。
他の試合もあるからこれもまた十分ぐらいは付き合いつつ、その後は魔法の多数同時展開で圧倒して勝利。
四人目は光輪魔女レベル230の中学生ぐらいの少女。
ちょっと魔法少女な格好をしている。サポーターの魔導知性もなんかマスコットっぽいし。杖もゴテゴテしいし。
でもこんなところに一人で挑戦してくるぐらいだから気が強そうなのがバツだな。
見ての通りに魔法戦が得意。しかも光系。レーザーとかビームみたいな感じなのをバンバン撃ってくる。しかも曲がる。
ホーミングレーザーである。
面白いのでこちらも光系の攻撃魔法で対抗。精霊魔法である。
だが、それ以上の特徴がない。
なんか普通だからちょっと早めに勝負を付けようと強めに攻めに行ったところで彼女が本領を発揮した。
【英雄定石】それが彼女の持つ特殊スキルだ。
ピンチになると途端に強さを増して対抗してくる。
「お?」と思ってこっちもさらに強めに出たらまた強くなった。
どうやらそういうものらしい。使い手の方は強くなった力に振り回されているのに、それでも成果としての魔法は正確無比という有様。マスコットの魔導知性がサポートしているにしても無理がありと思うんだが?
まぁ、スキルってそういうものなんだろう。
ずるいね、スキルずるい。
面白いのでこっちも人造精霊のサポートを次々増やして超高速魔法合戦に突入。結界に影響が出ないように別の結界を展開した上でガリガリとやり合った結果、ついに彼女の方が燃え尽きて倒れてしまった。
「はふ~ん」とか言って倒れるあたり、やはり狙っているな、貴様。
五人目は猛毒王レベル200。本日初めての王だ。個人情報の公開を拒否して気取った仮面をしているが、中身は三十代の医師である。
毒が大好きな医師。
なんかもうやばいね。患者大丈夫なのか?
猛毒王の特殊スキルは【激効反転】
自身と指定した対象が摂取した物の効果が反対になるというものだ。
毒が薬に薬が毒に、という奴だな。
それに加えて『王』特有の特定の支持者がいると強くなるというパターン。こいつの場合は【毒の縁環】。
猛毒王の毒を体内に残した者が多ければ多いほど強くなるという。
なぁ、ほんとにこいつの患者は大丈夫なのかね?
で、こいつとの試合だが残念ながらそんなに盛り上がらなかった。
こいつとしては観客席で売っているビールにちょっとだけ酔いが早くなる微毒を混ぜて自身を強化するつもりだったみたいだが、そいつは事前に防がせてもらっていた。
というわけで当てが外れた王様はそこまで強くなくてあっさりとダウン。
毒とか撒いてたけど、そんなもんは試合用にお洒落させた【大食い紳士】に吸わせて終了だ。
と、いうわけで六人目。
本日の目玉。
斑鳩サチホちゃんである。
「SA・CHI・HO!!」
観客席の一部から応援の声が湧く。
メジャーデビュー第一弾のシングルが好調なのだそうだ。
なによりなにより。
サポートエリアにいるのは二人だ。
独特な二人。
でっぷり太った一人は光る棒を両手に持ち、さらにハチマキにも何本も差してある。
もうなんか……「これから藁人形でも打ちに行くんですか?」とか言いたくなるのは俺だけか?
他にもサチホちゃんのブロマイドを繋げてタスキみたいにしているのを両肩から掛けていたりのぼりみたいなのを背中にWで差していたり……いや、あれは戦国武将の旗指物のつもりなのかもしれない。
とにかく、サチホちゃんのすごいファンであるのは確かっぽい。
で、もう一人。
これはなんかビジュアル系っぽい格好のお姉さん。音楽業界にいそう。
まあもう【鑑定】済みだから言っちゃうが、サチホちゃんのメジャーデビュー曲を書いた作曲家さんである。
あんな格好だけど、アイドル向けのキラッキラした曲が得意なのだ。
で、二人ともがちゃんと異世界帰還者だったりする。
奇縁が繋いだ三人というやつだな。
「サチホちゃんが挑戦してくるっていうのは意外だったね」
舞台に上がって来たサチホちゃんに話しかける。
「わたしもびっくりしました。でも、織羽さんと同じ異世界帰還者になれて、うれしいです!」
「ふうん? そりゃよかった」
首にかけた特製のヘッドホンを弄りながらサチホちゃんが言う。
「で、なんで挑戦してきたの? お金欲しかった?」
サチホちゃんが異世界帰還者になったことにはそんなに驚いていないが、彼女がこの試合に名乗り出たことには驚いている。
いや、五百億円って人格変えるには十分な額かもしれないけどね。
「いいえ! お金は欲しいけど、織羽さんに立てついてまでは欲しくありません!」
「?」
もっとわからない。
「んじゃ、なんで?」
「……実は、わたしが戦いたいのは織羽さんじゃないんです」
「は?」
どゆこと?
「わたしが戦いたいのは……瑞原霧さん! あなたです!!」
んんん?
「どちらが織羽さんの隣に相応しいか、勝負です!」
なんだこの流れ?
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