成人式 SS 管理人さんの成人式


 注:このお話は本編と一切関係ありません。IFストーリー的なものです。


 ★★★


 今日は成人式。二十歳になったことをお祝いする日だ。俺自身二年前に、地元に帰って式に参加したわけだが、なんだかんだ楽しかった。式の内容自体は面白くなかったが、しばらく会っていなかった人に会ったり、思い出話をしたりする機会が得られたから。


 でも22歳になった俺にはもはや関係ないことじゃないか。なんて思われるかもしれない。だけど、そうじゃない。俺にとって大切な人がそんなお祝いの日を迎えたのだから……。


 「……どう、ですか?」


 「……めちゃくちゃ似合ってるよ」


 俺の最愛の恋人である柏柳美来の晴れ着姿は……本当に素晴らしかった。赤色の振袖が美来の魅力とマッチして、なおかつ髪型も綺麗に整えられている。そんな美来の素敵な姿に、ドキッとしないわけがない。


 「えへへ……良かったです。泰さんにそう言ってもらえたら、もう私感無量ですよ」


 「まだ式始まってもないだろ? でもまあ、俺も美来の晴れ着姿見れただけで……なんかこう……涙でそう」


 「え!? そ、そんな!」


 「いやだってさ。美来と付き合ってから三年間。高校生だった美来も俺はよく知ってるけど……こうして、美来が二十歳になって晴れ着姿も見られるなんて、俺は幸せ者だなあって……」


 「……それは私も一緒です。こうして泰さんに私の晴れ着姿を見てもらえて……二十歳になっても、恋人でいられるなんて……世界で一番幸せですから」


 「なら俺だって世界で一番……」


 「はいそこ。イチャイチャもほどほどに」


 こんな風にイチャイチャしてると、横から美来を着付けしてくれた俺の母さんが釘をさす。わざわざ来てくれて着付けもしてくれたんだから、感謝しても

仕切れないけど、二人っきりになれないところは難点だな。


 「美来ちゃんの可愛さを堪能したいのは泰だけじゃないの。ほら美来ちゃん、貴女のお母さんに写真送るから何枚か撮らせてね」


 「は、はい!」


 高校三年の時に海外から帰ってきて、今は京都の大学で働いている美来のお母さんと俺の母親はどうやら仲良くなったらしく、ラインも繋がっているらしい。そのため仕事で来られない美来のお母さんの代わりに、写真をとってあげてるわけだ。


 にしても……ほんと可愛いし、美しい。


 「見とれてるんじゃないよ泰。次はあんたと美来ちゃんのツーショット撮るわよ」


 「え、お、俺も?」


 「そりゃそうよ。美来ちゃんのお母さんからのリクエストだもの。ほら、結婚式で使うかもしれないんだから」


 「い、いやいいよ俺は」


 俺もちゃんと恥にならないぐらいの身なりは整えてきたけど、それでもこんな素晴らしい姿の美来と一緒に撮るのはなんだか恥ずかしい……。


 「……私、泰さんと一緒に撮りたいです、写真」


 「っ!」


 だけど、美来にこう言われてしまっては撮らないわけにはいけない。俺は美来の隣に行って一緒に写真を撮る。その際……


 「み、美来!?」


 美来は俺の腕にぎゅっと腕を絡ませてきて、密着した状態で写真を撮る。


 「……これぐらい幸せだって、お母さんに伝えたかったので」


 「そっか……。全く、昔と比べてたら美来はほんと積極的になったなあ」


 「や、泰さんだけですこんなことするのは!」


 慌ててあたふたと弁解する美来の姿も可愛い。


 「知ってるよ。ごめん、少しからかっちゃった」


 「もう……。でも、泰さんのそういうところも大好きです!」


 にっこりと笑いながら、美来がそう言ってくれる。ああ、やっぱり可愛いな、俺の彼女は。


 「おーい二人とも。そろそろ行かないと遅刻するぞー。ラブラブもそこまでにしときなー」


 「わ、わかったよ!」


 母さんが急かしてくるので、俺たちは会場に向かう準備をさっさと済ました。俺は美来を送るために一緒に行くんだけど。


 「さて、それじゃあ行こうか美来」


 「はいっ!」


 そして俺たちは手を繋いで一緒に歩き出した。四月から俺は社会人、美来と会える機会はどんどん減ってしまう。だけど……こうして、いつまでも一緒に入られたらいいなって、つくづく思う。


 「……泰さん、四月からは一緒にいられないんですね」


 どうやら美来も同じことを思っていたようだ。

 

 「まあこればっかりはね。でも東京にいるから、会おうと思えば会えるよ」


 「……待ってます。……私も、毎日会いに行きますから」


 「無理はしないでよ。まあ、でも楽しみにしてる」


 「ふふっ、楽しみに待っててください。でも、まだ二ヶ月は一緒にいられますから。そこでいっぱい泰さんに甘えます」


 「どんとこい。全部受け止めるよ」


 「さすが泰さん!」


 こんなやり取りをしながら、気づいたらもうすぐ会場に着く。なんか、本当に美来との日々はあっという間だ。


 「……なんだか、大人になるってことを実感しますね。もうすぐ成人式だと思うと」


 「わかる、その気持ち。でも中々心は大人になれないんだよなあ……人間って難しいよ」


 「私からしてみれば、泰さんは立派な人ですよ」


 「美来がそう言ってくれるならそうかも」


 「ふふっ。……泰さん、私、大人になりますよ。……だ、だから……そ、その……」


 「……」


 美来が言いたいこと。それはきっと、俺たちの関係をさらに深めることだろう。美来も二十歳になって、周りを見渡せばしてる人だっている。俺だってしたい。だけど……。


 「……もうちょっと、待ってて。俺が美来を絶対幸せにできる自信がついたら……結婚しよう」


 いつになるかはわからない。だけど、絶対する気持ちは嘘じゃないから。


 「……絶対、待ってます。……遅かったら、私からプロポーズしますから」


 「あはは……頑張るよ。でもまた、告白の時みたいに同時になったりして」


 「それも素敵ですね……。あ、着きましたよ」


 そして、会場に着いた。大切な話をしたことでちょっとまた涙腺が緩くなってる気もする。だけど、今日の主役は美来だから、俺が泣いても仕方がない。


 会場に入るのは成人を迎えた人だけ。俺はここで待ってないと。


 「それじゃあ、いってらっしゃい」


 俺は入り口で美来を見送って、そういう。


 「行ってきます!」


 美来はそれに、笑顔で返してくれた。


 俺たちがこれから数年後。結婚した時にこの時撮った写真は……やっぱり使われたなあ。それぐらい、思い出深い日だったから。


――――――――――――

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「専属執事をやめたら幼馴染のお嬢様がやけにグイグイくるのだが」

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