管理人さんと一緒に


 美味しいランチを堪能した後、俺らは観光がてらいろんなところを回った。お土産をどれにするか悩んだり、珍しい調味料を見つけて喜んだり、近くにある神社によってお参りしたり……本当に、楽しかった。


 でも楽しい時間はあっという間に過ぎ去る。もう夕暮れ時となって空は美しい紅色になっていた。


 「……じゃあ最後は海見て帰るか」


 なので最後に、この楽しい時間を締めくくるにふさわしいところだと思う海を見て帰ることにした。……もちろん、俺がすべきことをするためにでもあるけど。


 「……す、すごく……綺麗ですね」


 浜辺までやってくると、美来の言う通り圧巻の景色が広がっていた。紅色の空が海を照らして優美な色となり、俺も見とれてしまう。


 「……座ろっか」


 「……はい」


 俺たちは浜辺に座り、ぼんやりと海を眺める。静かに何度も繰り返される海の音は心地よくて、下手したら眠ってしまいそうだ。


 「もう、半年ぐらい経つんですね。泰さんと出会ってから」


 「そういえばそうか。……なんか、あっという間だったよ」


 「本当に、楽しいことだらけの半年でしたからね。一年前の私じゃ考えられません」


 「そういってもらえると嬉しいよ。まあ、俺も美来がいたから楽しく平和に大学生活送れてるし、感謝しかないや」


 「私こそです。泰さんがいたからここに来ることができました。感謝しかないですよ」


 お互いに海を見つめながら、お互いを褒め合う。思えば俺たちってお互いを褒めまくってる気がするな。それぐらい支え合いができてるってことなのかもしれないけど。


 (……どう言うべきなんだ)


 しかし、なかなか俺から告白を言い出すことができない。そもそも俺は自分から告白したことがないから、どうするのが正解なのかがわからないのだ。


 事前準備をしなかったわけじゃない。いろんなサイトを見て理想の告白とはどう言うものかを調べてはいる。けどさ、いざやろうって時になると調べたのが頭の中でごっちゃんになって……まとまらない。


 ……ああもう! なるようになるしかないだろ!


 「あのさ!」

 「あの!」


 俺が美来の方を向いて話しかけると、美来も俺の方を向いて話しかけてきた。思いっきりシンクロして驚いてしまったが……お互い一向に目を逸らさない。


 「……俺から話したいこと言っていい?」

 「……私からでもいいですか?」


 また同じタイミングで同じことを言ってしまった。


 「……じゃあ一緒のタイミングで言おうっか」


……100じゃない。けどきっと言いたいことも同じなはずだ。だからいっそ一緒に言ってしまった方がいい。


 「……わかりました。それじゃあ一緒に言います」


 俺たちは一旦深呼吸をする。お互いに緊張した表情をしているから、少しでもそれをほぐすためにしたんだろう。


 そして……。


 「俺は」

 「私は」


 「美来のことが」

 「泰さんのことが」


 「……大好きだ」

 「……大好きです」


 お互いに、真剣に目と目を見つめあって言ったその言葉はもう取り消せない。俺たちはお互いに、告白をし合った。大好きの感情を、ぶつけた。


 「……!!!」


 美来は蒸発しそうなぐらい顔を真っ赤にして、言った後に目をキョロキョロとさせ始めた。かく言う俺は……まあ、あの時の会話を聞いていたから知ってはいたけど……それでも、顔が焼けそう。


 「……聞いただろ、俺の親父のこと? 俺、そん時話聞いてたんだよ」


 「……!!! !!! !!!」


 美来は言葉にならない驚きを繰り返して、それでも俺から顔はそらさずに話を聞いてくれる。……クッソ、本当に可愛い。


 「ずっと怖かったんだ……自分が誰かに暴力を振るっちゃうんじゃないかって。でも美来がそれでも一緒にいてくれるって言ってくれて……決心がついたんだ。もちろん、こんな大切にしてくれる人に暴力なんてありえないけど」


 「……そう、だったんですね」


 ようやく少し落ち着いた美来は、ウンウンと頷いて話を聞いてくれる。


 「それに……美来がいないと多分もう俺ダメだと思う。なんか……一緒にいないと寂しいって言うか……」


 「……私もです。泰さんがいない二週間……とっても寂しかったですから」


 「……そっか。やっぱ俺ら、似てるね」


 「……間違いないです。……じゃあ次は、私が話しますね」


 「……うん」


 美来は真っ赤になった顔で、俺の顔を改めて見つめる。それを俺も受け止める。


 「初めて会った時……助けてもらった時から素敵な人だと思ってました。でも、こうして関わりを深めていったら……どんどん魅力的な人だってことを知って……。気づいたら、大好きになってたんです」


 「……それは美来もだよ」


 「……そうやって私のことを褒めてくれるところも大好きです。それに……私、親しい人なんてほとんどいません。ずっと一人だったんです。だから学校もサボったりしてたんです。それで平気だと思ってたんです」


 「……そっか」


 「……でも、泰さんは違います。いないとダメなんです。だから……私とずっと一緒にいてください!」


 美来はそういうと、俺に抱きついて涙を流す。ぎゅっと抱きしめられて、なんだかもう逃がさないと言われているようだ。かく言う俺も美来の小さな背中に手を回してるけど。


 「それは付き合うってことでいいの?」


 「それ以外の何があるんですか。ここにきて意地悪しないでください」


 「ごめんごめん。……もちろん、俺もそのつもりだよ。美来の自慢の彼氏になれるよう、頑張るよ」


 「私こそ……泰さんの自慢の彼女になりますから」


 お互いに思いをとことんぶちまけて、一緒に涙を流して……抱きしめ会って……。八月も終わりを迎えるこの時期に、俺たちは恋人となった。


 「……じゃあ泰さん。これは恋人記念です」


 「? 恋人記念って……っ!?」


 それって一体なんだろうと思ったら、美来は躊躇なく俺の唇にキスをしてきた。突然のことに俺の頭の中は真っ白になり、何も考えられなかったけど……。


 「……大好きです!」


 キスをした後、熱に溶かされたかのような、甘い笑顔を俺に向けてくれたことで、美来の俺への好意はとことん伝わってきた。ああ、なんて可愛いやつなんだ。俺の彼女は。


 そして、俺らは恋人になったわけなんだけど……。ここの結婚式場で夫婦となるのは……もっともっと先の話だ。


 ――――――――――――


 結婚までやるんで続きます。多分砂糖マシマシになるんじゃないでしょうか。


 ただ更新速度は落ちます(およそ週1〜2)

 理由は二つあって、大学の課題を片したいのと、書籍化したいんでカクヨムコンの選考通るように余力を残しときたいので。

 皆様にはご迷惑をおかけしますがご理解いただけると幸いです。

 

 

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