管理人さんとランチ


 「着いたあ!」


 長い運転の末、お昼時にようやく俺らは目的のレストランに到着した。まあ専用の駐車場についただけでここから少し歩くんだけど、それでも開放感がすごい。


 「お疲れ様です泰さん。…見てください、とっても綺麗な景色ですよ!」


 車から降りると美来が太陽の光に照らされて美しく輝く海に感動していた。かく言う俺も本当に綺麗な海だなあと思って見入ってる。


 「ほんと綺麗だな。この景色を側に食べるご飯は美味いに間違いない!」


 「ふふっ、きっとそうですね。それじゃあ行きましょうか」


 そして俺らはレストランに向かって歩いていく。予め予約はしてある、と言うかしないと入れない人気店だから急ぐ必要はないんだけど、ぶっちゃけ腹が減って早く食べたい。だから少し足取りが速くなってる。


 「楽しみですね! ワクワクです!」


 それは美来も同じ。子供みたいにスキップしながらワクワクしてる。……ほんと可愛い。


 「いらっしゃいませー」


 店に入ると、賑やかな光景と美味しそうな香りが漂っていた。さすが人気店、とても忙しそうだ。


 「予約を入れてた丹下です」


 「丹下様ですね。お待ちしておりました、お席までご案内いたしますね」


 店員に案内された席は、窓の近くで海がよく見える。これはあたりの席だ。


 「それではお水をお持ちいたしますので少々お待ちくださいませ」


 お水が来る前に予め注文を決めておくかと思い、俺らはメニュー表を見る。わお、わかってはいたがお高めのランチだ。その分期待が膨らむけど。


 「たくさんあって迷っちゃいますね。泰さんは何にしますか?」


 「俺はこのシェフのおすすめランチにするよ」


 「じゃあ私もそれにしよう……いや、でもこれも捨てがたいし……」


 美来はメニュー表とにらめっこしてるみたいに悩みに悩んでいる。よほどここに来たかったんだろうな……連れてこれてよかった。


 「お待たせしました。こちらお水です」


 「あ、ありがとうございま……!」


 さっきと違う店員がお水を持ってきたみたいだけど……めちゃくちゃ美人だな。それになんか美来があわわわって驚きの表情を見せてるけどどうしたんだ?


 「あ、あの……九条すみかさんですよね? わ、私九条さんの写真が大好きなんです!」


 あー! この人が美来の好きな写真家さんか。きっとこの人に会えたらって思いもあってここに来たかったんだろうから、今日はとことんラッキーだ。


 「それはありがとうございます。喜んでもらえて私も嬉しいですよ。ところでお二人は今日、デートでご来店なさったのですか?」


 「え!? い、いやえっとその……」


 「ち、違います違います! な、夏休みだから一緒に来たってだけで……」


 「そうなんですか? ごめんなさい、てっきり二人は恋人なのかと思ったのでつい」


 はたから見たらそう見えてしまうのか……。それぐらい俺らが仲よさそうに見えるのはいいことだろうけど。一方美来の方は……オーバーヒートしてんなこりゃ。


 「でも、実際カップルなりたてのお客様は多いんですよ。どうやらこの海辺で告白すると、永遠に結ばれるっていうジンクスもあるみたいですから」


 「……え」


 そ、そんなジンクスがここにあったのか。確かにロマンティックな場所だからなあ……あってもおかしくないか。


 「ごめんなさい、無駄話が過ぎましたね。それではご注文をお伺いします」


 そんなこんなで俺らは注文を済ませてランチを待つ。


 (……永遠に結ばれる……か)


 自分のうちに秘めた思いを、この後伝える緊張感を持ちながら。


 ちなみにこの時は知らなかった。


 (……永遠に結ばれる……そうなりたいな)


 美来も俺と同じく、秘めた思いをこの後伝える緊張感を持っていたことを。


  ――――――――――――


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