第108話  突発クエスト〖奴隷解放〗

連れて来られた兵士に促され、オハナと向かい合わせになるように用意された椅子にちょこんと座ったサーチェは、俯きがちにオドオドしながらも時々ちらっとオハナと目が合う。


何故こんなにも怯えてるのかな?

オハナの〖威圧〗は作動してないから別にそこまで挙動不審にならなくても…………。

そうしてサーチェの視線の先を辿ってみて、何となくその理由を察した。


だってクロードがまだ治療中なんだもの。


多分だけどサーチェからすれば次は自分がああなるかもしれないとか思われてるっぽい。

そりゃそうか、殺し合った仲の相手からいきなり呼び出しくらった先で仲間が傷を治療中だったりすればもう……………あれ?もしかしてオハナがやったと思われてる?

ボコボコにしたのは7号なのに…………まぁ好きにさせたのはオハナだけど。


「…………貴女が正直に全てを話してくれたならこちらは何も手出ししません」


オハナとしては清純派な優しいイメージで接したかったけど、もう無理そうだったからその怯えを利用させてもらうことにした。

こんな状況で「貴方には何もしない」とか言ったところで説得力無いもんね。

面会が唐突に尋問になっちゃった気がするけど、話が聞けるならもうどっちでもいいや。


「な、何をお話すれば……―――?」


とりあえずの警戒心はあるけれど、状況も手伝ってすんなりと話を受け入れてくれたみたい、変に拗れて話が何も聞けないよりはマシだもんね。


「貴女の事全部―――そうねぇ、どうして呪いの武器なんて持たされて戦わされてたのかってところから話してくれないかな?」


オハナの言葉にサーチェは一瞬「どうしてそのことを?」って顔をしたけど、すぐ傍で治療中のクロードを見て彼女の中で何かが腑に落ちたようだった。


「アナタも……………と同じようにッ!!を利用するつもりですかッ――――!?」


今までオハナにビクビクして視線も碌に合わせようとしなかったサーチェが、今は顔を上げて真っ直ぐにオハナを見据えるだけじゃなくて、オハナを威嚇してきていた。


「―――何も話すことはありませんッ!!みんなを犠牲にするくらいなら私はこの場で何度殺されたって―――――」

「見誤るなッ!!」


彼女を諫めたのはなんとまだ治療を終えてないクロードだった。

クロードの剣幕に言葉を止めたサーチェ、まだ腫れぼったい顔で訥々とクロードは語りかけた。


「サーチェ、キミにとって仲間や家族が大切なのは理解できる。だがくれぐれも見誤らないでくれ、今キミの目の前に居る御方はキミやキミの家族や仲間たちを助けられるかもしれない存在なんだ」


そんな時、タイミングよく部屋にカーマインが連れて来られた。


「サーチェ…………」

「カーくんっ…………!」


やっぱり二人は知り合いだったみたいね?こんな場所だけど再会をほんのり喜んでる空気が漂う。

カーマインがオハナに「話をしても良いか?」って視線を向けてきたのでそれに黙って頷く、オハナが何か言うよりも効果がありそうだし任せることにした。


「サーチェの声、廊下まで響いてたぞ?あとさ、サーチェや俺たちを利用するつもりならわざわざ武器を破壊したりなんてしないだろ?」

「それは、そうかもしれないけど……………」


カーマインの言葉に一応は頷くもまだオハナの様子をチラチラと窺ってくるサーチェ。

あの状況(狂気っ娘)を見るに散々こき使われてたみたいだし、すぐに信じろってのも無理があるよねぇ……………しかも相手は魔物だし。


「とりあえずさ、話すだけ話してみようぜ。少なくとも俺はもうサーチェの事助けてくれたこの魔物の姉ちゃんに全部話すって決めてるからさ」


フェンネルに許可を得て、カーマインはそのままサーチェの隣に寄り添うように座る。励ますように肩を抱くのは見ていて「良いお兄ちゃん」って感じだった。


「…………じゃあカーくんが話して?私は、あんまり思い出したくないから」

「…………わかった」


そんな時だった。

周囲の動きが一斉に止まる。

そしてオハナの目の前には一通のメッセージが表示される。



突発クエストの発生条件を満たしました。

突発クエスト〖奴隷解放〗を受諾しますか?

   〖YES/NO〗



…………突発クエスト?久しぶりにシステムメッセージを見たかも。

ギルドなんかで受けられる依頼とは別で発生したから突発なのかな?

…………ここで〖NO〗にしたらどうなるのかしら?


…………………………………NOで。


溢れる好奇心に抗えず、NOを選択してみる。



突発クエスト〖奴隷解放〗を受諾しますか?

   〖YES/NO〗



あれ?無かったことにされたんだけど!?

その後何度もNOを選択していると、



受・け・ま・す・よ・ね?(怒)

〖はい/喜んで/勿論です/当然じゃないですか〗



……………うわぁ。何か圧が凄ぇのが来たんだけど?

えー………これ無限ループするやつなの?じゃあ最初から選ばすんじゃないよ!

しかももうこれ強制だし、選択肢の意味ないじゃない!?

まぁ今更逃げられるとは思ってなかったけども。

仕方なく〖勿論です〗を選択すると、メッセージは消えて周囲もまた動き始める。


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