第102話 オハナ、魔王城に招待される
勇者見学に行くことを決めた次の日、今日は珍しくダンジョンメンバーは誰もいない日になっていた。
「オハナ様、再び魔王様からメッセージが―――――」
「うん、わかった。オハナはこれからログアウトするからまたね?」
「待ってください!!せめて読んでからログアウトしてください!!私一人ではこのメッセージは処理できません!!」
サンガにずずいっと詰め寄られて、あと一歩のところで呼び止められる。
「…………わかったからそんなに頬っぺたを全身でグリグリしないでくれる?」
気持ち頬っぺにめり込んでる気がするんだけど?
そういうことするから
今も物陰から1号と4号がこっち見て―――――あ、4号がゆっくりと近づいて来る。
まだオハナの頬っぺたをうりうりしてるサンガは気づいてない、4号はするすると蔓を伸ばしていつかの3号のようにサンガをがっちりキャッチすると、そのままオハナから引き離すように連れ去って行く。
「4号ー。ほどほどにねー?」
「オハナ様ぁぁぁぁぁぁぁっ―――――!?」
サンガの声が洞窟内に響いて聞こえてきてる間、オハナは黙祷を捧げる。
それが聞こえなくなって静かになった後、いそいそと魔王さんから届いたメッセージを読むことにする。
まぁ1号も居るし、そんなに酷い事はされないはずだから大丈夫。
読み始めたメッセージの内容はオハナに会いたがってる勇往騎士団の人のことだった。
前回のメッセージではそんな人が居る程度だったのに、このメッセージでは魔王さんの「会ってやってくれないだろうか?」という意思が僅かに感じられる。
そうすることで何か〖魔物側〗に利益があるんだろうね?オハナには想像もつかないけど、あの魔王さんがただ慈悲の心だけでそんなことを言うはずがないもの。
メッセージの下部には魔法陣が描かれていて、都合の良い日にその魔方陣に触れれば魔王城まで転移させてくれるっていう親切設計。
…………押さなきゃ行かなくても良いんじゃない?
そんなオハナの考えを打ち砕くようにメッセージの最下部には、
『尚、〖捕虜交換〗当日までに来なかった場合はお前を新たな七牙の一人として推薦する』
なんて書かれていた。
くぅっ…………流石は魔王さん……………的確にオハナが嫌がるであろう所を突いてきたッ…………。
魔王さんなんかに推薦されちゃったら七牙当確じゃない!?
それでなくてもテーリカは嬉々として、ファガンは何も考えずに、ラグゥとリグゥ兄妹は魔王さんに逆らう気もないんだから本気で止めてほしいんですけど!?
はぁ…………面倒だなぁ、行きたくないなぁ…………でも行かないともっと面倒な事になるしなぁ……………。
萎える心をぺちぺちとオハナの頬を叩いて鼓舞する。
どうせ行かなきゃいけないなら早く済ませちゃおう!
「5号、7号、おいでー」
ダンジョンでお仕事中だった二人を呼び出して、これから魔王城に行く事、二人にはその護衛をお願いしたい事を伝えると5号は快諾してくれたけど7号が……………。
実は7号お気に入りの兜を無理矢理捨てた(7号から外すと自然に消えた)ことをまだ怒ってちょっぴり拗ねてしまっている。
呼び掛けには応じてくれるんだけど、オハナとは基本目も合わせてくれない。
ふぅ…………最近は1号と2号の教育の賜物なんだろうけど、今までの眷属たちが皆基本的に良い子たちばかりだったから懐かしさを感じるわ。
「そっかー。7号が来てくれたらすっごく心強かったんだけどなー?まぁ5号だけでも充分頼れるから7号は無理して来なくても大丈夫よ?うん」
わざとらしく大げさに、7号の前で嘆いて見せる。
実際問題戦力としてはまだまだな7号、だけど魔王城なんて見知らぬ土地に行く心細さを埋めてくれるには心強いから嘘は言ってない。
そぉーっとオハナを見てきた7号と目が合う。
「どうかな?」って意を込めて首を傾げてみせると、7号はまた視線を逸らしてしまう。
むぅ…………お気に入りの兜の恨みはオハナが思ってた以上に根深いみたいね…………。
「あー無理にとは言わないからね?7号は行きたくないんだもんね?しょうがない、しょうがない」
更に残念さをわざとらしさを盛大に匂わせてアピールしてみた。
7号は視線をこちらに向けようとして、また戻すのを繰り返していた。
ふっふっふ揺らいでる揺らいでる…………。
「それじゃあ5号、行きましょうか?7号は行きたくないみたいだし―――――」
5号の背中を押して7号から離れようとすると、オハナの根っこの一つに必死にしがみつく7号が居た。
「7号?一緒に行ってくれるの?」
7号はオハナの問いかけに渋々………って感じで頷き、5号にゲンコツされていた。
5号的には「いい加減にしろ!」ってことなのかな?
その後オハナにはさっぱり解らないんだけど、5号が何やら7号にお説教してる?みたいなんだよね…………お互い無言なんだけど5号が7号に何か伝えてる気がするの…………テレパシーかな?眷属間にはあるのかもしれない。
―――――という事は、オハナだけ仲間外れにされていたって事?
いやいやあの子たちに限ってそんなこと…………あれ?何かちょっとショックだぞぅ。
何故か普通のゲームでは味わうことのないダメージに苛まれてるんだけど?
…………五分くらいそうしていたかな?
7号がオハナの根っこに再びひしっと抱き着いてきた。
あぁ、お説教終わったんだ?
無言で見つめ合ってる5号と7号をただ眺めてただけなんだけど?
終わったタイミングも全然判らなかったわ。
どうして7号が必死にオハナの根っこにしがみついてるのかも謎だし…………。
そろそろ眷属たちも誰か喋れるようになってくれたらありがたいんだけど…………待って、やっぱ今のなし。
あの子たちのことだから話せるようになったら、四六時中オハナに話しかけてきそうだからそのままでいいや。
そんなどうでもいい事を考えながら、オハナはメッセージに描かれた魔王城行きの転移魔法陣に触れると視界が光に包まれるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます