烈風「真田幸村戦記」(皇帝助村と真田十兵衞)8

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 全てが完成した。

分校は、本校よりも立派であった。

「鳳国国立総合研究学園日本分校」という文字が表面の門の脇に掛った。

鳳凰城にも「鳳国国立総合研究学園鳳凰分校」本校の方は、必然的に「鳳国国立総合研究学園中空虎本校」となった。

皇帝は各国に、「分校」を設立することを奨励した。

研究者、生徒になるのは大変に難しかった。

論文の審査が行なわれ、二次審査で面接。

三次試験で語学、一般教養、思想試験、得意分野の実践試験が行なわれた。

相当に優秀な研究者・生徒が集った。

 津軽、蝦夷間の海底隧道が完成した。

ウラジオストク始発のシベリア鉄道も高架線で開通した。

高架部分を工場で製作して、現場で接続作業を行なっていたのである。

それも工区別で同様のことを行なっていたのであった。

工区は五十工区に分かれていた。

工場も五十あった。

経済的に余程、豊かな国でなければ、出来ることではなかった。

「常に土木事業をしていない国は衰退する」

というのが、建国者、真田幸村の考えであった。

「建国の父・宮本武蔵」の考えでもあった。

 カザフスタンのアスタナから北京、ウラジオストクまでの大陸大循環線が完成した。

ウラジオストクから、間宮海峡を渡って、ボギピに這入って、北蝦夷を縦断、宗谷海峡を海底隧道で蝦夷に這入って、蝦夷を縦断して、青函隧道を抜けると東北に入る。

太平洋沿岸を仙台、江戸、名古屋、大阪城までを見事に繋いだ。

さらに、大阪から安芸、長州まで繫いで、関門橋を造って九州に入り、鹿児島まで繋いだ。

同時に、北京、武龍間の線も造った。

アスタナからモスクワまでの線も造った。

その間に鳳国に、鉄道省と鳳国の国立銀行が立ち上がった。

鉄道省総裁に十兵衞が付いた。

国立銀行総裁には信幸が就任した。

各地域、各国に共通の紙幣が造幣局で印刷された。

高額紙幣には、幸村の肖像が刷られ、次の価格の紙幣には、武蔵の肖像が印刷された。

次第に国の形が形成されていった。

外務省が造られて、総裁にケリーが付いた。

商務省に青柳千弥が総裁に就任した。

通産省に髙梨内記、農務省に田中長七兵衛が就任した。

建設省に松井善三郎、国土省に内田勝之助が就いた。

陸軍省に薄田隼人、海軍省に白井賢房、海兵省に綿貫量之介、情報省に長宗我部盛親、財務省に菅沼氏興が就任した。

総理府総裁に、鉄道省兼任で真田十兵衞が就任した。

これを総称して鳳国内閣と呼んだ。

「立派なものだ」

 と、十兵衞が感心した。

 皇帝が一人で寝ずに考えたものであった。

 国立銀行には、1中空虎、2カナダ、3アメリカ、4メキシコ(中南米)、5南米、6豪州、7アフリカ、9武龍、10南洋、11日本及び、東アジア(皇帝直轄)の国々から上納金が送られてきた。

それらは、大阪城内に出来た国立銀行本店の地下金庫に納められた。

通常の金蔵の百倍の大きさで造られたのだが、見る間に一杯になった。

納められた金銀に比例して紙幣が渡された。

実に公平であった。

それとは別に、鳳国連邦税が賦課された。

これは財務省の金庫に入った。

これも、地下に金蔵の百倍で造られたのであったが、見る間に一杯になった。

これらは、軍隊の維持費、各外国との交渉費用、その他の事に使われた。

起ってはいけないことであったが、戦争、内乱等の費用にも使われるのであった。

 これらのこと全てが終わってから、美とスポーツの祭典が開催された。

各種のスポーツ会場、美術館、音楽会場、文学館、演劇会場、第1回として、鳳凰城の近くで開催された。

各軍隊の行進も行なわれた。

シャム湾一杯、各種の艦体が整列していた。

その中に、五個の空母、攻撃艦隊があった。

全通甲板の上には、艦載機がびっしりと並んでいた。

「あれは何だ?」

「飛行機というものらしいよ」

 やがて、二十機ずつの編隊の爆撃機が五編隊も、人々の頭上を重いエンジン音を響かせて飛来し、円を描いて北方に飛び去っていった。

やがて、音楽や舞踊が開始され、国立運動場では、トラック競技やフィールド競技が開始された。

 十兵衞は、華やかな美とスポーツの祭典の音を聞きながら飛び去っていった北の空をいつまでも見続けていた。

(これで、鳳凰の国は出来上がった。幸村公も武蔵公も、儂を怒るまい。立派な巨大国家だ。美とスポーツの祭典を開催出来る文化国家だ。紙幣の運用もされ始めた。後は、これだけの国をどうやって守り、維持していくのか・・・それはもう、儂の役目ではない。この世で変化しないものはない。一千年で一世紀だという。次の世紀はどうなっているのか。惜しむらくは、儂には見ることはできない。桜花の万朶と咲き誇る姿に勝る美しさはない。だが、瞬時に花筏となる。どのように努力してもな。その時には儂も散っている。鳳国の哀れは見たくない。が、哀れは来る。必ずな)

 誰の言葉であろうか。

「山は緑に染まっており、渓の水は溢れんばかりの勢いです」

 師の答えていわく、

「冬枯れを熟知して置いた方がよい。 山は、全山の樹木の葉を落葉させ裸木となり、渓の水は涸れ果てる。了じてなお、山河並びに、大地、全(まった)く法王身を露(あらわ)す」


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