「烈風真田幸村戦記(女帝編)」4

    四


 雪は、司令船の中から出ることは禁じられていた。

助村もである。

しかし、司令船の一番上から見て入れば、陸の様子も手に取るように判った。

国の強さは、尋常ではない強さであった。

重火器兵器で敵を木っ葉微塵にしてから、機動騎馬隊が、散乱した敵兵を縦横に蹴散らしていった。

敵は、たまらずに、白旗を掲げた。

これを先ず武装解除させて、次に全裸にして身体検査を行った。

 更に、掃討部隊が出て、残兵を撃つか捕虜にした。

捕虜は、輸送船でアラスカに送った。

実に、手際が良かった。

「これでは、どんな敵でも、相手になりませんね。領土が、どうしてこんなに広くなってしまったのか良く判ります。それでも、なお、武蔵や十兵衛は、兵が手薄になると、用心深く新兵を育てるつもりです。常に安心をしては、隙が出来ると思っているのです。それが、武将の資格なのでしょう」

「はい。将校になれば別ですが、兵は、一定期間を過ぎたら、定年退職をします。新陳代謝が必要なのです。軍隊を退職した者の面倒は、とことん世話します。年金もでますし、希望の職場を斡旋します。一生生活に困ることは、有りません。その分新兵が、必要になるのです。新しく強い兵が入隊してきます。退役した兵も、一定期間は予備役として、緊急の時には、招集がかかります。ですから、実は兵が不足することはありません。ですが、そこで、気を抜くようなことが有ってはならないのです。これは、鳳国の伝統です」

 と、武蔵が説明をした。

兵器、武器も、常に改良されていた。

個人武器の小銃も改良されていて、現在のものは、銃身が短く、剣が長くなっていた。

弾丸の数も、三十二発と、圧倒的に多くなっていた。

しかも、機関銃のような撃ち方が出来た。

 しかし、他国は、未だに、一発撃っては、筒を掃除して弾丸をこめる古い方式のままであった。

これで勝てという方が、無理というものであった。

それでも、前住民は、槍、投げ槍、刀、弓矢が武器で有ったから、楽に勝てたのであった。

しかし、今は違っていた。

原住民たちも、鉄砲を持ちはじめたのであった。

宗主国は、そうした、原住民たちと戦って、どうにか力でねじ伏せてきた。

そこに、鳳国という、驚異的な超大国が出現した。

強い。

武器、兵器は、常に最新のものであった。

宗主国といっても、とても敵うものではなかった。

ヨーロッパの宗主国自体が、鳳国に散々な目に遭わされて気居るのである。

植民地に異変が起こったからといても、相手が鳳国と聞いただけで、震え上がった。

 世界史で、一番悪いのはヨーロッパで、世界の未開の国々を植民地にして、人間を奴隷にしていった。

それを自分たちで、勝手に『大航海時代』と言っている。

前期は、スペイン、ポルトカル、オランダが好き勝手をしていたが、途中から、そんなに儲かるなら俺にもやらせろ、と出てきたのが、イギリスとフランスである。

イギリスは、五世紀半ば以降に、ドイツの西北部からイギリスに渡って、諸王国を建てた。

ゲルマン民族の一部である。

今日のイギリス国民の根幹なす民族である。

それが、アングロ・サクソンである。

多くイギリス系の国民の意に用いられている。

そのイギリスと、スペインが、世界の海の覇権をかけて大海戦を行って、スペインが敗北した。

それからの、イギリスとフランスはやりたい放題で、東南アジアは勿論、台湾にまで進出している。

台湾にデーランディア城を造ったのは、オランダである。

それを鄭成功が、戦って倒したのである。

各国の交易船が次に狙ったのは、日本だったのである。

それを豊臣秀𠮷が、外国船の出入りを禁止して、鎖国政策を取ったのである。

 あのヨーロッパ人の悪賢さに対抗するのには、鎖国しかなかったであろう。

ヨーロッパが植民地政策をとり、奴隷として、アフリカ人や東南アジア人を拉致して、家畜のように同じ人間を悪辣に扱って、自分たちだけが特権階級のように振る舞った。

その影響は、二十一世紀の今日に到っても、影響を及ぼしているのである。

太平洋の孤島を「フランス領」だからというので、核爆弾の実験場に使ったのは、つい二十世紀のこの間のことである。

ソシエテ諸島、ガンビール島と、二十一世紀の現在も、フランス領(フ)として、世界地図を見れば、記載されているのである。

大航海時代の名残ではないか。

それともこれらの太平洋の島々とフランスと、どんな関係があるのか聞いてみたい。

超立派な宮殿にトイレがなく、街中が糞まみれのフランスのどこが、文化国家なのか? 

ちょっと大きな戦争になれば、敗戦ばかりのフランスの、どこが強国なのか。

イギリスも同じである。

インド、オーストラリア、カナダ、ニュージランド、シンガポールが独立したら、小さな島国ではないか。

日本と、何処が違うのか。

第二次世界大戦だって、戦勝国に成れたのは、新大陸、アメリカのお陰ではないか。

それが、余りにも偉そうな事をしていると、臍が茶を沸かしそうになる。

しかし、日露戦争で日本が勝てたのは、イギリスの影ながらの支援のお陰だという感謝の思いは思っている。

しかし、フランスには何もない。

随分ブランド品を買って遣ったものだという思いだけである。

そして、さも、西側陣営の一国である顔をしながら、極東配備と知りながら、ロシアに強襲揚陸艦を売っている。

フランスなどを信じたら、そーっと、尻の毛まで抜かれる気がしてならない。

ルノーと日産の一件もそうである。

言いたいことを言えるのが、この小説を書いている楽しみの一つでもある。

相当サッパリしたので、本題に戻ろう。

しかし、日本は、他国の顔色を見る必要はない。

経済的にも、他の面でも、強くなって、立派なアメリカのパートナーになるべきである。

絶体に、アメリカのポチにはなるな。

また、安倍さんが、首相をやるんだろうが、それでも良いよ。

ロシアの真似っこだけど、トランプは素晴らしい大統領だよ。

安心できた。

民主党の大統領ではね。

どうなるのかな?

 この物語の時代には、そんな事は全く関係なかった。

鳳国の圧倒的な強さの前に、スペインの提督が白旗を掲げた。 

 青柳千弥と髙梨内記が交渉役で、スペインとの話し合いにでた。

武蔵と十兵衛が付き添いで参加した。

司令船の中で、交渉が始まった。

「このメキシコは、スペインが先に統治をしてきた」

「なるほど。その前は? メキシコ人の土地ではなかったのか?」

「未開の地であった」

「いまは、文化国家なのか。現地人が全員、納得する統治をなさっていたのか? 食糧も充分に、現地人に行き渡っていたのか」

「・・・」

「現地人に聞いてみようか。メキシコ人を入れろ」

 這入って来たメキシコ人たちは、スペイン語で、

「俺たちから、食糧を取り上げて、労働ばかりさせてきた。何も、良いことはなかった」

 と言う言葉を聞いた後で、髙梨内記が、

「スペイン人は、メキシコに何をしに来たんだ? 提督の家族は?」

「一緒に、住んでいる」

「奥さんは、何人だ?」

「スペイン人である」

「一緒に、スペインに帰った方が良いぞ。鈴木部隊を十人入れろ」

 ということで、黒人兵が這入って来た。

提督や幹部たちは、黒人兵の登場にギクッといた顔になった。

「提督の本国のスペインでは、今、未婚の女性が混血児を産むのが、流行っている。父親は、誰だか判らないが、黒人であるのは確かなようだ。提督の一人ぐらい、そう言う国際派の子供を持っても良いかもしれたいな。子供になるのか、孫になるのか、わからんがね。奥さんと一緒に、娘さん二人も、船に招待したよ。別の部屋でやれ」

 鈴木師団の兵が、部屋から出て行った。

「戸を開けておけ、良く聞こえるだろう」

 三人の女性が、隣の部屋に這入って言った。

 やがて、三通りの悲鳴が聞こえてきた。

それは、交代に何度も聞こえて来た。

「や、やめてくれ!・・・」

「戦争だ、異人種の子供が出来ても、可愛いがってやりなさい」

「じ、条件はなんなのだ?」

「無条件降伏。即時、終戦。現存している兵の武装解除、捕虜とする。捕虜は全員、平等に、アラスカに送る。あんたも家族も、だよ。以上。書類にサインしなさい。でないと、隣の事は、終わらないよ」

「判った・・・」

 と振るえる手で、提督がサインをした。

隣室では、三人の女性が、悲惨な状況になっていた。

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