第一章 6-2

実はトルコは、山国であった。

食糧事情は、決して良くは、なかった。

そんなことも、武蔵、十兵衛は承知していた。

東海隊が動いていた。

トルコ側も、紳士的な対応であった。

そこで、交易が成立して、港に、大量の食料が降ろされた。

例によって、小麦の取り引きから、始まった。

一石、三両半で、互いに了解した。

商船は、十隻であった。

一隻で、三万石積んでいた。三十万石である。百五万両であった。

さらにトウモロコシ、陸稲、馬鈴薯、牛、羊が、生きたままで取り引きされた。

最初なので、それで、充分であった。

ざっと、五百万両の取引ができた。

大成功であった。

お互いに、握手をして、友好的に別れた。

 トルコは、間一髪のところで、食料難を逃れた。

鳳国に助けられたような、ものであった。

「黒海を、渡ってくるだけですから、いつでも、来ますよ。買いに来てくれるのも、歓迎しますよ」

 と言い添えた。

これで、ヨーロッパにいくのも、海峡を、気にせずに、航行できるようになった。

 黒海の沿岸には、トルコの他にも、ブルガリア、ルーマニア、モルドバ、ウクライナなどがあった。

こうした国々にも、交易船を、派遣した。どの国も、待っていたかのように、食料を、買い求めていった。

それによって、友好関係が成立した。

どの国も、食料の不足は、目を被わんばかりの、状況であった。

いずれの国にも、

「いつでも、買いに来て下さい、と優しく言ってやった」

 黒海には、子供のような、アゾフ海という、大きな湾のような海があったが、その入口の横に、クラスノタールというところがあった。

旧ロシア領であるが、現在では、鳳国になっている。

そこに大きな規模の港を造った。

桟橋を、何本もつくって、何隻もの船が、停泊できるようにして、陸に上がると、これも、豪華な、コンクリート作りのマーケットを造った。

マーケットの奥には、食堂や、カフェなどの、飲食と娯楽施設を造ったのである。

しかし、その交易街には、それ以上入れないように、高い、コンクリートの塀を造って、それ以上入れないようにした。

カスピ海の、沿岸にも、新たに、アストラハンというところに、黒海と、同様の交易の施設を造った。

沿岸の国々の、アセルバイジャン、イラン、トルクメニスタン、沿岸ではないが、アフガニスタンに、隣接している、ウズベキスタンにも、交易の声を掛けた。

それらの国々は、待っていたように、交易に応じてきた。

こうして、武蔵と十兵衛は、交易を武器に、平和外交に乗り出していった。

この作戦は成功して、各国が、鳳国との友好を求めてきた。

 武蔵も、十兵衛も、

「無益な戦さは、したくないからな」

 と、平和外交を、各国と、積極的に、進めていった。

相手国も、それを望んでいた。

鳳国の、もの凄い戦闘能力を、充分に承知をしていた。

怒らせたら、怖いと言うことを、良く判っていた。

ヨーロッパ最大の強国と、思っていたロシアを、赤子の手を捻るように、一方的に敗戦に導いた、戦闘能力は、脅威以外の何物でもなかった。

そして、ロシアはそれ以後は、手も足も出ずに、動物園の檻の中の白熊状態になっていた。

白熊なら良いのだが、白猫になっていた。

「もう、いつでも潰せる」

 という状態になっていたのである。

しかも、中国は、武龍国になって、チベット、ウイグルも、その参加に入っている。

ウイグルの隣国は、カザフスタンである、ロシアと共に、鳳国になっているのであった。

モンゴルも鳳国連邦王国の傘下になっている。

つまり、地つつきで、すべてを、鳳国にしている。

そして、その下の、東南アジアから、豪州までが、鳳国なのである。

「これは、最早、世界帝国といっても良い。日本、朝鮮、琉球、台湾も、鳳国だ。とても、刃向かえるものではない」

 というのが、各国の心情であった。

平和外交、大人しくしているに越したことはない。というのが、各国の本音であった。

武力と、食料も、大量に、持っている。

口と、手足を、奪われているようなものだ。

どの国も、地主と農奴の制度で、国を運営している。

「どの国も、国の制度を変えなければ、この飢饉は、ずっと続くぞ。しかし、内政干渉はしない。その国が、これでは、駄目だと気が付くまでは、放置しておくほうが良い。こちらは、食料が、欲しいと言ってきたら、量を、加減しながら、売ってやる。それだけのことに、徹した方が良い」

 と、武蔵も、十兵衛も、思っていた。

 農業と言っても、基本的に、考え方が違っていた。

例えば、田起しでも、各国は、農具がいまだに、木の鍬、木の鋤を、使って居るのである。

鳳国は、農業用の重機で、土を、掘り、苦土石灰もトラクターで、撒いていった。

苦土石灰は、土壌改良のためのものであった。

苦土石灰を撒くと、ガスを発生する。

その期間に、肥料を入れても、ガスで、効果がなくなるのである。

二週間は待たなくてならない。

苦土石灰も、堆肥や、科学肥料も、それぞれが、専門の、工場で造られていった。

生活用の生ゴミや、草刈で、出た草などを、大量に積み上げていくのである。

これも、ガスを発生するので、重機で天地を、切り返していくのである。

これも、専門工場で、作っていた。

化学肥料も、工場でつくっていた。

蒔く種も、専門の種苗工場で、大量に生産していた。

田畑の準備が、整った時に、必要なものが、トラックで、運ばれてくる。

すべてが、分業で、専門化しているのであった。

だから、他国から移住してきた者は、何かどうなっているのか、まるで判らないのであった。

そこで、専門学校に入って、一から、学ぶ他はないのであった。

卒業すると、トラクターや、農耕機が動かせるようになり、鳳国式の農業が、理解できるようになるのであった。

それまでは、無理であった。

理解出来るように、なると、

「凄い。これでは、どんな荒野でも、農地に変えられる。この方式に、敵う国はない。まして、そのための、学校まであるのだ。しかも、働いて居る人は、給料制だ。安心して仕事ができる。学校を卒業して、現場に出るようになると、俄然、給料が高くなる。生活が豊かになる。マーケットでは、何でも売っている。真面目に働けば、こんなに、豊かに成る国なんて、他にはない。これでは、鳳国が、豊国になるはずだ」

 学校に行くには、もう無理な年齢のものには、それなりの、雑用があるので、失業することはなかった。

すでに、老人になっている者は、老人用の施設があった。

それらは、税金で、運用されていたので、安いお金で利用することか出来た。

幼児は、保育園であずかり、幼稚園、小、中、高、大学まで、教育機関が、整っていた。

病院も、完備していた。

消防署、警察署もあった。

学びたい者のために、図書館もあった。

本は、印刷所や、製本所があって、必要な本が置いてあった。

識字率が、上がっていった。

非常に、文化の高い国に必然的になっていった。

こうしたことから、他国からの、移住者は後を絶たなかった。

それところか、以前よりも、希望者が増加していった。

 そこで、シベリアの南部から、北部へ、開発の手を延ばしていった。

さらに、殆ど手がついていない、東シベリアの開発を、始めていった。

これは、希望者を募って、人を送り込んだ。

例によって、給料を上げることで、人を募った。

給料は倍額に近いものにした。

すると、若者を中心にして、多くのものが、集まって来た。

新規の移住者は、東シベリアに廻した。

衣食住が付いた上で、給料が倍額なのである。

厳冬用の衣服が、用意されてあった。

部屋も、暖房が確りと、効いていた。

やる仕事は、前と同じである。

それだけの事をしても、人件費は、他の地区よりも、安く済んだのである。

東シベリアの南部から、開発を開始した。

これまでの、ロシアが、見向きもしなかった土地である。

鉱山の開発から、始まった。

金、銀、鉄、銅、石炭、石油、各種の石、石灰、石英、雲母と、掘れば何かが出てきた。

石炭などは、露天掘りで、採掘された。

労働は、そんなにキツい、ものではなかった。

殆ど機械化されていた。

主立ったところは、重機が行っていた。

開発の、速度は、思っていたよりも、早かった。

シベリアは、最早、別天地に、変わっていった。

少しでも平地があると、農地にしていった。

小麦、トウモロコシ、馬鈴薯その他のものが、大規模で植えられて、広大な農地となっていった。

牧草が育てられて、牛、馬、羊、が放牧された。

収穫が、凄い量になった。

カザフスタンも、同様であった。

北国の、収穫量は、飛んでもない、量になった。

その分、交易では、安心して、食料を販売出来るようになった。

他国は不思議で仕方がなかった。

「いくら、シベリアが、広いといっても、これだけ多くの国が買いに来ているのに、平気で、売っている。どれほどの、生産量があるのだ?」

 田園は、総べて、田中長七兵衛方式であった。

粗耕ではなく、きちんと無駄なく植えられていた。

田中長七兵衛の、農業の魂は、引き継がれていた。

 重機類も、土木の工作機器も、すべて、工場で、製造していた。

 今や、宮本武蔵将軍は、総統の域を超えて、北方の王と、呼ばれる程になっていた。

金鉱から掘り出される金は、金蔵が、とてつもなく並んで、どの蔵も、インゴットで、埋まっていた。

交易で、稼いだ、金貨も、千両箱で、インゴットとは、別の金蔵にびっしりと、埋まっていた。

その金蔵も、十数棟にもなっていた。

武蔵も、十兵衛も欲がない。

数えたこともなかった。

久しぶりに、二人で、大阪城に帰ることにした。

船は三十五ノットの戦艦である。

インゴットの箱と、金貨の箱を、船に乗せられるだけ、乗せた。

船長が、重量超過ですと言うまで乗せた。

それでも、金蔵の三つ分くらいであった。

シャムの王様が寄越した分の数倍はあった。

ウラジオストクから、青森の海峡を廻って、太平洋にでると、後は、一直線であった。

事前に、伝令がいっていて、幸村、孫一を、はじめとする、幹部たちが、そろった。

真田信幸も、武龍から、帰ってきた。

大書院で、酒盛りをしようということになった。

「いやあ・・・久しぶりに、幹部が揃ったなあ。凄い顔ぶれだ」

 と、幸村が、上機嫌でいって、杯を、みんなで干した。

「土産だ。北方には、たいしたものはない。これくらいのものかな」

 といって、船から降ろした。金貨とインゴットの箱を、積み上げた。

「おい。床が抜けるぞ!」

「金で床が抜けたら、カネが掛かるな」

 と孫一が、言って、大笑いになった。

「それにしても、飛んでもない、土産だ」

「どの蔵に入れる。どこも一杯だぞ」

「幾つ作る?」

幸村と、孫一が、悩んだ顔になった。

「儂の分もある」

 信幸が、いった。

 船から、金箱を降ろし始めた。

北方と同じ量が、運ばれてきた。

「どうにか、これくらいには、成るようになった」

 と、信幸がいった。

「武龍で、これだけ稼ぐのは、容易ではない。拙者には、出来ん」

 武蔵がいった。武蔵は、本音しか言わない。

「鬼になると、稼げる」

信幸がいった。

「なるほど・・・」

 十兵衛が、感心した。

十兵衛が、武蔵にそっくりな感じでいった。

兄弟のようになっていた。

「十兵衛も、ロシアでは、相当、鬼になっていたぞ」

 と、幸村が、いった。

「赤鬼と青鬼か」

 と、孫一がいった。

「酷いことをいう」

「武蔵よ。怒るな。褒め言葉だぞ」

 と、幸村が、いった。

「そうなのか」

「そうだよ」

 と、孫一が、いって、

「鬼にならなければ、あれだけ大きな国は、穫れないよ」

「なるほど。孫一の言う通りだな」

「しかし、このインゴットは、判るが、金貨の方は、判らない。どうやった?」

 孫一が訊いた。

「交易だ。ヨーロッパは、西も、東も、食料がない。これまでは、植民地で稼いでは、アジアから、食料を、騙して運んでいた。それが、我が国が、正しい国作りをはじめて、奴隷と麻薬を禁じたから、どうにも、ならなくなった。南洋とも交易が、再開されたがな。それは、西ヨーロッパの、海洋国だけの分に過ぎん。東ヨーロッパや、中東は、飢饉だ。以前の日本の東北と同じよ。大名、武士の代わりに、地主と、ナイトがいる。小作人は、向こうでは、農奴という。農業の奴隷だ。いつが、革命が起きるだろう。だが、頭がかわるだけで、相変わらずだろう。頭でっかちの、思想家たちが、頭に立つ。立てば、同じ事をやる。そういう民族だ。そういう国に食料を、交易で売ってやる。イナゴみたいに食料に飛びついてくる。有り金叩いて、食料を買っている。金が、無くなったら、どうするか? いま、そこに、来ている。船で、運ぶのは、面倒だから、向こうから、買いに来させている。現金以外では売らない。鉄則だ。金がないのに、奪っていこうとするのが、そろそろ出始めるだろう。警戒を厳重にして、港に、師団を張り付けてきた。各国同じだ。売る食料は、腐るほど在る。支援は、しない。しても、張り合いのない国ばかりだ。そうなったら、担保を取って売る。担保に取った土地は、こちらのものだ。即刻、兵隊を入れる。食料は食えばなくなる。喰わずには居られない。命綱だ。こちらは、食料は幾らでもある。武力と、食料は、右手と、左手だ。どちらがなくても、こちらが、やられる。日本から行った兵士たちは、最初は、嫌そうな顔をしていたが、向こうの風習にあわせて、一夫多妻制にしたら、大喜びで、土着している、子供は、産め産めといっている、そのうち、混血児だらけになる。移民が、黙っていても、入ってくる。身元は徹底的に洗っている。忍び軍団は大忙しだ。少しでも変なのは、人別帳に記録して、追い返す。人手は楽だ。一族で来る。ぼろぼろのばかりだ。それが、一年も働くと、ピンシャンとしてくる。それで、結婚をしたがる。専ら女の希望だがな。兵士は何人も、女房が出来る。その分、演習をキツくする。当然だ」

 と、武蔵が、面白い話をした。無口の武蔵なのだが、ときには、途轍もなく、饒舌になるときがある。自分が面白い話でないと、喋らない。

「いやあ。武蔵の話は、参考になるし、いかにも、面白い。ヨーロッパは、そんなに、疲弊しているのか」

「ずっと戦争ばかりしてきた上に、階層社会で、下層の者たち、つまり、農奴たには、もう、我慢の限界なのではないでしょうか。それが、集団離村のような、国を捨てて、鳳国などに走っていると言うことでしょう。農耕をする者が居なくなったら、田畑は荒れ放題です。余計に、食料はなくなります。農奴も、人間なのだと言うことを、地主たちが認めなかったら、ヨーロッパは、終わるでしょう。少なくとも、今の体制では、維持するのは、無理でしょう。東ヨーロッパが、疲弊すれば、それは、少なくとも、西ヨーロッパにも、伝播してゆくでしょう。海洋国ではない国は、交易も、無理でしょう。それとも、噂を聞いて、黒海かカスピ海の港の市場まで、買いに来るほかは、ないでしょう。途中で、集団強盗に、狙われなければのことですが。いずれにしても、相当に厳しい状態でしょう」

 と、十兵衛が、発言した。

「中には、自分の乗っている馬を食用にした、と言う話もきています」

 と、清水将監が、話をした。

「どちらにしても、彼らが、食料を、仕入れているのは、他でもない、我が鳳国である、と言うことだな」

 幸村が、結論づけた。

「世界の食糧を、握っているのは、鳳国であるということになる」

 孫一が、その先に、何かがあるという予感を、感じさせていった。

「そうだな。ここから先が、難しい。こんなことは、どこの国も、経験していないことだ」

 と、重い言葉でいった。

「大助は、皇帝として、このことを、確りと胸に刻んで置くことだ」

「はい」

「秀頼も、今や、日本は、食料の輸出国になっている。同じように、考えておかなくてはならないぞ」

「はい」

「日本は、今や、朝鮮、琉球、台湾に、米を輸出している。国内での食料の心配はないがな」

「輸出では、売りすぎては、相手に、侮られますぞ。しかし、渋ると、物のが、ないのではないのかと疑われます。そこの駆け引きが、なんとも難しゅうござる。相手は、常に、こちらの腹を読もうとしております。物は沢山あるが、買いに来る国も多いので、物が薄くなる場合もありまする、と相手の競争心を煽る必要も、重要です」

 と、武蔵が、商人のような事を言った。実践から学んだことを、大助と秀頼に教えた。

「あの、無口で、取つきの悪かった、武蔵が、商人のようなことを口にするとは、驚いた。人は、立場というか、環境で、こうも、変わるものかよ」

 幸村が、頬を膨らませた。

「拙者も、生きるのに、必死で、こうなり申したわ。はっはは・・・」

 屈託なく、呵々と大笑した。

以前の、武蔵からでは、考えも及ばぬことであった。

「苦労を掛けているな・・・」

 と、幸村が、優しい口調で、労るように、言ってから、

「あの極寒の地で、異国の者と、五分に渡り合えるのは、武蔵よ。お主しか、やり抜けるものは、いなかったのだ。辛い思いをさせて、まことに、相済まぬ。このとおりだ。感謝しているぞ」

 幸村が、深々と、頭をさげた。

「上帝、おやめ下され。拙者に、人間の幅と、奥行きを持てと、教えて下さったものと、深く、感謝したしております。国作りとは、かほどなまでに、難しいものかと、武蔵は、北方の地で、叩き直されました。それと、ここにおる十兵衛に、何度助けられたことか」

「飛んでもないことを・・・今や、総統は、北方の王です。他国の者たちは武蔵将軍の名を聞いただけで、震えあがります。しかし、正直者には、心から優しいお方よと」

 と、十兵衛が、真実を述べた。

「いやあ。我らは、宮本武蔵総統に、見事に、水を空けられたな」

 と、鈴木孫一が、こちらは、武蔵と反対の、個性であったが、真顔になって、頭を下げた。

「なんと、孫一らしゅうもない。そんなのは、嬉しくないぞ」

 武蔵が、言った。しかし、幸村も、孫一も、武蔵と十兵衛の眼の奥に、一瞬、きらりと光る、水ぽいものあったのを、見逃さなかった。

(辛酸を、極めたのであろうよ)

 孫一は思った。そうでなくでは、これだけの、

(土産は、稼げなかろうよ)

「いずれにしても、見事だ。天晴れよ。両人」

 孫一が、明るく、締めた。

「ところでだ。こういう、みなが、集まってくれた機会だ。無駄にしたくないので、軍議のようなことを、述べるが、他でもない、豪州のことよ。ここも、広い。一気に開発と言っても、思うようには、ゆかぬ。敵が居ないと言う気のゆるみも、在るかも知れぬが、混成部隊だ。何とかしなければならぬ。それというのも、性懲りもなく、スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリス、フランスが、太平洋の新大陸という、アメリカ側から、様子を伺いに来ている。間が良ければ、端っこから、ちょこちょこと、囓ろうと言う腹が見えている。ここは、勝ちに驕ることなく、要注意だ。直江兼続に任せてきたが、状況が、変わってきた」

「ここは、海軍と海兵隊の出番だな。インド洋から来ると思ったが、反対からきたか。東豪州も含めて、巡回をする」

 清水将監と愛洲彦九郎が、顔を引き締めた。

「どうやら、新大陸アメリカが、ライバルが多くて、北アメリカも、南アメリカも、思ったような楽園ではなかったようだ。先住民の力も、強いようだ。それに、美味しいことも少ないようである。いずれは、叩きかえされるだろうな。その反動が、豪州に来た」

 孫一が、幸村の懐刀としての、意見を述べた。経過と言っても良い。

「奴らは、懲りないなあ」

 青柳千弥が、言った。

「確かに、清水提督の言うように、海軍の出番だな」

高梨内記も大きく頷いた。

「西だけを、見ていると、インド洋から突いてくる、ということもある。両面作戦を考えておく必要がある。幸いなことに南洋は、安定している。戦力に不足はない。皇帝の科学力で、戦艦は大幅に、能力が向上しています。どう考えても、彼らが、三十五ノットの船艦を持っているとは、考え難い海戦になれば、絶体に勝てます」

「そうではなく、交易に来たといってきたらですが」

 愛洲彦九郎が、発言した。

「それは、まだ、豪州および、東豪州では、交易はやっていない」

 と一言で、追い払う、と田川七左衛門がいった。さらに、

「それでも、上陸を、望んできたら、戦意ありと見なすが、上陸を希望するのは、何故か?

戦いになりますよ、と念を押す」

 と言った。

「それで、上陸しようとしたら、コテンパンに叩き潰せ」

 と清水が、荒いことをいった。戦いたくて仕方がない、ようすであった。

「まあ、待て。それよりも、武蔵の言うように、ここは、兵糧攻めだろう。交易船に、食料は一切ない。在るが売れない」

「伝令を出します。西ヨーロッパのポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、フランスの海洋国が、鳳国の豪州に、怪しい振る舞いをいている。飛んでもないところから、上陸を試みようと、常識に外れたことをしている。ヨーロッパは、信じられないので、西にも、東にも、事が解決するまで、食料は売れない。売って欲しいなら、この五カ国の、行動を正して欲しい、と言うことで、東からも攻めます」

 と、武蔵がいった。

「ドイツは、フランス、オランダに隣接しています。ドイツに間に入って貰え」

 東ヨーロッパ側からも食料攻めをするというのである。

 このことは、すぐに、行動に移された。

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