第一章 6

    六


幸村は徹底していた。

「最後の一人になるまで、斬り捨てよ。悪は、必ず息を吹返すものぞ」

チベットと、ウイグルに逃げ込んだ、馬賊らを、徹底的に、追い込んで、掃討していった。

「一人も逃がすな」

見つけると、ものも言わずに、首を刎ねて、その首を晒した。

他のものは、拷問に掛けて、巣窟を、白状させて、場所が判ると、急襲した。

それはすさまじいまでの馬賊狩りであった。

チベットでも、ウイグルでも同じであった。内モンゴルに、逃げ込んでいる者たちもいた。これも、徹底的に駆除した。

この激烈な掃討ぶりに、諸国の王たちは、鳳国に行き、謝意を述べた。

北京で会談した幸村は、

「どうだ? もう馬賊は、いなくなったか?」

「はい・・・ほぼ、いなくなりましたが、我が国には食料がありません」

 諸国とも、同じことを言った。

「食料支援は構わぬが、米も、小麦も食えばなくなってしまうぞ。根本的な対策がなければ、国とは呼べん」

「そこをお縋りしたいのです」

「む。儂一人で、どうする訳にもいかん。みなと相談しよう。目下、急務なのは、国民を飢えさせぬことよな。食料支援は、約束いたそう。で、諸国の希望は、どのように、すれば、納得がゆくのか」

「はい。鳳国の傘下に加えて頂ければ、ありがたいのですが」

「相判った」

 盗賊を徹底的に行っていった結果、チベットと、ウイグル、内モンゴルが、手に入ってしまったのであった。幹部たちと、相談すると、

「諸国とも、なにも、ないところで、ごさるよ」

「何年か掛けて、研究すれば、なにか生まれよう。駱駝をそだてるか、羊を飼うか」

「葡萄や、果実がなるらしい、ウイグルではな」

「チベットは、岩塩がとれる。昔は海だったのかもしれん」

「お荷物ではあるな」

「ウイグルは、殆どが砂漠だ」

「隣国は?」

「カザフスタンだ」

「カザフスタンは、耕作も出来る」

「ロシアの影響の強い国だな」

 というところへ、未知の島を廻ってこさせた、両隊からの報告があった。

「あれは、島ではありません。大陸です。イギリスが色々と名前をつけておりますが、これといった、ことはしていません。いまなら、鳳国の実行支配地になります」

「また、土地が、増えるのか」

と、孫一がいった。

幸村たちは、江戸城にいた。すでに、名古屋城にもいって、周辺の田園の様子も見てきていた。田植えの終わった、田圃は、稲がどこまでも、青々と続いていた。

「今年も、豊作は間違いないだろう。すでに、小麦も、見事に豊作であった。もはや、飢えている農家はいないであろうよ」

 関東一円を、巡視をしてきた。濃尾平野と、関東平野では、田園の規模が違っていた。

「見事なものだ」

 と、幸村は、自分の農業政策が、間違っていたかったことを、確認していた。今回は、本陣車は、使わずに、乗馬で廻っていた。

   

                *


「東隊、西隊の二隊で、巡航、偵察、いたしましたが、一隊が、三月掛かりました。つまり、一巡すると、半年以上は、かかる島というよりは大陸であると言うことが判明しました。上陸もいたしましたが、英文の地名が多くありました。おそらくは、イギリスが一度上陸しているものと思われます。オーストラリアという、地名を付けております。しかし、実行支配をしている、形跡はありません。人間もおりません。今なら、我々の実行支配は、可能であります。」

 という報告に対して、幸村は、大きく、頷き、

「ご苦労であった。休め。改めて、話を聞くことも、あるであろう。イギリスも、ヨーロッパも当分は、現れないよ。まず鉄造の戦艦の造船が大変だ。図面が、ない。次に、冶金であの巨砲は造れる技術がない。コークスがなければ、高温がえられない。さらに、鉄の丸い弾丸を、飛ばしている限りは、我々の撃つ弾丸は造れない。来ないだろうが、来たら追い払うだけだ。奴隷にオールを漕がせている間は、無理だ。安心して大陸の開発に取りかかれ、大陸の、東西南北二個師団、八師団で、新大陸を徹底的に、探索をせよ。各隊とも、測量班、絵師、農業技術者、地質学者班、鉱山班、動物隊を帯同せよ。新大陸を、『豪州』と、命名する。英文を破棄して、和文に直せ。各地に和文の、碑文を立てよ。砦ないしは、城塞が必要と思われる場所を地図に書き込め。川の深さ、幅も概略書き込め、地図は、全方位から計って、書き込め。絵師は何人も、帯同せよ」

 事細かな指示を、与えた。

それらの編成の、四組で、新大陸を、廻らせたのである。

勿論、強襲揚陸艦の、海兵隊も帯同していた。

最初の探査隊は、先住民である。アボリジニとも会っていなかった。

「先住民がいたら、必ず、平和的に接するように」

 と、厳命した。

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