第六章 4

   四


 翌日から、幸村は、幹部を集めて、鳳国の乾清宮の一室で会議を行ったが、幸村の第一声は、

「ご苦労であった。北方は宮本将軍の言うとおりに、ジャリンダからチュミカンまでゼーヤ湖と河川を利用しなから、濠と土塁と石垣、城壁と、壁を二重にして、内壁は丸太小屋にして、外側は石垣と土壁で造るが厳冬では、煉瓦、瓦、土は霜柱で、確実に割られる。そこで、土の上から、タールを吹き付けてさらに熱いうちに、砂を練つけていく。面白いものが使える。牛の糞だこれを乾燥させると固くなる。松井、内田知っていたか?」

「はい。工法で、取り入れさせます。それと、屯田兵と農兵で、余剰が出ていますが、これに建築物の工場生産をさせたいのですが・・・」

「田中と相談してくれ。才蔵。鄭三兄弟と、田川の動きは?」

「目下一度も裏切りはありません。父の鄭芝竜は、誠実です。幹部の会議にでても問題ないとおもいますが」

「発言をしても?」

「盛親、もっと積極的になれ。もう、遠慮の期間は過ぎた」

 一同も、大きく頷いた。

「はい。村上三家は、情報隊よりも、戦闘隊に移りたいと希望しています。事実、海や川の上では情報はとり難いのです。編成替えをしたしますが・・・」

「盛親。やり易い方法でやれ。まかせる」

「はい。それと、柳生十兵衛から連絡が入りまして・・・」

「ほう・・・」

「家康はウイグル地区で、病死したそうです。但馬は部下三人を連れて脱出をはかったそうですが、途中で、土族に襲われて、果てました。五百人の部下を連れたまま立ち往生いたしております。生活できるものだけを、渡しました。戦闘隊にいれてよいものかどうか?」

「なるほど・・・」

 幸村がうなずいて、

「戦闘隊に入れて、馬賊退治をさせろ」

 といった。

才蔵が、

「身辺を洗わせます」

「さらに、今一つ。早い方がよろしいかと思いまして・・・」

 盛親が、なおも遠慮勝ちに言った。

「なにか?」

「はい。明の最後の王、永明王が、ビルマに亡命を図ったのですが、ビルマの山岳部族に捕まりました。褒賞を貰おうとしたのですが、出すところがなくて、殺害されました。以上です」

「む。そういうことか。哀れな最期になったな」

 幸村いったとき、信幸が、

「これだけ。つまり二十一ヶ国が、鳳国の存在を認めた訳で、国際機関のない現在、ヨーロッパの実力国が認めたこと。周辺国が認めた以上。統治者として、徴税と徴兵の権利が生まれた。勿論、治水、国民の生命と、財産を守る義務も生まれます。各省に治安部隊と徴税の役所を置くべきだと思うが」

 と信幸が発言した。

「真田将軍。それが最も重要なことだ。真田将軍を、文官の将軍にした理由も、そこにある」

「普通のやりかたでは、徴税は難しい。飴と鞭が必要だ。これまでの明のやり方を知る必要がある。鄭一族に一番力を借りたいところはそこだ。農地の国有化にしても、やけに農地が荒れている。これの原因、理由の究明が先だ。馬賊が原因ならば、警察行為として、軍と警察の組織が必要だ。徴税にしても、文官だけでは無理だ」

「その通りだ。まず、馬賊の被害の実態と馬賊の頭領、本拠地を、今、大至急、喫緊のこととして、洗っている」

「日本人だけでは無理だ。いまの役人は、情報を流す危険がある。役人と軍人を徴募することだ。科挙は無視する」

 信幸がいって、鄭一族の出席を求めた。

 そこで、鄭芝竜、鄭成功、田川七左衛門、鄭明陽、猛竜、瑞祥を呼んだ。

「まず、現状を知りたい」

 幸村がいった。

「税を集めに行っても、馬賊にやられて、全財産を取られたという、言い訳を徹底的にする。役人は、全員、賄賂を受け取っているから、国民の味方しかしない。明は、この馬賊と、役人の腐敗で倒れた」

「判った。馬賊対策は陸と川を徹底的に、探索する。盛親隊、本多正純隊、高橋源吾隊、清水将監隊、徹底的に河川と、陸路を洗ってくれ。菅沼、蔭山、石野、別所。役人を公募しろ。横倉、持田、黒川、検地と縄張り。田中長七兵衛、松井、農地の大規模国有化を強引に推進しろ。護衛に二個師団投入。五個師団。要請がありしだい、出撃出来る態勢を取れ。すでに、海軍内陸軍と海兵隊は、巡回を開始しているぞ。内田。シャムの城を完成させてくれ。もう少しで、筑前博多城、肥前名護屋城が、出来る。薩摩もだ。これらの人手を、廻せる。もう北京は終わった。つぎの行動に移ってくれ。徹底的に馬賊、盗賊の掃討をする。拷問も許可する。賄賂役人はビシビシ取り締まれ。以上だ。中華が明から鳳になったことを教えてやれ! 行動あるのみだ。以上。解散!」

 幸村の行動は早い。盛親、正純は、名誉挽回と生き残りをかけて、警邏隊を盛親隊だけで、五十隊出した。

 馬賊たちは、

「下手に動くとヤバいぞ」

 と鳴りを潜めた。

 しかし、蓄えのある連中ではない。

半年もじっと出来ないで、

「そろそろ仕事をはじめようぜ」

 と蠢動を始めた。

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