第一章 3

   三


「はい。そうでした。太閤殿下が危機に立つことは、家康の利益なのです。後金が、明を脅かすと、明はそちらに、兵を割きます。朝鮮への援軍は無理です。太閤の思う壺です。家康は、そこで、後金に人を派遣して、明は、朝鮮の日本からの侵攻に、ハラハラしている、後金が、明への侵攻を控えても明は、矛先を朝鮮の日本軍に向けるだけで、後金には向かって来ない。ヌルハチ汗 (ハーン)よ。折角、無数に枝分かれしていた、女真族を統一して、瀋陽に都まで造ったが、残念ながら。国力が弱い、儂ならば、あんな明などたちどころに、征伐して見せる。と、鉄砲隊の三段撃ちや、大砲を撃って見せ、長柄の槍隊や、弓の威力を見せ付けた。ヌルハチは、種ヶ島と大筒を欲しがったのです、当然でしょう。種ヶ島の代金を、ヌルハチは、砂金で支払いました。しかし、徳川のような三段撃ちが出来ないし、大筒も思ったようい撃てない。家康は、(砂金があるということは、大きな金鉱山があるな)と読で、呼んだ、半蔵党と、山師の大久保長安に、その金鉱を探させたのです。凄い埋蔵量の金鉱山が長春(チャンチュン)と大慶(ターチン)の間にあるのを発見しました。女真族には、採掘の仕方も、精錬、鋳造の方法も判らない。で、原石を、蝦夷に運んで、精錬と、鋳造をさせたのです。ヌルハチたちには、廃土を川で、笊で洗っていけば、砂金が採れるぞと教えていったのです。事実、砂金が採れました。しかし、原石は蝦夷に運んだのです。関船三百隻で、日本海を何度も往復しました。松前藩に判らないように北蝦夷に運びました。清津(チョンジン)からでは、豊臣軍に判ってしまう可能性があるので、沿海州から、北蝦夷に運んだのです。ヌルハチには、『黒竜江川の先の広大な土地をなぜ取らないのだ。こんな、明に近い場所で、鉄砲や、大筒の訓練をしたら、明にバレバレではないか。黒竜江の先の沿海州を取ってそこで、兵を教育、訓練、演習をしよう』とチュミカンまでを、後金にしました。ヌルハチは、国土は増えるし、砂金は取れるし、兵は強くなっていくしで、徳川サマサマで、家康は、『援軍も送る』と一万からの兵を送ったのです。目的は、金の原石の採掘のためです。それだけではまずいので、兵士を半分入れたのです。北蝦夷には、精錬、鋳造の職人と護衛の兵士など江戸で無役の、下級武士、旗本を二万人送りました。ところが、関白殿下が、蝦夷の開発を、本気ではじめたので、原石や、施設を、択捉島に移したのです。最悪の場合は、沿海州に運び直す予定でした。その時には、明に侵攻をする予定だったので、今、後金の明侵攻が始まっています。徳川の兵も、付き合い程度に入っています。柏崎から、三国街道を南下してきた兵一万五千人は択捉の単冠(ヒトカップ)湾に隠してあった大関船三百隻で、択捉から国後の間を抜けて、オホーツク海に出て、宗谷海峡を廻って、柏崎に入ったのです。上越からだと、北国街道になってしまいます。春日山城の豊臣兵に発見される可能性もあります。あくまでも北関東の兵と挟撃するのが目的ですから・・・」

「そういうことか・・・太閤殿下へのまったくの裏切りだな。後金の侵攻を中止させて、明の兵を朝鮮に入れさせた。これで小西行長は、蔚山城を支えきれなくなって、敗退した。太閤の不利益は、家康の利益か・・・」


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