番外編12 エリスとタピオカミルクティ8

「お姉さん、失礼します」


「へ? え!? エリスちゃん!? なんで入って来てるの!?」


「あ、あの、お姉さんのお背中を流そうと思って……」


「え? でも、裸で!?」


「それはお風呂ですし。どこか変ですか?」


「いや、そういうことじゃなくって。女の子同士だよ!?」


「え? でも女の子同士じゃなかったらわたしもこんな事しませんよ?」


「それはそうなんだけど……」


「だ、ダメだったですか?」


「ダメではないよ! でもいきなりだったからちょっとビックリしたっていうか。心の準備がっていうか」


「わたしもドキドキしてます。でもお姉さんと仲良くなりたかったので来ちゃいました」


「う、うう。わ、わかったわよ」


「それじゃあ、おじゃまします」


「狭い湯船でごめんね。う、でもやっぱり恥ずかしい。エリスちゃん美人だし、肌も白くて綺麗だし、スタイルもいいし」


「わたしも緊張してます。でもお姉さんの方が綺麗ですよ。それにすごく大きいし」


「そんなこと言ってエリスちゃん、あたしをどうしたいのよ。だ、だ、騙されないんだからね!」


「そんな騙すなんて。本当に誤解です。わたしお姉さんに信じて欲しくってここに来たんです。誤解を解くにはお風呂でお話するのが一番だと思って」


「ねえ……エリスちゃん、あなた本当に悠の事が好きで結婚したいだなんて言ってるの? どうして?」


「わたし、ユウから好きだって言われて、最初はよくわからなかったんです。そんなこと言われたのはじめてだったから。それにわたし悠にすごくひどい事を言っちゃって、騙すようなマネをして。それなのに悠ったらわたしの事を疑いもせずに、わたしのためにすごく頑張ってくれて。本当の事を知った後もわたしを責めもせずにわたしの為に怒ってくれて。そのとき気づいちゃったんです。わたしこの人のことが好きなんだって。好きになっちゃんたんです。どうしてって言われてもわからないんです……う、ぐすっ……」


「エリスちゃん!? なんで泣くの? う〜ん、説明はいまいちよくわからなかったけど、気持ちは伝わったわ。演技で泣いているようには見えないし、流行が落ち着いてもタピオカミルクティが好きって言ってくれる女の子に悪い子はいないはずだしね。信じるわ。ほら、泣き止んで」


「お、お姉さん? む、胸が当たってます」


「いいから。ユウくんが小さい頃もね。こうやってギュってして頭を撫でてあげてたのよ」


「え? 裸でですか? それはちょっとわたし、複雑な心境なんですけど」


「さすがに裸で抱きしめたりしてないわよ。それにしてもエリスちゃんの肌キレイよね。いい抱きごこちだわ……」


「え? お姉さん。え? そ、そろそろ離していただけると……も、もう大丈夫ですのね」


「あ、ごめん。エリスちゃん。つい夢見ごごちになっちゃって。うふふ」


「ええと……。でも、よかったです。誤解が解けたみたいで」


「まあね。でも、そうするとエリスちゃんがあたしの義妹になるのかあ……うん、アリだわ!」 


「じゃあ、結婚を認めてくれるんですか?」


「あ、でもその話なんだけどね。やっぱり、結婚とかそういう話をみんなに言うのは少なくとも高校を卒業してからにしなさい。ビックリしちゃうから」


「わかりました。そうですよね。焦る必要ないですよね。お姉さん、ふつつかものですが、これからどうかよろしくお願いいたします」


「う、うん。でも不束者って。本当にわかってくれてるのかな……?」


     ◆


 姉さんと彼女が一緒にお風呂に入っているのを待つというよく分からない状況に、僕は戸惑いを隠せなかった。


 どんな話をしているんだろうと気になって仕方がなかったが、考え始めると気持ちが落ち着かないので、何も考えず無心で待っていた。しばらくして、二人が戻って来た。


「お義姉さん。今日はいろいろと本当にありがとうございました」


「ううん。お礼なんていいよ。かわいい義妹のためだもの」


 あれ? エリスが言ってた通り、お風呂から上がったら本当に仲良くなってる!? でも、エリスの目元が泣き腫らしたあとの様に見えてちょっと気になる。


「なあ、エリス。目元がちょっと赤くなってるけど、もしかして姉さんに何かされたのか?」


「違うの、悠。これはお義姉さんのせいじゃないの」


「そうよ、あたしはエリスちゃんをちょっとギュッて抱きしめただけだよ」

 姉さんがなんかドヤ顔ですごい事を言ってきた。


「抱きしめたって、裸で!?」


「こら、悠くん。エッチな想像してるでしょ。ダメだよ! まったく、もう」


 想像するなって言ったって、いったいどういうことだよ。


「本当になんでもないから、気にしないで」


 姉さんのやつ、一体エリスに何をしてくれたんだ!?

 僕だってエリスにまだそんなことした事ないのに、実の姉に先を越されるなんて! 

 複雑な気持ちと共に、言い様のない敗北感に、僕は包まれていた。

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あまぎふ!~憧れの彼女に告白したら異世界で魔王をやってるお義父さんに召喚び出された! ぼちぼちぼっち @tekcill

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