第29話 魔王と幹部(4)

魔王   「何故だ! 何故まだ吉報が来ないのだ!」


幹部   「ご報告します。魔王様」


魔王   「おお、遅いぞ! ようやく戻ったか! 

      どうだ奴らの様子は!

      勇者の攻略は成功したのか?」


幹部   「申し上げ難いのですが、魔王様。

      彼らは依然、旅を続けております。

      それどころか、エンフィールドの街で

      ドラゴンを打ち倒したのを始めとして、

      各地のギルドで次々とクエストをこなし、

      民衆からも勇者と讃えられるように

      なってしまっております」


魔王   「どういう事だ! 

      エリスがいればドラゴンを倒すくらいは

      造作もないだろうが、

      なぜ勇者の野郎が讃えられているのだ! 

      奴はロリコンのクズ野郎のはずだっただろうが!」


幹部   「申し訳ございません。

      送り込んだ二人目の刺客なのですが、

      勇者を攻略する事を忘れてしまった様で、

      すっかりエリス様の方に懐いてしまいまして……」


魔王   「何をやっておるのだ! 仕方のないやつめ。

      しかし、憎きはあの勇者! 

      どうしてくれようか!」


魔族の少女「このワタシに行かせて下さい!」


魔王   「な、ミリア!? なぜお前が此処にいる!?

      ならぬ! 

      まだお前を行かせるわけにはいかん!」


ミリア  「何故ですか! 

      なぜ行かせてもらえないのですか!?

      そもそもエリス姉さまが

      此方の世界に帰って来ている事を、

      なぜワタシに教えてくださらなかったのですか!」


魔王   「それはだな……。

      とにかくまだ早すぎるのだ。

      いずれ時は来る。

      それまでは城で大人しくしておれ!」


ミリア  「嫌です、伯父上! 

      ワタシはもう1年以上、

      姉さまにお会いしていないのですよ!

      もう待てません! 

      止めても無駄です!

      誰が何と言おうと行かせてもらいます!!」


魔王   「待てミリア! 待つのだ!!」


魔王   「………………………………」


幹部   「行ってしまいましたね……。

      魔王様。いかが致しましょうか?」


魔王   「ううむ。こうなっては仕方がない。

      お前も後を追え! 

      何か事が起こるようならば、

      その時はお前が対処するのだ!

      こうなったのも二人の教育係だった

      お前の責任でもあるのだからな」


幹部   「承知いたしました」


魔王   「うむ。頼んだぞ!」

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