第84話 憤り。

俺はさっきの浜辺の言葉に完全に頭に血が上っていた。

それもそうだ。俺は誰かと付き合った事はなく、今回が初めてのお付き合いになる。

浮かれてしまうのは当たり前だ。


「お兄ちゃん、浜辺さんがさっきは言い過ぎたから話がしたいって……。話、出来ない?」

妹の美柑の声がドアの向こう側から聞こえてくる。

話がしたいなら浜辺が来りゃいいだろ。


ーーーーーー。


卑屈になって、引き篭もって……ダッセェ。

「海斗さん。話を少しだけ聞いてください……。ドア越しで構いません。」

この声はすずちゃん!?

「私、海斗さんがモテてるの、知ってました。でも、この気持ちを抑えつけたくないから、だから告白しました。 きっと浜辺先輩たちも一緒です!だから、だから!浜辺先輩の気持ちを聞いて下さい! それがどんな結果になっても構いません! お願いします!」


すずちゃんの熱い言葉に俺は胸を打たれ、部屋のドアを開ける。


部屋の前にはすずちゃんが立っており、コチラをゆっくりと見てくる。

「…………!涙が……。」

すずちゃんはハンカチをポケットから出すと、そっと俺の涙を拭き取ってくれた。


俺はいつの間にか泣いていたのか……。悔しさからか、憤りからか、悲しさからか……それとも情けなさからか。


それにしても、浜辺達に俺の事が好きだと言われたところで信用できる訳が無い。

皆が俺の事を好きだと!?

今までそんな素振りさえ見せてこなかったのだから……。

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