第61話 すれ違う。
俺がベッドから目が覚めたのは、昼過ぎだった。
須藤委員長から別れ際にもらったしょっぱいガトーショコラを食べた後、寝ちまったらしい。
「首、痛ってぇ………!」
寝違えた首を捻りながらリビングに降りる。
「お兄ちゃん、寝てたの?」
妹は湯気たっぷりのココアをすすりながら声を掛けてくる。
よくこんな暑い日に、熱いココアなんて飲めるよな。
なんて、考えながら俺はソファーに座る。
「あぁ、いつの間にか寝ちまってた……。首を寝違えたみたい。」
他愛のない話で妹と話の花が咲く。
俺の妹は昔は引きこもりだった。
別にいじめがあったとかじゃなくて、単に学校に行きたくなかったのだとか。
俺もそんな時期はあったから気持ちは分かる。
「あのしょっぱいガトーショコラ、須藤委員長さんから?」
「何で知ってんの?」
「んーーーー、女の勘?」
美柑は確かに勘が鋭いが、まさかガトーショコラ食べただけで分かるというのか!
エスパーか、美柑!!
「また変な事考えてるといけないから言うけど、エスパーじゃないから。」
美柑はテレビを観ながらココアをすする。
「熱くないのか、それ。」
「しょっぱいガトーショコラ食べたら、飲みたくなったの。」
今日の美柑は何かトゲトゲしてるな……。
「で?お兄ちゃんはオッケーしたの?」
「……………は?」
「須藤委員長から告られたんでしょ?」
「ま、まぁな…………。」
でも、告白は以前からされてたし、今回のはちょっと違う気も……。
「どうだったの?」
美柑の質問は止まない。
「答えはノーだ。大体から須藤委員長は海外に行くんだぞ?」
俺の言葉に美柑が鋭い眼光で睨んでくる。
「そんなのは関係無いの!だからいつまで経ってもニブチンなんだよ、お兄ちゃんは!」
「別に俺は鈍くないぞ!?」
「お兄ちゃんのバーカ!あっち行ってて!」
イヤに攻撃的だな……。何かあったのか?
俺は何となくリビングに居辛くなり、自分の部屋に戻る。
「どうしたんだ、美柑のヤツ……。」
俺は部屋に入るとスマホが床に置きっぱなしになっている事に今更ながら気付く。
着信が入ってる…………。
一体誰から……?
「すずちゃんから着信…………?それも10件も!?」
俺はスマホを開くとラインにも通知が来ていた。
『海斗先輩、もしお時間があればで構いません。 13時に駅近くの中央公園でお待ちしています。』
13時…………!?
今は…………もう14時じゃないか……。
しかも中央公園は須藤委員長と会った公園とは違い、ここからだとどれだけ急いでも30分はかかる!
「とにかく急がないと……!」
俺は着替えを済ませ、直ぐに中央公園へと向かった。
一縷(いちる)の望みをかけて……。
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