初恋の終わらせ方 ③
「聞いたよ。トモと結婚するんだって?」
「うん。子供が中学に入学するから、タイミング的にちょうどいいんじゃないかって」
ユキは、2年前の梅雨にショッピングモールで偶然出会った時に、アユミがトモキにそっくりな男の子を連れていた事を思い出す。
「前にモールで会った男の子だよね?」
「うん。うちの子、
「そうかぁ……。アユはすっかりお母さんなんだねぇ……。私とはえらい違いだわ」
アユミの幸せそうな顔を見て、ユキは疑問を抱いた。
別れてから10年以上も経ってから結婚しようと思うほどお互いに好きなのに、なぜ二人は別れたのか。
やはりトモキがロンドンに行ったのが原だったのだろうか?
13年前、トモキが渡英する少し前に会った時、アユミは体調を崩して大学を休学中で、一度母親の元に帰ると言っていた。
その11年後、今から2年ほど前の梅雨にモールで偶然会った時、アユミはマサキを連れていた。
あの時休学していたのは、おそらく妊娠していたからだとユキは思ったのだが、トモキはアユミが妊娠したことも出産したことも、最近になって知ったと言っていた。
(あれ?アユが妊娠したのは、トモがロンドンに行く前だったはず……。もしその時二人が別れた後だったとしても、普通、妊娠したら相手に知らせるくらいはするよね?なんでアユはトモに知らせなかったんだろう?)
かなり込み入った話なので、尋ねてもいいものかとも思ったけれど、ユキはそれとなく話を聞き出してみることにした。
「アユとトモはさ、一度別れてるんだよね?それってやっぱ、トモがロンドンに行くことになったから?」
手を動かしながらユキが尋ねると、アユミは少し困った顔をした。
「別れた時はまだ、トモくんにそんな話はなかったよ。ロンドンに行ってたのを知ったのは、トモくんたちがデビューしてから。マサキが『ALISON』のファンでね、テレビで見てビックリした」
「そうなんだ。妊娠したって気付いた時、トモはまだロンドンに行く前だったよね?なんで知らせなかったの?」
ユキの言葉に、アユミは何かを考えるそぶりを見せた。
(あっ……今のはちょっとストレート過ぎたかな?)
「ごめん、変なこと聞いて。ちょっと気になっただけだから、答えたくなければいいんだ」
ユキがそう言うと、アユミは小さく息をついた。
「ユキちゃん、ここだけの話にしといてくれる?」
「え?ああ、うん……」
アユミはいつになく神妙な面持ちで口を開いた。
「私たちが別れたのは……私がトモくんを裏切ったから」
「……え?」
アユミの口から意外な言葉が飛び出した。
ユキは動揺を表に出さないよう、細心の注意を払う。
「トモくんと付き合いだしてすぐに、初恋の人と偶然再会してね。たまに食事したりしてたんだけど……。トモくんとの関係にちょっと悩んでた時、その人に好きだって言われて……一度だけ関係を持った。イヤなら本気で拒めって言われたし、拒もうと思えば拒めたのに、私にはそれができなかった」
「……なんで?」
「トモくんのことは好きだったけど、このままでいいのかなって迷ってたから。それに……その時の私は、トモくんと正反対の性格の彼に惹かれてたの」
「正反対だったの?どんな人?」
「大人にはなったけど、優しいところは昔と同じだった。私は中学から遠くの全寮制の私学に行ったから、好きだって言わないまま会えなくなってあきらめたんだけどね」
ユキはアユミの話を聞きながら首をかしげた。
(あれ?中学行く前に好きだったってことは、小学校の同級生?大学生の時に再会して、時々食事したりして……?)
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