交錯する想い ②

 あの頃リュウトにはとても気になっている女の子がいて、本当はどうしようもないくらい彼女のことが好きなのに、優しい彼氏のいる彼女の幸せを壊したくないから、自分の気持ちを伝える気はないと言っていた。

 気持ちを伝えることで、幼馴染みの彼女に笑って会えなくなることをリュウトがおそれていたことを、アキラは知っている。

 それはアキラ自身の気持ちにも重なって、いつも胸が痛かった。


「そっか……。リュウもホントの幸せ見つけたんだな」

「まぁ……そうだな」


 リュウトは照れくさそうに笑っている。

 その顔はとても幸せそうだった。


「良かったじゃん。その相手がハルってことには、正直まだ驚いてるけどな」

「オレ自身もまだ信じられねぇ時があんだけどな。まぁ……オレは急いで大人になろうとして、まともな恋愛してこなかったからさ。ハルと一緒に、気長に行くわ」


 歳の差が18もあることや、戸籍上は身内だと言うことも含め、リュウトにもいろんな葛藤があったのだろう。

 それでも好きな人を幸せにしたいと互いに思い合えるリュウトが羨ましいと、アキラは素直に思った。


「なぁ、リュウ。これから飲みに行かないか?いいバーがあるんだ」

「おっ、いいな。久々に行くか」

「トモは帰ってないのか?」

「いや、今日は一緒だった。来るかどうかはわからねぇけど、一応声掛けてみるか」


 リュウトがポケットからスマホを取り出して、トモキに電話を掛けた。


「おー、トモ。これから飲みに行かないか?アキとユキもいるぞ」



 リュウトがトモキに電話をしている間、ユキはリュウトの左手の薬指に光る指輪を眺めていた。


(あれって……さっきハルがしてた指輪と同じ……)


 ユキはリュウトとアキラの会話を頭の中で何度も何度も反芻して、小さくため息をついた。


(そっか……。リュウはハルと……)


 スカートをギュッと握りしめ、うつむいて唇を噛んだ。


(今更何言ったって仕方ない……。私は告白もしないで、もうずっと前にリュウをあきらめたんだから……)




 その後、トモキも合流してマナブのバーへ足を運んだ。

 マナブはリュウトとトモキとの久々の再会に興奮していた。


「それにしても懐かしいよな」

「そうだな。4人そろったのなんて、何年ぶりだ?」

「オレが二十歳でロンドンに行く前が最後だったから……13年ぶりか」


 かつてのバンドメンバーが久々にそろったことで、男たちは嬉しそうに会話を弾ませている。

 ユキはアキラの隣の席でその様子を眺めながら、ひたすら酒を飲んだ。

 近況を話していると、トモキが来年の春に結婚すると言い出した。


「おお!トモ、結婚すんのか!おめでとう!で、そのお相手は?」

「昔……ロンドンに行く前に付き合ってた子なんだけどな。オレがロンドンに行ってから、オレの知らないうちにオレの子を産んで育ててた」


 トモキの子供を産んでいたと聞いて、ユキはピンと来た。


「えっ……?それってもしかして、アユのこと?」

「ああ……うん。そっか、ユキはアユちゃんのこと知ってるんだっけ。小学校が同じなんだろ?」


 小学6年生の時、同じクラスに『アユミ』と言う名前の女の子が3人もいた。

 そのうちの一人の酒井 歩美サカイ アユミは、ロンドンに行く前のトモキと付き合っていたらしい。

 それはユキが初めて知る事実だった。


「大人になってからも何回か会ったけど……。そっか、あの男の子、やっぱトモの子だったんだ。道理で似てるはずだわ」


 そう言ってから、ユキはふと子供の頃のことを思い出した。

 学校帰りに仲の良い友達と数人でいつも寄り道をして、暗くなるまで公園で遊んでいた。

 幼いながらにひそかにリュウトを想っていたユキは、少しでも長くリュウトと一緒にいたくて、他の子達が『遅くなったから帰る』と言っても、辺りが真っ暗になってリュウトが『そろそろ帰るか』と言うまで、家に帰ろうとはしなかった。

 それはアユミも同じだったように思う。


(リュウと、私と、アユと……あと誰だっけ……。いつも真っ暗になるまで遊んだな……。たしかあの時、リュウはアユのこと好きだったんだよね……)


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