大学生と月
メナージュでの話も終わり俺と未来は天の川の下を仲良く歩いていた。 こうして星空の下を歩いていると色々なことを思い出す。
未来との夜は何かとマイナスなことばかり起こっていたような気がする。 家出をした未来を探して疲労骨折したり、喧嘩をしたのはいつも日が暮れてからのことだった。
でも日が昇ればいつも通りの日常が戻ってくる。 朝起きて未来が作ってくれる朝ごはんを食べて大学に行く。 最近はダラダラしてばっかりな気もするけれど。
「たまにはこういう夜もいいのかもな」
「ん? どうしたのつっくん」
ろくに前も見ずに上を向いている俺を不思議に思ったのか未来が聞いてくる。 今の俺はきっと目をキラキラさせているんだろうなあ、と痛い想像しつつこれからのことについて考える。
これから、つまり未来のことについてだ。 考えてはみたものの何も思いつかない。 それもそうか、つい最近まで高校生だと思っていたら今や華の大学生なんだもんな。
時の流れなんて誰にも想像できるものでもないよな。
「未来はこれからのことについてどう思う?」
「これからねー。 私は今のままでも十分幸せなんだよね」
そう言って未来ははにかんだ。 月明かりに照らされた笑顔は何とも形容しがたい気持ちになる。 このまま同じ生活を続けていてもマイペース二人組ゆえ色々なことが先延ばしになってもおかしくはない。
それでもいいなと思ってしまう自分もいるが果たしてそれが正しい選択何だろうかという疑問がまた湧いてくる。
「つっくんは色々考えてくれてるみたいだけどね、私はこのままゆっくりでも全然いいんだよ。 一体何年の付き合いだと思っているの?」
「それもそうだな。 あんまり深く考えても未来のことだ、またすぐに別の問題を引っ提げてくるんだろ」
ムーっとむくれる未来を横にもう一度空を見上げる。 数分か前に見たはずの天の川は別のものに見えた。
それもそうだろう天の川は数々の恒星からできている。 凄まじい距離をその光が何時間、何年とかけて俺の目に移っているわけだ。 そう思うと俺の考えていることなんてちっぽけなんだなと思う。
ついさっきまで見えていた星の一つはもうなくなっているかもしれない。 しかしそれは何年も前の話であるわけだ。 月でさえも光が届くまでに一秒ほどかかるのだ。
「つっくん、今日は空が綺麗だね」
「ああ、今日は良く晴れていたからかな」
こうして二人で星を眺める。 その行為ですら俺は幸せに感じてきてしまう。 事実、俺は幸せなんだろう。
「今日は月が綺麗だな」
「死んでもいいわ」
未来はそう言ってニコッと笑った。
幼馴染に押し倒されて同居を続けていたら大学生になってました。 月ノ宮 猫 @Tukineko_satuki
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