大学生と逆上せ
チャプン、と湯船に肩まで浸かりながら俺はぼーっとしていた。 ようやく悩みの種がなくなり久しぶりに気を落ち着かせることができるようになった。
ここのところ気を張っていたせいか疲れがドッと湧いてきてこのまま眠りたくなってきた。
「のぼせないようにねー」
と、目が覚めた様子の未来が洗面所から声をかけてきた。
「言われなくとも俺は大丈、夫……」
言い切ると同時に俺の視界は急に真っ白になった。
「つっくん? つっくん!?」
と、未来が読んでいるのは聞こえるのだが返事ができない。 次第に体がズルズルと沈んでいき鼻先まで水面が迫っているのが分かる。
このままではヤバイと感じつつも体が全く動かず、俺はもう駄目なのか? とまで考え始めていた。
するとガララッと勢いよく扉が開く音がして一気に視界がはっきりとした。
「つっくん! 起きて!」
強く呼びかけられて俺は意識がはっきりとしてきた。 目の前には心配そうな顔でびしょぬれになっている未来がいた。
俺は未来に抱えられるようにして風呂に立っている状態だった。 少しでも遅ければ命が危なかったかもしれない事態に俺は驚いたままだった。
「あ、ああ。 少しのぼせていたみたいだ」
「もう! 言わんこっちゃない! つっくんはもう少し自分のことに気を使うべきだよ」
「すまん……」
その通りのことを言われて俯く俺に未来は手を伸ばしてきた。 そのまま背中に手をまわし俺のことを抱きしめた。 驚いたが俺が体を預けると頭をさすってくれた。小さい手が心地よく安心してしまう。
そしてそのままーー
「好きだよつっくん。 私のためにいつもありがとね」
そう言うと俺に顔を近づけてきてそっとキスをした。
「なっ……」
来るとわかっていても破壊力抜群の攻撃に俺の頭はオーバーヒートしていた。 再び意識が朦朧としてきている俺を未来は何も言わず洗面所まで支えてくれた。
そして鏡を見る。 すると俺が今全裸でいることをようやく気付いた。
未来も俺を支えることで頭がいっぱいだったのか今更赤面している。 そのまま一言も話すことなく俺は体を拭き、服を着る。
「す、すまんな。 助けてくれたのにお目汚しを……」
「だ、大丈夫だよ! つっくんのは箱根でも」
「それ以上は言わないでくれ! 恥ずかしい!」
箱根は俺も未来のを…… っていやいやいや。 今はそんなことを考えている場合じゃないだろ。
「とりあえずお互いに寝る準備でもするか」
「う、うん! そうだね!」
俺が先に洗面所を出ると母さんがおり、小声で「意気地なし」と言われた。
うう、解せぬ。
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