大学生と秋の穂

「何しに来たんですか?」


 扉を開けるとともに俺は用件を聞く。 ただ嫌味を言いに来たのならこのまま追い返すつもりで返答を待つ。


 俺はドアノブ手をかけ、扉をいつでも閉められる状態でクソババアを見ていると、


「今までのご無礼を謝りに来ました。 どうか話だけでも聞いてください」

「なっ」


 俺の予想に反し頭を下げてきた。 俺は少し驚いたが家に上げるとことにする。


「お、お母さん!?」

「紅葉…… 紗月さん、四人で話せますか?」


 クソバ、いやちゃんと名前で呼ぶべきか。 秋穂あきほさんは杏樹と蘭ちゃんに目をやった。


「わかりました。 杏樹」

「うん。 お邪魔したわ」


 すぐに察してくれた杏樹は蘭ちゃんを連れて俺の家を後にした。 こういう時に察しが良くて本当に助かる。


 杏樹たちが帰ると同時に秋穂さんは地面に正座し頭を下げた。


「紅葉やあなたたちが出て行ってから自分の行いを考えたんです。 そうしたらなんと謝罪をしていいやら…… とにかく取り返しのつかないことをしてしまいました、許されることではないとわかっていますが謝らせてください」


 あの騒動の後、頭が冷えたのかようやく自分の悪行に気が付いたらしい。 とりあえず頭をあげさせテーブルで向かい合うように座る。


「最初は紅葉を育てるのに精いっぱいで未来さんにまで気が回りませんでした。 しかし成長していくとともに一人でも大丈夫なんだと思ってしまって……」


 未来は両親を亡くしてから家事全般や料理を覚えたようだし、一番が強くなった。 頼れないなら自分でどうにかするしかないと小さいながらも悟ったのだろう。


 それがどれだけ未来の心の傷を深くしたのか気づかなかったんだろう。 なにせ表面上のはヒビ一つ入らないのだから。


「それで今更ながら今まで横領していた分のお金です。 どうか受け取ってください」


 目に涙を浮かべながら秋穂さんは分厚い封筒をテーブルに置いた。 嘘ではなく本当に今までの分のようだ。


 俺は判断は未来に任せようと視線で未来に伝える。 俺の目を見て頷いた未来は口を開いた。


「受け取れません。 確かに扱いはひどいと思ったこともありましたが今はつっく、紗月さんと幸せな生活を送れているので受け取りません」

「そんなことを言わずにお願いします。 私の所業を考えるとこの金額でも足りません」


 お互いに一歩も引かず俺と紅葉ちゃんは目を合わせて気まずそうにしていると、


「わかりました。 これでも受け取ってもらえないというのなら裁判でもなんでも受けて絶対に受け取っていただきます」

「え!? そこまでしなくても……」


 流石に…… と思い俺は止めに入る。


「いえ、この問題は落とし前を着けないと私の気が済みませんので本気です」


 ピシっ


「え……」

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