大学生と家出
「えっと、この未来さんは親戚の子でご両親が亡くなった際に私が未成年後見人になっていて……」
「それでその補助金を今までネコババしてきたから今、未来は縁を切りに来たってことですよね?」
俺は間違いなく嘘を言うと思ったために先に真実を話した。 クソババアは俺のことを睨んできたが紅葉ちゃんがいる手前、嫌味を言えないでいた。
すべてを聞いた紅葉ちゃんは驚いた顔をして母親のことを見ていたがすぐに俺たちの方を向いた。
「……ってください。 謝ってください」
「ほら、あなたたち紅葉に言われてるんだから勝手に来て迷惑かけてすみませんって謝りなさいよ」
俺は何を言っているんだろうと呆れてしまった。 なぜかというと紅葉ちゃんはどう見ても母親に向かって言っていたからだ。
「お母さん、久しぶりに会ったけどそんなにひどい人だとは思ってなかったよ」
「え…… 何を言っているの紅葉……?」
「せっかくこっちまで来たって言うのに遊びに行くわけでもないし仕舞にはこんなことまで」
紅葉ちゃんは俯いて震えている。 それは間違いなく母親に対する怒りで俺と未来は何も言えずただ見ているしかできなかった。
「それは紅葉がいきなり帰ってきたからでしょう! いいから紅葉はこの話に割り込んでこないで!」
「私に関係のない話って言いたいわけ!? 今まで迷惑かけておいて謝りもせずよくそんなことが言えるね!」
もはや親子喧嘩になってしまった惨状を眺めながら俺は頭を回転させていた。 元はと言えば俺が暴走してしまったからこんなことになってしまったんだし、どうにかこの場を治めなければと考えていた。
すると、
「もうやめてよ! お義母さんは本当の子供の紅葉ちゃんとまで言い争わなくてもいいよ!」
お互いに息を切らしながら睨み合っている二人を未来は止めようと間に割り込んだ。
その場は一瞬にして静まり返ったが紅葉ちゃんは母親のことをもう一度睨みつけると、
「もういい、私はあなたと縁を切らせていただきます。 ほら、お兄さんに未来さん行こ」
「え……」
俺と未来は紅葉ちゃんに手を引っ張られ家の外まで連れられてしまった。 俺たちが外に引っ張っていかれる姿を見るクソババアの顔は敵ながら同情してしまうくらいに歪んでいた。
外に出ると紅葉ちゃんは手を放してくれた。 このまま家の前にいるのも気が落ち着かないと言って近くにあるカフェで話し合うことになった。
「紅葉ちゃん、本当にあんなこと言っちゃっていいの? 実の子供の紅葉ちゃんまでお義母さんと離れなくてもいいのに……」
やはり未来は罪悪感を感じているらしくすぐに仲直りするように紅葉ちゃんに言い続けている。
「私のことなら大丈夫です。 それにもうあんな人に頼らなくても生きていけますから」
何かから解放されたようにすっきりとした顔をしている紅葉ちゃんと裏腹に未来は心配そうにアワアワしている。
それを見かねた俺は紅葉ちゃんに聞いてみる。
「じゃあ、どこに寝泊りする気なの? 確かこっちに友達はいないんじゃなかったけ」
「あ…… えっと、そうです! お兄さんの家に泊めてください!」
「「……え?」」
……え?
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