大学生と条件

 ソファに二人で座り、映画を一本見終わったところで未来がソファに座り直し俺の方を向いた。


「この時間がいつまでも続けばいいなあと思ってたんだけどそうはいかないよね。 つっくん、お願いがあるの」

「おう、なんだ? 今なら何でも聞いてあげられる気がするぞ」


 未来から何かお願いをするなんて珍しいな、と思いつつ耳を傾ける。


「お義母さんのことなんだけど…… 話に行くの明日じゃダメかな?」

「……わかった。 ただし条件があるぞ」

「うん。 なんでも言ってよ」

「第一に未来は少しでもキツイと思ったら俺に助けを求めること」


 これ以上、家庭のことで心に傷を負ってほしくないし未来から合図がなければ俺が干渉するのは難しいだろうし。


「第二、話し合いじゃ解決しそうになかったらすぐに帰ること」

「うん、それくらいは分かってるよ」


 未来はこの二つは素直に受け入れてくれた。 ただ俺が心配していたのは最後の一つ、三つ目の条件だ。


「そして最後、何があっても絶対に俺たちのことを認めてもらうこと」

「ん、どういうこと?」

「おそらくあのクソババアは俺のことは認知していてもここまで関係が進んでいるとは思っていないだろうから、真っ先に俺と未来が結婚を見据えて付き合っていると伝えなくちゃいけない」


 未来からするとあまり伝えても変わらないことだと思うかもしれないがこれはすごく重要なことだ。 勝手に家庭事情に割り込んでくる他人と結婚を考えているほど関係の深い人間では発言一つの重みが変わってくるだろう。


 もっとも、あのクソババアなら全部他人で片付けそうなところが一番やっかいなところだ。 いくら関係があろうとも他人は他人で線引きされてしまっては元も子もない。


「つっくんがそう言うなら私は従うのみだよ。 今も、これからも」

「とりあえず未来は言いたいことを全部ぶちまければいいんだけどな。 悪役は俺が全部やってやる」


 なんとしてでも未来をあいつから離さなければ。 その一心で未来との話し合いは終わり明日に備えて寝ることにした。


「つっくんちょっと」

「ん、なん」


 お互いに寝る準備を済ませ、いざ部屋に入ろうとしたとき、


 チュッ


「はっ、えっ!」


 思わぬ不意打ちに俺は面食らってしまった。 目の前には頬を赤く染めた未来の顔しかなく思わず理性が飛びかけた。


 あぶないあぶない。 危うく身を汚してしまうところだった。


「おやすみのチューだよ。 明日からは毎日しようね」

「え、あ、おう。 おやすみ」


 俺はぎこちなく返事をすると未来は満足そうに部屋に入っていった。 俺はその背中を見送りながら唇に指を当て放心状態でいた。


 いや、女子かよ俺。 


 それからすぐに俺もベットに入った。 仰向けになり明日のことについて考えているとすぐに睡魔が襲ってきて俺を常闇の世界へ引きずり込んでいった。

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