大学生の相談
「いらっしゃーい! ご飯にする? お風呂にする? それとも……」
佐藤さんの家に着きインターホンを押すと「空いてるから入ってー」と言われたので扉を開けてみたらこのありさまである。
もう三十路にもなろう人が何やってるんだろう……
「それともお茶にする? ですよね、それにします」
「もー、つれないなー」
夏も真っ盛りということもあり、佐藤さんの格好は薄手のシャツだけである。 うっすらとシャツから紫色の下着も見えるが彼女としては平常運航なので気にしない。
だってこの人、夏になるといつもズボン履いてないんだもん。 もう慣れたよ。
「それにしてももう大学生だっけ? 大きくなったもんだねー」
「いやいや、佐藤さんこそ何でこんな豪華な家に住んでるんですか」
家の前に着いた時も驚いたが彼女の家はいわゆる高級住宅街にあり、外の壁は真っ白でとてもスッキリとした家だった。
「紗月君忘れてない? 私、人気作家なの」
「うわ、売れなくなったらアパートに逆戻りなタイプだ」
俺がソファに座ると佐藤さんはコーヒーを出してくれた。
「失礼なー、紗月君と違ってこれからも売れますー」
さて、お互いの皮肉を言い合うのもこれくらいにして。
俺はソファに座り直し佐藤さんを見る。 佐藤さんもそれを察知してくれたようで真面目な顔になる。
「君が私にお願いをするなんてね。 なにか深い事情があるんだろう?」
「よくお分かりですね。 実は……」
佐藤さんに包み隠さずすべてを話した。 未来の養母のことや最悪の場合裁判まで考えていることまで全部だ。
「なるほど…… まさか紗月君がそこまで考えているとは……」
これからのことも考えておくとあのクソババアは障害になりえる。 ならば援助費をネコババされているうちに解決して縁を切ってしまえばいいだろう、と俺は考えていた。
「でもね紗月君、この問題にはあなたが深入りしすぎてはいけないのよ。 紗月君が全部やっちゃったらこの先未来ちゃんは後悔すると思うの」
「な、るほど…… 俺が何とかしなくちゃと思っていたんですが……」
確かに俺が一人でやったら本当に解決したと言えるだろうか? もしも和解できるとしたら俺は彼女に後戻りのできないことをしてしまうわけだ。
「それにね、未来ちゃんにとって君は人生そのものなんだから。 こういう時くらい見守ってあげて本当に危なくなったら助けてあげなさい」
「佐藤さん…… 今までただのおばさんだと思っていてすみません……」
やっぱり佐藤さんの真面目モードはすごいなと痛感した。 たった十分程度の話なのにこうも先が見通せるとは……
ここは彼女の言う通り未来に何とか和解できないかどうかお願いしてみよう。 それでも未来がひどい扱いを受けるようなら俺が助けてやる。
「じゃあ、紗月君。 このことのお代なんだけど」
「え? 相談料かかるんですか?」
そんなの聞いてない。
「今から私のことをとぉーっても気持ちよくしてちょうだぁい」
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