大学生と従妹とその他

「あれ、まだ未来は出てないのか」


 それぞれの湯の入り口付近には未来の姿はなく座って待とうかと思っているとマッサージチェアには先客がいた。


「おっす紗月! 隣良いぞー」

「なんだ六実も帰ってきてたのか」


 フェリーから降りたところで別れたため六実がどこに行ったのかは知らなかったが、気にならないので聞かないことにした。


 何か言いたげな六実をよそにマッサージチェアに腰掛け百円を入れる。


「おお気持ちいいな。 これをお土産にしよう」

「それマジで言ってるなら一回病院行った方がいいよ」


 じゃあ今度病院行こう。 これを執筆するときの椅子にしようと思ったのに……


「で、未来ちゃん待ち?」

「そうだけど、六実は友達待ちか?」

「そうだよー。 最終日だからって長風呂してるんだけどのぼせてないといいなー」


 と、その時女湯から急いで浴衣を着たであろう未来が走って出てきた。


「つっくん! 女湯でのぼせた人が出ちゃったの! すぐに氷もらってきて!」

「わかった! その人たちを安静にしといてくれ! くれぐれも揺らしたりするんじゃないぞ」


 俺は急いで立ち上がりロビーの方向へ走っていく。 


 知らない人とかは関係ない、人が困っているのなら助けてあげる。 それが我が開隆家の家訓だ!

 まあ、そんな家訓ないけど。


 自分で脳内ボケツッコミをして、ロビーで氷をもらった。


「未来! もらって来たぞ! 早くこれを!」


 俺は自分が持っていた未使用のタオルに氷を包み未来に渡す。


「ありがと! まだかかりそうだからもうちょっと待っててね!」

「はいはい、ゆっくり待ってます」


 氷を受け取った未来は急いで女湯に入っていった。


 こういう時に逸早く動ける未来には尊敬しかない。 俺ならその場で立ったまま動けないだろうからな。


「六実は見てるだけかよ」

「まあ未来ちゃんが動いてくれてるなら私の出る幕はないかなって」

「その通りなんだけどな」


 正直手伝おうとしても邪魔になる気しかしない。 なので俺はマッサージチェアに座り直し未来が来るまでの時間をゆったりと過ごした。


 *


「おまたせー」

「おう、お疲れ様」


 十分ほどが経ち、女湯から未来と二人組の女子が出てきた。


「ごめんね六実~、のぼせちゃった~」


 どうやら六実の連れのようだ。 沖縄出身だと思うが二人とも肌は白い。


 沖縄の人はみんな黒いと思ってたけどそうでもないんだな。 


「じゃあ邪魔しちゃ悪いし俺たちは部屋に戻るな」

「はいはーい、未来ちゃんありがとねー!」

「いえいえー、困ったときはお互いさまー」


 未来に氷を渡した後に買っておいたフルーツ牛乳を手渡し俺たちは部屋の方に向かう。 なにやら後ろの方から、


「あれが六実の従妹!? めっちゃイケメンじゃん!」


 と聞こえてきたが反応しないでおこう。 隣で未来がフグのように頬を膨らませているし、どうせお世辞だろう。


 さて、部屋に戻って寝ていつもの日常に帰りますか!

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