大学生の生還

 俺たちが閉じ込められて二時間が経ち俺は暇を持て余していた。 未来も寝ているしスマホの充電もなくなってきたからそろそろ動かないかなあ、と思っていると、


『大変お待たせいたしました。 ただいま配線の修復が終わりましたので運航を再開します』


 と、無線から連絡がきた。 俺は嬉しさのあまり未来に話しかける。


「やったぞ未来! ようやく動くみたいだ!」

「すぅ、すぅ」


 ロープウェイが動き出したというのに気持ちよさそうに寝ていやがる。 まあいいか、麓に着いたら起こせば。

 あれ? ツンツンしても全然起きないぞ?


 *


 無事にロープウェイは麓まで到着し、係員の人に体調や予定の確認をされようやく帰ることができるようになった。


「大変申し訳ありませんでした! お詫びにフェリーの優待券と旅館までお送りいたします!」

「そんな、いいんですよ。 でもこいつが起きないので旅館まではいいですか?」

「あはは…… 是非そうさせていただきますね」


 結局フェリーの優待券ももらい夕方に旅館に戻ってきてしまった。 

 未来はと言うと、まだすやすやと眠っている。 ロープウェイから出るときも未来を担いでいたため肩や腰が限界に近付いている。


 なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ…… こういう力仕事は雄二や六実の仕事だろ……




「ん、つっくん。 おはよー」

「何だもう起きたのか。 もうちょっと寝ていても良かったのに」

「ってあれ!? なんで私、ソファで寝てるの!?」


 俺と未来は今、旅館のロビーにおり雄二たちに無事を伝える電話をしていた。 なぜロビーにいるのかと言うと俺のスマホは旅館に帰る際に電池がなくなってしまったのでロビーで電話を借りていたのだ。

 未来はロビーにあるフカフカのソファに座りなおして不思議そうな顔をしている。


「未来が寝ている間に電気が復旧してな。 起こそうとしても全然起きないから俺が運んできたんだよ」

「そうだったの!? ちゃんと起こしてくれれば起きたのに!」

「そうして頬をつねったりしたんだけど起きなかったんだよ」


 ちなみにぷにぷに過ぎて今度未来が寝ているときにまたやろうと思っていたり。 と言うかその位させてくれないと割に合わない気がする。


「そ、そうなんだ…… ふーん」


 未来は申し訳なく思ったのか居心地が悪いのかそっぽを向いてしまった。


「まあ今日中に戻ってこれて良かったな。 流石に夜まで閉じ込められていたら寒さがどうなっていたか分からないからな」

「そうだよね。 わざわざ運んでくれてありがとねつっくん!」

「感謝する気持ちがあるなら飯でもおごってくれ」


 それで済むなら安いもんだろ。 それに未来にの分の温泉卵は待っている間に小腹が空いて食べちゃったしな。

 そういえば昼ご飯も食べ損ねたな。


「そうだ! ご飯だよ! 私もうお腹ペコペコだよ……」

「じゃあここの近くの喫茶店にでも行くか。 夜ご飯まで時間がないから食べすぎんなよ」

「あいさー! すぐ行こー!」


 そうして俺たちはロープウェイから生還しフェリーの優待券までもらってしまった。 フェリーは明日行くとして、他に何をしようかな。

 あ、日向にもお礼を言わなくちゃな。 ん? 日向……?

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