第128話 フーテンの虎ちゃん(2)
リビングの隣の防音室に入り、俺は携帯をいじる。
(……さあて、ママンはっと)
最初何回かコールした時はスルーされたが、メールで要件を送ると、すぐに折り返しの電話がきた。
「――虎血組からはすでに出奔の話は聞いています。キャッツアイはそちらに行きましたか」
ママンが、興味薄そうな声で言う。
電話越しに、ウィーン、ボコボコボコ、ガガガガガガと、不穏な効果音が聞こえてくる。
これ絶対、マッドな実験してますね。
「うん。それで、キャッツアイの処遇だけど――」
「構いません。あなたの好きにしなさい」
俺が言い終わらない内に、ママンが即答した。
「いいの? 言っちゃ悪いけど、キャッツアイは虎血組への人質みたいなところがあったと思うけど」
「設立当初ならともかく、現在の虎血組の取引先としての優先順位はかなり下がっています。もはや、保険をかけるまでもありません。むしろ、義理立てする手間の方が多い」
ママンがぞんざいに答える。
(お兄様が勝利したことにより、提携しているママンの地位も相対的に上がったから、検体の入手に困らなくなったのかな?)
俺はそう推測する。
虎血組は頑固な硬派ヤクザなので、気に食わなければママンの命令にも従わない。
その辺が、倫理を無視して鬼畜研究に
「そうは言っても、虎鉄ちゃんは貴重なヒドラでしょ? そんな簡単に手放しちゃっていいの?」
「確かにヒドラは貴重です。しかし、汚せない雑巾、薬を打てないモルモットに使い道がありますか?」
「ひどいことを言うなあ」
「ともかく、キャッツアイと虎血組の縁が切れた以上、こちらとしては干渉する理由は特にありません。後は、あなたと虎血組の問題です」
「うーん。じゃあ、組長さんの連絡先、教えてもらえる?」
あんまり反社会的勢力と仲良くなるのはよろしくないので、間にママンを仲介に噛ませてたんだが、こうなっては仕方ないか。
「いいでしょう。メールで送ります」
ママンは一方的にそう言って、通話を切った。忙しそうだね。
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