第95話 ラブレターは都市伝説(1)
今日も小学校を終えた俺たちは、帰路についた。
いわゆる集団下校であるが、俺の部下の女の子たちが規律正しく一列に並んでいるので、ある種、軍隊の行進にも見える。隊列を崩しているのは、先頭の俺と幼馴染二人くらいのものだ。
「だいぶあったかくなってきたなー」
「うん。でも、桜、もう散っちゃったねー。お花見したかったー」
ぷひ子が名残惜しそうに言う。
この辺りには綺麗な山桜が咲くが、今年は天気の巡り合わせが悪く、外で花見をすることはなかった。
「そうねー。お花見の時期って、寒かったり、天気が悪かったり、微妙に残念なことが多いのよねー」
「本当に残念ー。あっ、でもね。山の中に散らない桜があるって、近所のおじいさんが言ってたよ。今度みんなで探しに行く?」
「ぷひ子、やめておこう。桜はな。散るから美しいんだよ」
「ぷひゅひゅー。ゆーくんおとなー」
「まあな」
俺はドヤ顔で頷いた。
っていうか、あんまりあそこには行きたくない。
根本にマジで死体が埋まってるから。
――などと、日常に潜む地雷フラグを回避してると、自宅についた。
「じゃあ、ゆーくん。晩御飯、ちゃんと食べに来てねー」
「おう」
俺はぷひ子に片手を挙げて応える。
「私はあの子のお誕生日のサプライズパーティーの準備をしてくるわ」
みかちゃんが俺に耳打ちする。うちはアットホームな職場なので、モブ娘ちゃんたちのお誕生日を逐一お祝いしているのだ。まあ、自分の誕生日なんて知らない子たちがほとんどなので、俺が適当に決めたんだけどね。
「ありがとう。みか姉。よろしくね」
俺も声を潜めて言った。
(さて、仕事、仕事っと)
俺は気合いを入れ直し、習慣的な動作で郵便箱を開ける。
(ん? これは――また大層ご丁寧なお手紙で)
中からは、封蝋されてる立派な手紙が一通。
開けるまでもなく、こんなこと手の込んだことをする奴は一人しかいない。
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