第12話 隠された騎士(1)
その村は幼樹の
クリモアの世界樹から直線
トゥーンの馬鹿げたスケール感であっても、やはりこれだけ
さすがにこれだけの
ようやく目的地の幼樹が見えてきたのは、夜まであと数刻という地球の感覚でいうところの夕方も近くになってからのことだった。
「朝からずっと飛びっぱなしで、やっと
広大なトゥーンでは世界樹と世界樹を結ぶ、ワープゲートとも言うべき樹門による移動が確立されている。
この樹門を経由することで数千km数万km
ただし、こういった樹門がない場所へは自分自身で移動するしか方法がない。
まさに今がそうで、
ましてや乗ると言うよりも着るに近い《
思わずため息の1つも出るというものだった。
『無事に
「キーヴァとエイリンのおかげだな」
『まったくだ。さすがに自分の領地で迷子になったなどとみっともないにもほどがあるからな』
セレスティーナも幼樹の
トゥーンの大地はとにかく、
山もなければ谷もなく、海さえも見当たらない。広大な大地を
おまけに太陽も動かず星も見えない。方向を
こんな有り様なので、ちょっと方角がズレただけでも簡単に自分の位置を見失いかねない。
道案内さまさまと言ったところだった。
『おやすいご用なのです!』
『……キーヴァは何度か方角を見失っていたではありませんか』
いつものように明るいキーヴァの声にこれまたお
『結果オーライなのです! と異世界人のお姉さんが言っていたのです!』
すっかりサクヤと仲良くなったキーヴァはいろいろと地球の文化について、あれこれと聞きかじっているらしい。
さすがというべきか、サクヤはサクヤで何かと地球人の対して当たりの強いクリモアでも着々と人脈を築いているようだった。
『しかし、実際に来てみたはいいがどうなることか』
「というと?」
『ああ。調べても記録には残っていない。母上と父上に聞いてみても、どうにもはぐらかされるだけで
「それはまた、変な感じだな」
何とも歯がゆいセレスティーナの話にシズクも首をかしげた。
シズクの知る限り、トゥーン人は武断的な価値観にかなり
それはセレスティーナのみならず、トゥーンの
よく言えば竹を割ったような性質で、悪く言えばあまり物を考えていない。
つまり、こういった何かをごまかすというのはあまりらしくないといえばらしくない。
「秘密にしておかないとマズイとか?」
『だったら、最初から知らぬ存ぜぬで通しそうなものだ。
少し考えてからセレスティーナはこう付け加えた。
『母上や父上のみならず、
「それじゃあ、俺たちがその
『言えるわけないだろう。これだって、表向きはキーヴァとエイリンの訓練になってるぐらいだからな』
そもそも、セレスティーナとシズクが新しく結成しようとしている
そんな
そして、クリモアが全体的に保守的だというのはシズクに対する態度からもはっきりと見て取れる。
そんな
ヘタをすれば幼樹の村を基点とした本来の任務である変異種の巣を探すことさえも不可能になる公算が高い。
そんなわけでセレスティーナとしても、真っ正面から「これこれこういうわけで、問題があってもいいから強い
『結局、
それまで
『はい。一族の
トゥーンの
見習いになってしばらくは同年代の仲間と共に訓練を行い、最後の仕上げとして受け入れ候補の部隊に配属されて数年の後に従
エイリンはこのどこかで顔を合わせることもあるだろうと思っていたらしい。
「キーヴァも似たような感じか?」
『そうなのです。あとは平民なのに祖の魂に認められたとかいう
纏めると、どうやら平民が才能を
そして、そのどこかで問題が起こったという感じらしい。
「だとすると、なんとなく歯切れが悪い理由もわかる気がするな」
『とういうと?』
「要するに最初から、平民なんだから
要するにセレスティーナの両親を
『そういう考え方もあるか……』
だが、セレスティーナはシズクの考え方はあまりピンと来なかったらしい。
「セレスはそうは考えない?」
『まあ、そうだな。平民だから
「そうなのか?」
『ああ。むしろ平民だから
「実際に会ってみないと、何もわからないか」
『そういうことだ』
「なんか、
シズクの想像では、割と
『当然なのです。こんなド
「え? そんなに目立ってる?」
思わず、自分の身体を見下ろすシズクにセレスティーナがあきれかえったような声で答えた。
『そんな真っ青な《
『そういうセレスティーナ様の《
冷静なエイリンの声に思わずセレスティーナも自身の姿に目をやったのだった。
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