第46話 一方的なライバル関係
小さい頃から、私は姉さんが大好きで憧れの存在だった。優しくて、頭が良くて、かっこいい。怪我をした人たちを助けるために医者を目指して、それを実現させた。本当にスゴイ姉さんだ。
周囲には、優秀な姉さんと私を比較してくる人たちが何人か居た。姉はスゴイが、妹はどうだろうか。そんな事を言ってくる人たち。でも気にしなかった。お母さんやお父さんは、私の優れている部分を見つけて褒めてくれたから。愛されていることを
身に沁みるほど感じていたから。
だけど、ちょっとだけ気になった。そこで私は色々と考え、姉さんに学校の勉強で勝ってみたいと思うようになった。姉さんにスゴイねと認めてもらって、頭を優しく撫でて褒めて欲しいから。
小学生の時には毎回テストの点数が100点だと先生に褒められて、中学生の頃は学年1位を常にキープ出来ていた。
「お姉ちゃん! みてー! 勉強、頑張ったよ!」
「うわぁ! スゴイ! よく頑張ったね、美卯。ヨシヨシ」
「うんッ!」
テストの紙をバッと広げて姉さんに見せると、頭を優しく撫でてヨシヨシと褒めてくれた。必死で勉強を頑張った、私の原動力である。
今思い返すと、その頃の姉さんは医者を目指す勉強などで色々と大変そうだった。そんな時にも私を気遣ってくれて、いつもと変わらぬ優しさで接してくれた。本当にスゴイ姉さんである。
小学生時代を無事に終えて中学校に上がると、私の反応は少し変わった。
「姉さん。今回も、うまく出来たよ」
「へぇ! スゴイ! 偉い! 頑張ったね、美卯」
「う。頭を撫でるのは、もういいって……」
「えー。昔は、可愛らしく喜んでくれたのにッ!」
「それは、昔の話だろう。今はもう、褒め言葉だけで十分」
「うそだぁー。今でも、頭を撫でられるのは好きでしょう?」
「……まぁ、ぅん」
中学生になってからは、少し恥ずかしくなったけれどテストの結果などは姉さんに報告するのを欠かさなかった。毎回、とても褒めてくれる。頭を撫でようとするのは勘弁してほしいと拒否しているけれども、本音は撫でてくれても良いと思っていた。顔が熱くなってしまうので、姉さん本人には絶対に言わないが。
高校に入学した後も、ちゃんと勉強を続けて好成績を収める。そのつもりだったが予定が狂った。
「えっ!? 私が、2位……?」
廊下に張り出されていた順位表を前にして、私は愕然としていた。一番上に、私の名前ではなくて別の男の名前が載っていたから。”中井祐一”という人物が、私よりも上に居る最優秀者であった。
「……中井祐一、名前は覚えた。次は、負けないッ!」
私は、そいつの名前を脳に刻み込んだ。そして、この悔しさを絶対に忘れないようにしようと思った。次こそはコイツに勝って、姉さんに褒めてもらう。
打倒、中井祐一! 高校に入った私の目標となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます