望む世界

ヘイ

こんな世界になって欲しい

 この世界で道徳を説くなど下らない。この世界に蔓延る悪意は留まることを知らず、どこまでも広がってゆく。

 人が人に優しくできない世界になった。人が人に優しくあれない世界になった。何処までも短絡的に物事を決断する人間が生まれてきた。何人もの人間がそんな世界にふるい落とされてきた。

 誰かに必要とされたいが、誰にも必要とされないというのが酷く恐ろしくて、膝を折った。

 

 Reason to I'm there.

 

 この英文の意味がわからなければ、必要ないと言われた。

 数学の公式を解けなければ価値がないと言われた。何もできなければ必要がないと言われた。

 これから覚えて行くはずのことを、できなくて当然のはずなのに、価値を見失われた。

 だから、この世界が嫌いだ。人間が嫌いだ。滅びて仕舞えばいい。

 そう思っている。

 人類なんて無用で無価値な存在だ。私は出来ることなら、誰とも関わらずに生きていたいと願っている。人と関わって生きるのは、ストレスを感じる行為だ。誰かを思いやりたくない。誰かに傷つけられたくない。

 誰かに必要とされていなければ、この世界で生きて行くには厳しいが、誰もが必要とされなければ、それもまた生きやすい世界になるのにと、私は思う。

 それもまた一つの幸せな世界だと思う。誰からも求められず、誰にも必要とされず、世界が皆そうであれば、誰も傷つけず、誰も傷付かずに一人で完結する。

 そんな自分だけで終わってしまう世界で私は生きていたかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

望む世界 ヘイ @Hei767

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る