第10話 そして母になる1

ルナール 視点


お腹が大きくなり、いつ出産するかわからないルナールです。

最近は赤子の移動もなく私のお腹にずっといます。

リアも常に近くにいてサポートしてくれて助かってます。


これから私達は母の本体である世界樹の側にある創造教の総本山の大神殿に向かいます。

創造教は創造神を始め、全ての神を祀っており、様々なご利益があるとして魔導族に人気です。

魔導族は種族全体で欲が少なく自分で困難に立ち向かう性質な為、神々から人気でさりげなく力を貸しているのです。

逆に知識族は強欲な上、担当神を間違えるなど無礼な為、よほどのお節介神しか力を貸しません。

もちろん魔導族にも悪い人もいるし、知識族にもいい人もいるがそれぞれ少数である。


この世界には神族と魔導族と知識族しかいません。

純粋な神族は父と私達兄弟と叔父の5人とお腹の子だけです。この子はわからないが他は輪っかのような髪が生える、皆が天輪と呼ぶ。


リアの父親のように神力が覚醒し、父が神と認めた者達を準神族と言われています。その子供も神族になったとしても準神族となります。

なお、母も準神族に数えられます。


魔導族は動物の特徴を持つ為、魔法と身体能力が優れています。

もともとは創造神の父が魔導族を作り出し魔獣との交尾可能性にしたからです。

オーク族やラット族など種族は多いですが、総括して魔導族と呼ばれています。


そして知識族も元は魔導族でしたが魔力が低く身体能力が低い為に種の独立を宣言した。その際に知識族(人間)と名乗るようになったそうです。


っと、長々と説明しているのは私が冷静ではないからです。


私達が大神殿に入ると見渡す限り

神、かみ、KAMI!?違った、GOD!?

知り合いの神は勿論のこと邪神もかなり来ていた。

なんで?


「ルナールちゃん、これから出産だって?頑張れよ」

「私も出産経験したけど、痛かったわ。でも頑張ってね。」


色々な神々に激励を貰った。

なるほど、私達の出産祝いか。早いよ。

陣痛もまだなのよ。


「ルナ、早く奥行こう。」


リアはあまりの事態に棒読みになってる。


「おお、来られましたか!奥にアルテミア様がおられますので付いて来て下さいませ。」


大司教が現れ付いて行くと医療の神のアルテミアさんがいた。


「アルテミアさんお久しぶりです。」


「ルナールちゃんも無事でなりよりよ。こないだ、急に創造神様から呼び出し受けて行ったらカグリアちゃんが成長しててびっくりしたわ。」


「あははは..」


私は何も言えなかった。


「こっちの部屋でくつろいでなさい。何かあったらすぐに駆けつけるから。」


「はい、お願いします。」


私達は部屋に移動し、ベッドでくつろいだ。

たまにアルテミアさんが診察に来た。


どうやらあの神々は父の連絡を受けて3日前から宴会しているようだ。

なんか神官達すいません。


神官達は魔導族で神々の信頼もあり大神殿を任されている。知識族の神官もいるらしいが大抵何かやらかして知識族の領地に飛ばされているようだ。


そんな事を考えていると水風船が割れる感覚と共に腹痛と下半身から水が流れた。破水と陣痛だろう。


すぐにリアがアルテミアさんを呼び分娩室に移された。


リアがずっと手を握ってくれてありがたかった。

父は母監視のもと拘束されているようだ。

今、来られても困るからね。


教えられた呼吸法をしつつ力む。


「あーー!痛ーい!」


私はあまりの痛さに叫んでいた。


ドサッ!?


「オギャーオギャー!?」


産まれた。

私は意識が朦朧とする中、産まれた赤子は毛布に包まれ渡された。

母乳をあげるように言われたので乳に近付けるとチュパチュパ飲み始めた。

ゲップをして満足したようだ。

私は赤子を顔を近付け。


「また、会えたね。これからよろしくね。」チュッ


私は赤子のおデコにキスをした。


「ほら、リアも抱いて。もうひとりのママですよ。」


リアに渡すと赤子がリアに抱きつくように手を伸ばした。

その表情は笑っているようだった。


「リア、こんな可愛い子を産んでありがとう。2人で頑張って育てようね。」


リアは泣きながら言った。


「ええ」


私は眠りに落ちた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私が目覚めるとベッドの上だった。

すぐに赤子を抱いたリアを見つけ安堵した。

なんかリアが、疲れているようにも見えた。


「おはよう、ルナ。

身体は平気?」


「ええ、大丈夫よ。赤ちゃんを抱きたいわ。」


「わかった。はい。」


リアから赤子を受け取ると優しく抱いた。


「そういえば名前決めないとね。」


そういつまでも赤子ではかわいそうだ。可愛い名前を付けなければならない。ムフゥ!


「名前決めは部屋の外で創造神様達がスタンばってるよ。」


えー、私達で決められないの?


「最終的に決めるのは私達だから安心して嫌ならやり直せるみたいだよ、候補の提供と立ち会いだから」


私の心情を察したのか、リアが疑問に答えてくれた。

そうなの良かった。


「わかったわ。行きましょう。」


リアに連れられて赤子と共に部屋を出た。

部屋を出ると長いテーブルに父と母と上の兄、上位神達がいた。いや、多すぎでしょ。

私達下級神だよ。


「おお!リア、頑張ったのう。その子が孫か?」


「はい。撫でるなら軽くですよ。

首はまだ座ってないのですから」


「うむ、わかっておる。可愛いのう、可愛いのう」

軽くナデナデ


ピコ!?ふぅ


「「「「「ん?」」」」」


その場にいた全員の声が重なった。


赤子の髪の毛が小さいが輪っかのような毛、天輪が生えたのだ。おそらく、まだ髪の毛が湿っていて立たなかったが父が撫でた際に立ったのだろう。


なぜ、全員驚いているかというと天輪は純血神が神となった時に生える。私や兄達も10歳過ぎてから生えた。

それまでは神見習いとして修行するのだ。

つまり、この子は産まれてすぐに神になったということだ。


「天輪が生えてぞ。」

「いや、早すぎるだろう。」

「だが、創造神様が必死に引っ込めようとしているがダメみたいだぞ。」

「アルテミアさんがハサミを持って来た。」


バキン!?


「「ハサミが壊れた!?」」


「流石の天輪、無理じゃのう。」


父が諦めた。

しかし、このままではこの子がすぐに神として祀られる。

せめて、この子が大人になるまでは自由にさせてあげたい。


ブンブン!


どうするか考えていると天輪が狼の尻尾のように動き出した。

天輪にそんな機能はないはず、私は動かないよ?


そして...

ピシッ!?

天輪はまっすぐ反り立った。


「ええと、これは天輪ではなく、アホ毛ということよろしくお願いします。」


私はなんとか声を絞り出した。

頑張った私エライ。


「そうじゃのう、アホ毛じゃ、アホ毛じゃ。

天輪なんてまだ生えてない良いな?」ギロ!!


「「はい、アホ毛です」」


父の威圧でその場は収まった。ふぅ!


ぶー!


赤子がなんか抗議しているように思うが気のせいだろう。


「さて、この子の名を決める。席に着くのじゃ。」


私達は下級神なので本来なら末席の方なのに父の隣に座らせられた。

ところで、前向き抱きのせいかアホ毛が顔に当たってくすぐったい。なんかさっきより絶対に太くなってるよね?

よし、横抱きにしよう。

あっ!大人しくなった。


「二人はどんな名にするつもりかのう?」


名前か...うーん。

星のように輝く金髪(アホ毛)

決めた!


「キララちゃんです。」


「「えー!!」」


「次期神じゃぞ、可愛いすぎじゃろ。」


「可愛いからですよ。」


「まぁ良い。次にカグリアはどんな名にした?」


「あたしはティアナですね。」


ティアナか後で理由聞いとこ。


「こっちはまともじゃのう」


失礼な!!


「では、この名から候補を出すかの」


父の話では夫婦で名を出し合い、合わせた名を与えるそうだ。

私の場合はルナとルルでルナールになったらしい。


数分して紙に書かれた名前が3つ並んでいた。


ティララ


キラティア


キアナ


さてどう決めるか。

どれもいいなぁ。


「では、赤子に決めてもらうかのう。」


「どうやってですか?」


「なに、簡単な事じゃ。赤子を紙の近くに置き最初に触れた紙を名前とするのじゃ。」


「動かなかったらどうします?」


「その時は紙を近づければよかろう。」


「わかりました。頑張ってね。赤ちゃん!」



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