第85話 折檻と褒美


 ヤヨイを手に入れて数時間が経った。

 既に日も暮れて真っ暗になってしまった。


 フィーアの道案内でオーストセレス王国方向に向かっている。

 隷婢達を連れてヴェストニア法国に行くことも考えたが、邪魔にしかならないと思ったので一度フィンフの元へ送ることにした。


 人形一号達が乗っている馬車を使って行かせてもいいが、今のままではダメだ。

 こいつ等にはやってもらいたいことがある。


 そのためにも隷婢達の関係性を良くしないとならない。


「おいヤヨイ、お前は俺の楽しませ方を知っているか?」


「そんなこと知らないわ」


 ヤヨイはふんッとそっぽを向く。


「ムツキ、手本を見せてやれ」


「は……はい」


 ムツキの声は震えていた。


 今はみんな夕食を食べ終えゆっくりしている。

 焚き火から少し離れたところにムツキは立っている。

 ちなみに人形一号達は此処から離れたところに馬車を止めさせた。

 失礼女がいたら、仲良く出来るものも出来なくなるからな。


「何をさせるつもりなの?」


「見ていれば分かる。お前もやる事になるんだからな」


 ムツキはゆっくりと服を脱いでいった。


 ヤヨイが何か叫びそうだったので、「黙って大人しくしていろ」と命令した。


 それでも動こうとするから、額の紋から黒い電流が体を蝕んでいく。

 ヤヨイは声にならない悲鳴を上げた。

 前にドライが命令違反をした時よりも強力なものだとすぐに分かる。

 こんなのが続けば、本当に死んでしまうな。


「死にたくなかったら俺には逆らうなよ……おい、何を手を止めているんだ。いいから続けろ」


「……すみません。ご主人様」


 ムツキは早く終わらせなければと急いで服を雑に脱ぐ。

 裸になるといつもの舞を始めた。


 未だに羞恥心が消えず、顔が真っ赤だ。

 体の動きと同機して揺れる巨乳。

 細い手足が薄暗い光の中を泳ぐ。


 何回見ても飽きないな。

 元日本人だからか、こういう舞はいつまでも何度でも見れる。


 七分程経ってムツキの舞は終了した。


 俺は拍手をしてやった。

 今日のは一段と良かったぞ。


「次はお前の番だぞ。キサラギ」


「はい」


 俺の脚で横になっていたキサラギは立ち上がるとムツキと同じ位置に立って服を脱ぎ始めた。

 こいつはムツキが服を脱ぐ時もヤヨイが苦しんでる間も何も言わなかった。

 見て見ぬふりではなく、本当に無反応だった。

 俺の足に夢中で気付かなかったのではないかと少し思った。

 考えてる間にキサラギは裸になっていた。


「お前は裸になるのに躊躇しないんだな」


「王子様に見てもらえるの、嬉しい」


 そうだよな。

 俺に尽くせるということに喜びの感情を持たなくちゃな。

 キサラギは模範となるような隷婢れいひだ。


「お前も俺を楽しませてくれ」


「分かりました」


 性格が良くても貧相な体でどうやるのか楽しみだ。

 アインスよりは大きくても貧乳の部類に入る胸では全然揺れないぞ。


 キサラギは目を瞑って集中する。


 目を開けると、大きく手を広げ、足を上げた。

 キサラギの体は凹凸が少ないが関節が柔らかく可動域がかなり広いようだ。

 踊りの種類としてはムツキと同じ『舞』だが、ムツキが妖艶でキサラギは華麗という感じで美しさがあった。

 ただ、もっと表情豊かだったらよかったんだけどな。


「どうでしたか?王子様」


「よかったぞ。中々に楽しめた」


「嬉しい」


 キサラギは裸のまま何も隠そうとせずに、俺の側でしゃがんでいつも通り足に顔を乗せて来た。


「服ぐらい着ろ」


「?」


「裸でいたいならそうしてろ」


 こいつの感性は隷婢としては正しいが何かズレているのは俺でも分かる。


「次はお前だぞヤヨイ」


「……はぁ、はぁ、はぁ……」


 さっきの命令違反の罰の影響がまだ残っているようだ。


「ゼント様からの命令ですよ。早くしなさい」


「……私にも……醜態を晒せと」


「ご主人様へご奉仕出来ることの光栄さを理解出来ないようですね」


「何が光栄だ!こんなのただの拷問じゃないか!こんなことを誇りだの光栄だの言ってておかしいと思わないの!こんな人の心が分からないやつなんて死んでしまえばいいのよ!」


 ヤヨイは痛みが和らいだのか、溜め込んでいたものを全て吐き出した。


「止めろ」


 俺が呟くと四人は手を止めた。


 フィーアはヤヨイの全身を縛って押さえつけ、アインスは槍で首を貫く寸前だ。

 ツヴァイは杖を構え、

 ドライは噛みつこうとしていた。


「ご主人様!こいつはご主人様のモノでありながら偉大なる主を侮辱したのです!その罪は死をもって償わせるべきです!」


「ゼント様のモノに手を出すことは私達も罪深いでしょう!ですが、これはゼント様のモノに相応しくありません。即刻処分すべきです!」


「ご命令頂ければ私もやります」


「食べる!」


 四人の眼は殺意に溢れいた。

 俺の命令でなんとか踏み止まっているが、それもすぐに限界がくるだろう。

 もしかして、殺人ということに対して四人の気持ちが揃って行動したのは初めてじゃないか?


「俺のモノに相応しいかどうかは俺が判断する。こいつには使い道があるから取っておいてあるんだ。それまでは我慢してくれ」


「ご主人様はそういうのでしたら……」


「ゼント様の寛大なお心に感謝しなさい」


 アインスとフィーアとツヴァイは武器をしまい下がった。

 ドライもツヴァイに連れられて下がった。


「はぁはぁ……くぅ……」


 ヤヨイは自分が殺されそうになったというのに強気な態度を変えるつもりはないようだ。

 本当に面白いな。


「その気持ちがどこまで続くか試してやろう」


 俺は奴隷達にある命令をした。


 四人はかしこまりましたと返事をするとすぐに行動を開始した。

 ドライが俺から渡った黒い皮で出来た首輪をヤヨイに付ける。

 ヤヨイは抵抗しようとするが、フィーアとアインスが抑える。


「出来ました」


 ツヴァイが地魔法で作ったが3mぐらいの硬いロープが出来上がった。

 アインスがロープを木に結ぶ。

 ヤヨイはアインスが退いた時に逃げようとするが、ドライが頭を抑えた。

 ロープのもう片方の端をツヴァイが地魔法で首輪と接合させた。

 地魔法には建築関係の魔法があるから色々と生活に便利だ。

 これでヤヨイは木から1mぐらいしか動けなくなってしまった。


「服が邪魔だな。フィーア」


「かしこまりました」


 フィーアが糸術でヤヨイの服だけを破いた。

 ヤヨイは裸になり、まるで躾の悪い本当のペットのようだ。


「その格好で朝までいろ。そうすれば羞恥心が少しは薄れるだろ」


「このような恥辱を与えただけで、私の心が折れると思うな!」


「そうか、それはそれで楽しみだ」


 俺はもう話すことないと後ろを向いた。

 ツヴァイにあることを耳打ちして、俺の足下から動こうとしない裸のキサラギに目を向けた。


「それで、お前はいつまで裸でいるんだ?」


「王子様はこの格好の方が好き?」


 まったく、本当に理解が出来ない。


「そんなに襲って欲しいならそうしてやる」


 俺はキサラギを抱き抱えた。


「フォーラをどうするつもり⁉︎」


「これはこいつが望んだことだ。俺はそれを叶えてやるだけだ。妹の初体験を覗き見たいのか?」


「ふざけるな!」


「うるさい奴がいると邪魔だな。二人で静かなところへ移動するぞ」


「王子様」


 キサラギは頭を俺に預けて気持ち良さそうな顔をしている。

 ヤヨイの声すら耳に入ってないのか?


「待ちなさい!」


 俺は無視して移動した。


 アインスとフィーアは特に何も言わない。

 暗黙のルールでその夜の相手が誰であろうと文句を言ってはならない。


「お前は姉があんなことになって何とも思わないのか?」


「可哀想だと思う。でも王子様が全て正しい。王子様の言う通りにしていれば幸せになれる」


 こいつは本当によく分かってるな。

 肉親であろうとこの態度だ。

 すごく可愛く思えて来た。

 目一杯優しくしてやろう。


 その日の夜、キサラギは初めて幸せの絶頂を体感し、快感の声を上げた。

 その声は他の奴隷や隷婢達にも聞こえていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 次の日、俺は昼前に目覚めた。

 昨日は夜明けまでゆっくり楽しんだ。

 キサラギは俺の足を枕にして寝ていた。

 腕より足の方がいいそうだ。

 臭わないのかと聞いたら、そんなことはないらしい。


 俺は足を引き抜き立ち上がる。

 ドテッと音がしたが気にしない。


「おはようございますご主人様。すぐに食事の準備をいたします」


 側いたアインスが馬車の外に出る。


「ご主人様、こちらが今日のお召し物でございます」


「あぁ、頼む」


 ムツキが俺の服を脱がして新しい服を着させる。

 これがいつもの寝起きの行動だ。

 着替えを他人にさせるのにも慣れた。


「ヤヨイは大人しくしていたか?」


「……はい」


 自分の姉のあんな姿なんて見たくはないか。

 だが、俺は悪くない。

 俺に従わないあいつが悪いんだから仕方ない。


「ゼント様、食事の準備が出来ました」


「分かった。キサラギ……足にくっつかれると歩きにくいから離れろ」


「王子さま〜」


 聞いてないのか。

 少しは甘い声を出せるようになったが、まだまだだな。

 俺はキサラギのことに気にせず蹴るように歩き出した。

 キサラギはこうされるのが好きで嬉しそうだ。


 後ろのムツキはもうキサラギに寄ろうともしなくなった。

 逆になるべく近付かないように歩いていた。




 俺達はいつも通りツヴァイとフィーアが用意した食事を取る。


「ゼント様、口を開けてください」


 ツヴァイがあーんで食べさせてくれる。

 奴隷達が前にムツキにやらせていた事を自分達もすると言って来た。

 面倒だから断ろうと思ったが、寝起きで頭がボヤけている朝にならいいかと、朝食だけ許可してやった。

 今日の当番はツヴァイだ。


「美味しいですか?」


「美味いよ」


「ありがとうございます」


「ドライもおいしい」


 膝の上にはドライが座っている。

 食事に手を使わない朝食だけ許している。


 キサラギがいつの間にか隣で驚いた顔をしていた。

 その目はドライに向けられていた。


「替わって欲しい」


「だめ!ここはドライのばしょ!」


「うーーー」


 キサラギが目を細めて睨む。


「うるさいぞ。お前も早く食え」


「……はい」


 キサラギはしょんぼりしてムツキからスープを受け取った。


 ムツキの席がなんとなくキサラギから離れている気がするが無視しよう。


「ゼント様。あれはどうしますか?食事を与えますか?」


 俺は『あれ』に目を向けた。


 裸のヤヨイが蹲っていた。


「食事は与えてやれ、首輪は外すなよ」


 フィーアがスープを持って近寄る。


「ゼント様に感謝しながら食べなさい」


 スープを置いて離れると、ヤヨイは歯を食いしばってどうするか悩んでいた。

 結局空腹には勝てず、食べ始めた。


 昨夜ツヴァイに朝食は消化にいい料理にしてくれと言っておいてよかった。

 これならヤヨイが食っても大丈夫だろ。


 食事が終わった後、俺はヤヨイの側にいた。


「どうだ?一晩その格好でいて裸でいるのに抵抗がなくなったんじゃないか」


「…………おま、え……なんかに……くっしないわ」


 まだ心は折れないか。

 こいつは本当に楽しませてくれる隷婢だ。


「トゥルー様!」


 声のした方を向くと人形一号達が合流していた。

 次の日の昼に合流しろと言ってあったな。


「あなたは!」


 失礼女が怒って足を出す前にアインスの槍に止められた。


「ご主人様の邪魔をするなら殺しますよ」


 アインスは本気だ。

 失礼女はその剣幕にやられて尻餅をついた。


「丁度よかった。ヤヨイは人形一号達の馬車に乗せろ。首輪も外さないし、服も着せるな。フィーアが見張っていろ」


「かしこまりました」


 フィーアは一礼すると、木に結んでいたロープを外しヤヨイを引きずって行く。

 ヤヨイは抵抗していたが、俺が「フィーアの言う通りにしろ」と命令すると大人しくなった。


 さぁて、馬車の中であいつと仲良くする方法をゆっくり考えるか。

 それと簡単にレベルアップする方法も考えないとな。

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