第5話 現実は息苦しい、だから僕は……
僕は彼女の去り行く背中をそっと見ながら、ネット小説家としての自分の事を考えていた。
僕の小説
そこそこ評価はもらっていたけど
ただ仮初のユメの微睡みの中、なんとなく書いていただけだった。
だけど、あの時
「私は冴木君の小説が大好きだよ」
藤原さんの言葉が、はじめてリアルでもらった感想が強烈で
僕を現実に引き戻された。
そして、僕は僕自身のささやかな夢に気づいてしまった。
モブだから、スキルがないからと嘯いて、本当の気持ちに気づかないまま、微睡んでいたけど僕は……
僕は小説家になりたい!
そんな思いを胸に抱いた僕は、これまでと違い、いろんな本を読み、文章に悩みながら、物語を紡ぎだした。
僕の作風が変わったというのなら、その影響もあるだろう。
だけど、一番影響を与えたのは……。
藤原さん、君なんだ。
僕は今、君に恋している。
僕の夢は「小説家になる」だけど、それだけじゃない!
小説を書く僕の隣に……!
僕は去り行く彼女の背中を見る。
小説家なんてなれないかもしれない
彼女に振られ、合えなくなるかもしれない
現実は息苦しく、運命という大河は冷たく澱み、僕は力尽き、ただ沈んでいくかもしれない
でも……
仮初めのユメでは満足できない。
彼女の笑顔を、自分のなりたい夢を、現実で感じてしまったから。
だから!
息苦しいなら、大きく息を吸いこめ!
動けなくなるまだもがき続けろ!
夢を手に入れるんだ、手に入れたいんだ!
「藤原さん!」
彼女は振り向く。
そして僕の顔をみて、驚いたような、困ったような、そして、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
彼女が何を考えているのかわからない。
不安が押し寄せる、壊れてしまうのなら、ユメのままでもいいじゃないという考えが脳裏をよぎる。
ダメだ!
ダメだ!
あがけ!
あがけ!、
期待も不安も喜びも恐れも
現実(リアル)でしか味わうことができない夢へ至る一歩だから……
僕はその最初の一歩を僕は踏み出した。
「日曜日、僕と……!」
なんとなくネット小説家になった僕だけど、恋愛したり夢を追ってもいいですか? 水無月冬弥 @toya_minazuki
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