Ⅱ第三十一話 ロイグ爺さんと連絡石
「おい!」
また若い衆が飛んできた。
「連絡石、持ってきてくれ」
ロイグ爺さんがそう言うと、若い衆が飛び出していく。待っていると木箱にいっぱいの連絡石を持ってきた。
「依頼は魔法局か?」
ミントワール校長の会話を思い出す。総合窓口みたいなのと話して、それから・・・・・・
「住民局だったと思います」
「なら、局長はゴブスロイだな」
ロイグ爺さんはそう言って、木箱の中をごそごそあさった。魔法石は宝石に力を封じた物だ。色も形も様々だが、どれが誰のか覚えているのだろうか。
「あったあった」
手にしたのは少しくすんだ青い宝石だ。片手に持って光らせる。
「おう、ゴブ、俺だ」
住民局長へのなんたる気軽さ。
「最近よ、山から動物が下りてきて困ってんだ。住民局はなにしてんだ?」
向こうの声は聞こえないが、この感じだと、さぞや焦ってるだろうな。
「・・・・・・調査を依頼してるだぁ? おう、じゃあその調査の結果を言え」
えっ、おれまだ、何も報告してないけど。
「・・・・・・なにもわかってねえだ? てめえ、何もやってねえと同じじゃねえか!」
おれが怒られてる気分になってきた。
「・・・・・・結界球が必要で? ・・・・・・取り寄せ中? 嘘つくんじゃねえ。どうせ何もしてねえんだろう。俺が仕入れといてやるよ。何個いるんだ?」
ロイグ爺さんがおれを見つめた。あっ、これはおれに聞いているのか!
1個、いや、ここは調子に乗って2個だ!
「4つありゃあ、充分だろう。4つ、こっちで仕入れとくからな」
よっ! 声に出しそうになり、あわてて口を手で押さえた。
「調査するやつに渡しといてやるよ。誰がやってんだ?・・・・・・カカカ? なんでえ、そりゃ名前か? おう、ギルドの冒険者か。わかった。ちったぁ仕事しろ、くそが」
ロイグ爺さんは手にした連絡石を置いた。
「だ、だいじょうぶなんですか?」
「おう、あの住民局長は、弱みをたっぷり握ってるからな」
局長、気の毒。
「でも4つって! すごい金額になりますよ」
「ああ、島民のためになる。軽いもんさ。あいつら、ほっとくと城に金かけてばかりだからな」
そうは言っても4つ。向こうの金で言うと、1個500万ぐらいだったはずだ。合計2000万。も、もはや公共事業だ。
おどろいていると、ロイグさんは続いてもう一つの連絡石を持った。石が光る。
「おう、久しぶりだなバフ。ロイグだ」
おれはイスからずり落ちそうになるのを、今一度食い止めた。バフとは、たぶんダネルの親父さんだ。
考えると、そりゃそうか。バフ爺さんは昔、道具屋をしてたんだ。そして、この人たちが繋がっていても不思議はない。せまい島だ。
ロイグ爺さんは「結界球」を4つ、バフさんに頼んだ。
「おう。おめえもたまには山から下りてこい。一緒に飲もうや」
そう言って連絡を切った。
「バフ・ネヴィルさんですか?」
「なんだ、知り合いか? おめえ、アドラダワーといい、この島の変わりもんと、ことごとく知り合いだな」
組長、いや、網元にそれを言われたくない。
「一週間ほどで手に入れるとよ」
おれはうなずいた。その結界球、ダネルが用意する事になるんだろうなぁ。
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