5月 五月最後の日に

 去年の9月にこの月刊エッセイを始めたとき、大ざっぱにですが、1年間の計画を考えていました。もちろんすでに変更したところもありますが。

 手元のメモを見ると、2021年5月のところには「コロナの頃な」というタイトルが書かれています。

 一年前のわたしはこう思っていたのです。


「こんな非現実的な出来事はすぐに終わるだろう、ショッピングモールや図書館までもが閉ざされて、街から人が消えるなんて。来年の今頃には、『ああ、一年前は信じられないことが起こったなあ』なんて思いながらエッセイを書けるだろう」と。


 実際どうなったかは、みなさんもご存じのとおりです。わたしは今月何を書けばいいのか分からなくなってしまいました。それが、5月の月刊エッセイが今日まで遅れてしまった理由です。


 今年は6月を待たずに梅雨に入りましたが、天気のいい日には気持ちのいい緑の季節で、休みの日には遠出もできずに家の近くの町並みや田んぼや川沿いをぶらぶらしたりもしています。

 ハルジオンやナヨクサフジ、ホトケノザ、ナガミヒナゲシ、そんな花の名前を覚えました。植物だけでなく、シラサギやヒヨドリ、ミドリガメ、ホウネンエビ、アマガエル、アメンボ、モンシロチョウ、モンキチョウ、タニシといった小動物もたくさんいます。何事かが起こっていると思ってるのは、どうやらわたしたち人間だけのようです。


 明日の見えない世界の中で、視線は外に向かって広がるのではなく、内側へ、足元へ、細部へと向かいがちです。だとしたら、何かがうまくつながれば、また小説も書けるでしょう。


 今月は休載するつもりでしたが、書くことを途切れさせるのは惜しいので、こんなとりとめのない、短い文章を載せておくことにします。ごきげんよう。


 

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