第65話 マッドドラゴン討伐

Side:ヒースレイ国の農民

「おい、なんか揺れてないか」

「大変だ。神様がお怒りに違いない。地震が来るぞ」


 俺はヒースレイ国で農民をやっている。

 神様を怒らせる事なんかあったか。

 いや無いはずだ。

 そりゃ一時期は酷かったさ。

 土地が負の魔力に汚染されて、ろくな作物ができゃしない。


 最近はそんな事もなくなったって喜んでいたのにな。

 地震は一向に収まらない。

 収まらないどころか酷くなる一方だ。


 神がお怒りなのかねぇ。


「あれ、何だ」


 俺は言われて指で指示された方向を見た。

 何だろね。

 ミミズのでっかいのが暴れてる。


「俺は逃げるぞ」

「逃げるってどこに」

「とにかく逃げる」


 見ると俺達の仲間の対応は二通りだ。

 逃げるのと神に祈るのとだ。

 俺はシゲル神に祈った。

 最近便利な物をもたらしてくれるシゲル神は大人気だ。

 都会ではシゲル神が現れたなんて噂もある。


 こういうのは詐欺が多いが、この世界は本物の神が居る。

 ろくでもない神だが、嫉妬深い。

 神を騙るなんて事をすれば、天罰を食らう。

 だから、シゲル神は本物だろう。


 おれもシゲル神に祈っておくか。


「シゲル神よ、我らを救いたまえ」


 ミミズの化け物は、段々近づいてくる。

 やっぱりシゲル神も偽物だったのかねぇ。


 その時、空に黒い点が現れ、こちらに向かってきた。

 そして、黒い点は畑に落ちて爆発した。


「ジゲル神よ、場所を間違えてる。落とすなら、化け物の上に落としてくれ」


 俺の願いが通じたのか黒い点は数回、場所を間違えてから、化け物に当たり始めた。

 やっぱりシゲル神は居たんだな。

 商人の金もうけの産物じゃなかった。


 そして、全ての化け物が倒された。

 後に残されたのは滅茶苦茶になった畑。


「退治してくれるのは良いけどよう。後始末の事も少しは考えてくれよ」


 思わず愚痴りたくなる。

 幸いミミズの化け物はいい値で売れた。

 だけど、食えなくなった作物ほどじゃない。


「シゲル神よ、この苦境を救いたまえ」


 神に祈っても仕方ないから、最近流行っているジャガイモというのを植えるか。

 三ヶ月ぐらいで収穫できるって事だが遅い。

 遅すぎる。


 だが、瓜や葉物を飢えても水っぽいばかりで腹の足しにはならない。

 植えるなら芋か麦だ。

 まあ、神に祈っても仕方ない。


 俺はそう思っていた。

 しかし、なんと芋が十日で出来たのだ。

 神は居たんだな。

 これからはシゲル神に欠かさず祈りを奉げよう。


Side end


「大変だ。マッドドラゴンが出たぞ」


 畑仕事してたら、ピピデの民が駆け込んで来た。


「狂ったドラゴンとは物騒だな」

「違うよ。泥のドラゴンだよ」


 異世界語をスキルで翻訳してるけど発音が悪いとたまに間違う。

 子供に指摘されてしまった。


「で、こちらに向かっているのか」

「どうも違うらしい。群れのリーダーが間違ったのか分からないが、ヒースレイ国の国境に向かっているそうだ」

「ところでマッドドラゴンってどんな奴」

「おじさん、何も知らないんだな。ミミズのでっかいのさ。ラクーなんか一飲みだよ」

「砂の世界のSFに出て来るような奴ね」


 警告してやらないとね。

 いや待てよ。

 精霊砲で迎撃するか。

 そっちの方が早いな。


「目標、マッドドラゴン。撃てー」

「アースコントロール」

「ボム」

「ウインドコントロールや。あかん。うち、こいつら直視できん。狙いがずれた」


「ステイニー、ミミズが苦手なのか。精霊を介して見てもだめなのか」

「そうや。こいつらが潰れるところ想像してもうたら、何や外してしまう」


「何回かやれば慣れるだろう」


 何回か試したが一向に当たらなかったようだ。


「マッドドラゴン、虫じゃない。手足と翼は退化してるけどドラゴン」

「エリザドラ、そうなのか」

「たしかそう」


「なら、もんだいあらへん。よっしゃつぎは当てるで」


 それからは見事に当たったようだ。

 俺、何にもしてないな。

 よし。


「目標、マッドドラゴン。撃てー」

「アースコントロール」

「懇願力よ、豊穣の力を与えたまえ」

「ボム」

「ウインドコントロールや。どんなもんや。当たったでぇ」


 砲弾に豊穣の力を与えた。

 着弾地点が豊作になるだろう。


「風の精霊がマッドドラゴンが他にもいるってゆうてるで」

「よし、暴れている奴は全部つぶそう」


 マッドドラゴンは精霊砲改で退治された。

 なんだか、懇願力が上がっている。

 何でだろ?

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