第51話 やらかす

 俺の扱いはどうなっているのかな。

 ヒースレイ国が何も言って来ないって事は招かれざる客ってことだろう。


 まあ手順を色々とすっ飛ばしているのは分かるからヒースレイ国を責められない。

 まず第一にこれこれこういう人間がこういう日程で訪れますって言わないと、接待もあったもんじゃない。


 ランドルフには一発ぶちかまして来いと言われたが。

 どうしたものかな。


 魔法でぶちかましてテロをやる訳にもいかない。

 畑も見当たらないから、作物を成長させるのもな。


「なぁ、目立つなら、どうしたら良いと思う」

「ぴい」


「えっと、赤い足環だから、アンだな。くすぐったいよ。舐めるなよ」

「仲がいいのね」

「おはよう、エリザ」

「おはよう。鳥さんも、おはよう」

「「「「「ぴい」」」」」


「賢いのね」

「こいつらが喋る事ができればな」

「目立ちたいなら、聖樹様の所ね。あそこなら人が沢山いるから」


「ありがと。行ってみるよ」


 俺は聖樹を目指した。

 聖樹の周りは人だかりが沢山あって、なんだか桜のご神木を見ている気持ちにさせられて懐かしくなった。


 人々は満開の花をつける聖樹の近くで祈ったりしている。


 これにぶちかまして怒られないかな。

 ええいままよ。

 俺は聖樹に手を触れて育てと精霊力を流し込んだ。

 負の魔力がしみ込んでいて、精霊力に抵抗する。

 負の魔力も浄化しちゃえ。

 清浄な魔力で相殺する。


 樹が一回り大きくなり。

 一つの花が巨大な実をつけた。


 民衆がざわめく。

 俺、やっちゃったか。


 実から光が出ると、大精霊が現れた。


「やっと、復活できたわ。あなたが助けてくれたのね。どちらさんかしら」

「俺はシゲル。半妖精だ」

「違うわ。あなたは神よ。神様だわ」

「そんなに感謝しなくてもいいのに」


 神が現れて大精霊を復活させたと民衆が騒ぐ。


「違うから」

「何が違うのかしら、あなたの力で私が復活したのよ」

「それは違わないけど、神じゃないから」


 群衆のざわめきで俺の声は誰にも届かない。

 神だという声がそこら中で聞こえる。


 中には俺に向かって祈りを奉げる人もいる。

 あれ、給料力が増加している。


「まさか。ステータス・オープン」


――――――――――――――――

名前:シゲル・リョクテ

魔力:19787/19787


スキル:

 サケタの種

 国家園

 名前ジェネレータ

 言語理解

 絶倫

 賢者タイム

 レベルアップ

 エイヨーN2

 エネメス

残金:

 1,637,014円

 次の給与まで16日

――――――――――――――――


 うわ、給料がいきなり100万円超えになった。

 給料力って願いの力なのか。

 懇願力が正しいのか。

 そう言えば商品を頼むのも懇願していたよな。

 俺に懇願すると給料が増えるとは新しい発見だ。


「ちょっと聞いてる」

「悪い、考え事してた」

「私はピリチェの樹の大精霊」

「場所を移さないか」

「嫌よ。大精霊は精霊の樹と共にあるものよ。いくら神の頼みでも聞けないわ。あれおかしいわね。神の言葉には絶対服従のはずなのに。あなた様はどういう神なのですか」

「神じゃない。異世界から連れて来られた一般人だ」

「異世界の神なのですね。それなら支配が及ばないのも頷けます」

「もう良いや。俺が神で。じゃ、もう行くから」

「またいつでもいらして下さい。異界の神よ」


 ぶちかます事が出来たが、これはいいのか。

 俺の後ろにぞろぞろと人がついてくる。

 俺は帰るのだけど。

 エリザの家の門で追い払ってもらおう。


 俺がエリザの家に辿り着くと門番は目を丸くしていた。


「すまん、迷惑をかける。この人たちはなんと言ったらいいのか。追っかけだな。人気俳優が追いかけられるだろ。あれと一緒だ」

「そうですか。有名人なのですね」


 さっき有名になった。

 聖域に帰りたい。

 今日中に始末をつけて聖域に帰るぞ。

 絶対そうする。


「エリザの父に会いたい」


 俺は低宅で女性の使用人を捕まえて言った。


「会頭様でしたら、店です」

「緊急なんだ。この国に反乱が起こるかもしれない」

「大げさな。本当ですか」

「本当だ。大精霊に誓っても良い」

「分かりました。連絡してみます」


 しばらくして会頭が姿を現した。


「これでも、私は忙しい。大精霊が異界の神の手によって復活したと噂が流れた。この商機を物にしなきゃならん」

「すいません。私がその神です」

「からかわないでもらいたい」

「門に詰め掛けている人をみたでしょ」

「えっ、本当なのですか」

「不本意だけど。やって貰いたいのはお城に先ぶれを出してほしい。王に会ってこの騒ぎを終わらせる」

「そんな、大精霊グッズを発注しようか検討中なのに」

「大精霊の復活は本当だ」

「よしグッズを大量発注するぞ。こうしちゃいられん」

「あの先触れは」

「任せてくれ」


 身分を証明する書簡を会頭に手渡した。

 これで事態は収束に向かうはずだ。

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