第1島は科学生物技術島。

 長官はレナート・オゼロフ。

 体は大きく、動きものんびりとしているが頭脳明晰で手先の器用さは誰にも負けず、何よりレナートはすべての島の中でも珍しく、15歳にして長官になった。現在は28歳で他の島の長官よりずっと若い。

「それでは、先に失礼します」

 レナートは微笑みながら隣に座る第2島の長官に挨拶し部屋へと向かった。

「相変わらず、嫌な笑いをするやつだわ」

 レナートの後ろ姿を睨みつけながら言ったのは、第2島、食物生物技術島の長官、エディット・オータン。

 それを聞き、隣に座る第3島長官、王泰然おうたいぜんはにこやかな笑顔でエディットに茶を薦めた。

「オータン様、そのように顔を歪めてはせっかくのお美しさが半減してしまいますよ」

「泰然ですか。ふぅ、こういう時は貴方が羨ましくなるわね」

「左様で?」

「貴方は私達ほど、様々なことを考える必要が無いでしょう?」

「そうですねぇ、私達が考えることといえば商売のことだけですから。本当にオータン様もオゼロフ様も大変だと思います」

 蔑むような瞳を向けて嫌味を言い放ったエディット。

 しかし、泰然にはそれを嫌味として受け取る性質が備わって無いため、ただの会話として成立し、エディットはつまらないといった風に鼻息を大きく吐き出す。

「エディットもいい年なんだから、そろそろ、そう言う馬鹿っぽい真似はおよしなさい。第3島の連中には我々と同じ因子は組み込まれてないのよ」

「だからどんな嫌味も効き目はない。分かっていながらやってるなら酔狂もいいところだね」

 エディットよりもずっと年をとっている白衣姿の女性、第4島、電子技術島長官、シェリー・ウィルビーが口を出し、更に横からエディットよりも少し若い第5島、職人島長官、如月志門きさらぎしもんが言葉を挟む。

「シェリー、馬鹿っぽいはないでしょ。それに酔狂にもなるでしょうよ、レナートのあの態度を見れば」

「あら、仕方がないでしょう、最年少で長官になったんですもの。偉い立場を若くして手に入れれば誇示したいと思うのが人の常。ねぇ? 志門」

「嫌な振りだね。僕もそうだったって言いたいみたいだ」

「あら、違わないでしょう? 彼の前は貴方が最年少記録だったんですもの」

「そうだねぇ、そういう気持ちが無いとは言えないかな。けど、レナートと一緒にされるのはやめてほしいね。僕はあの自分だけが特別という感じではなかったよ。ちゃんと自分の立場ってものは理解していたさ」

 三人が口々に放す中、泰然だけはその話の内容が今ひとつわからず首をかしげた。

「皆さん、なんだか難しい話ばかりで。私にはよくわかりません」

「それはそうでしょう、第3島ですもの。分かったら分かったで困るわ」

 シェリーがにこやかに言えば、エディットがため息を付きながら口を出す。

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