2章 3話 《前衛将軍》
あれから、悠乃たちは近くの公園でイワモンの話を聞くこととなった。
「気を取り直して、だ。業務連絡をしても構わないかね?」
「……はい」
イワモンの言葉に、薫子は暗いオーラを纏ったまま萎びた返事をした。
よほど下着を見せてしまったことが深いダメージになっているらしい。
もっとも、悠乃も思い出すと恥ずかしさで顔から火が出そうなので、彼女と大差がないのだが。
「イワモンが来るっつーことはよ。《怪画》がらみってことか?」
「イエスなのだよ」
璃紗の言葉をイワモンは肯定する。
そして、彼は神妙な表情を浮かべて語る。
「例の残党軍。将軍を名乗るレディメイドを倒したことで解決したと思われていたのだがね……問題が発覚した」
「問題?」
悠乃は首を傾げた。
レディメイドの消滅は確認した。
彼が生きていたという可能性はないはずなのだが。
もっとも、魔王グリザイユの生死を見誤った悠乃にそれを指摘する資格はないのかもしれないが。
「ああ、残党軍における最高権力者は《
「「「四人……!」」」
イワモンからもたらされた情報に、悠乃たちは驚愕する。
レディメイドはこれまで戦ってきた《怪画》の中でもトップクラスの強さであった。
だからこそ、彼が残党軍のリーダーであることに疑いを持たなかったのだ。
しかし、イワモンの話を信じるのであれば、《怪画》の残党軍にはレディメイドに準ずる実力者があと三人も控えているということになる。
「それは確かなの?」
「ああ、確かな情報だよ悠乃嬢」
「マジかよ」
うんざりしたように璃紗が嘆息する。
正直、あのレベルの戦いを最低でも三回もしなければならないと思うと悠乃も憂鬱な気持ちになる。
「――そこまで来ると『残党』という表現が正しいのか疑問ですね……」
薫子も厳しい表情でそう漏らす。
前回のレディメイド戦では、悠乃たちは全滅の危機に陥ったのだ。
それだけでもこれからの戦いが激しさを増すことは想像に難くない。
場の空気が重くなったことを察したのだろう。イワモンが手を叩く。
「しかし、そう悲観することもない。事態が想定よりも大きくなったことを受け、
「?」
自信満々にそう言うと、イワモンが懐からあるものを取り出した。
「! それは!」
悠乃は目を見開いた。
イワモンの手に握られていたのは、黒・白・灰色のクリスタルだったのだから。
魔法少女となった悠乃たちは知っている。
あのクリスタルを取り込むことで、自分たちは魔法少女となったのだから。
「五年前の戦いでさえ三本のクリスタルしか支給しなかったケチな老害どもが今回はさらに三本のクリスタルを持ってゆくことを許可した。この意味が分かるかね?」
イワモンは腹を叩くと、ご機嫌な笑いを浮かべた。
「――これから、悠乃嬢たちには新人魔法少女のスカウトをしてもらおうと思う」
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