第539話 冒険譚を語る
リュー 「いや、違う違う……まぁその、師匠みたいなもんだ」
ソフィ 「し、しょう?」
エリザベータ 「師匠~?」
エリザベータは不満げである。確かに、師匠というのも間違いとも言えないが、二人は既にそれなりの関係なのだから、なぜ堂々と恋人だと紹介してくれないのか? と思っていたのである。
リュー 「ああ、竜人としてのな。色々教えてもらっている」
ソフィ 「あなたも竜人なのですか?!」
エリザベータ 「はじめまして、リューの
ソフィ 「恋人……?」
エリザベータ 「世界を見てみたくて、竜人の里を飛び出して旅をしておりまして、リューと出会いまして」
ソフィ 「…そう、なのですね…」
エリザベータ 「お噂はかねがね。大変名君と名高いソフィ女王様にお会いできて光栄です」
ソフィは一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに女王の顔に戻った。
ソフィ 「竜人の里とおっしゃいましたか? それはまた、興味深い話ですね…。とりあえず、掛けて話しましょうか」
その時扉がノックされ、声がした。
『マルケス様とマルス様がお越しです』
ソフィ 「入ってもらって」
ソフィの言葉で扉が開き、マルケスが入ってくる。
マルケスはソフィの従兄弟であり、公爵ジョルゴの息子である。ただ、学者肌で政治に関心がなかったため、父や兄から遠ざけられて家庭教師に任されていた人物である。
ただ、公爵はクズだったが、家庭教師による教育が良かったためマルケスはクズにはならず。父親の悪行を知り、ソフィとともに王位を簒奪しようとした父ジョルゴを断罪したのであった。
その件でマルケスとリューは旧知であるが、その後に入ってきた少年を見て、リューは言った。
リュー 「その子は…ソフィとマルケスの子か?」
ソフィ 「ちっ、違います! 私には子供は居ません!」
ソフィは語気も強く即座に否定した。
聞けば、ソフィは女王として忙しく、未だ独身であるらしい。後継者を望む声もあったが、それはマルケスの子供であるマルスに任せるつもりで教育しているのだそうだ。
つまり、少年は次の王となる王子と同様の立場だと言うことであった。
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マルケスは王位簒奪を企てたジョルゴの息子ではあるが、ソフィが王位を継いだ後、マルケスとソフィの関係は良好であった。マルケスは父親や兄とは違い、臣下の者達からも好感を持たれる人物であったため、二人が結婚して子供を作ることを望む声もあった。だが、ソフィはそれを拒否。結局、マルケスは親戚筋である隣国フェルマーから妻を貰う事になったのであった。
実は、ソフィは自分が王位にいるのはあくまで暫定のつもりであった。マルケスに王としての勉強をさせ、準備ができ次第彼に王位を任せ、自分はできるだけ早く引退して冒険者になるつもりだったのだ。
だが、学者肌だったマルケスは、自分は上に立つ器ではない、サポート役が適任であると言って王位継承を固辞。結局、妥協点として、マルケスが子供を作ってその子を次の王に教育するという事になったのであった。
ただ、ソフィは女王としても人望が厚く、仮にマルケスの子が王位を継げる年齢になったとしても、簡単に引退させてもらえるかはあやしいのであったが。
残念ながら、ソフィが冒険者になれる日は訪れそうになかった。ソフィも、心のどこかで、叶わぬ夢であると薄々は理解していたのだが。
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ソフィ達のその後と近況を聞いた後、リューは自分の冒険の話を語って聞かせる事になった。ソフィにせがまれたためである。ソフィは忙しく、あまり長い時間を取れないので、自分達の話よりも、リューの話を聞きたがったのだ。
冒険者に憧れていたソフィであったが、その夢がすぐには叶えられない事も理解していたソフィは、せめて、リューに世界を旅してもらい、その話を聞かせてくれとリューと約束していたのである。
もちろん、リューもその約束を忘れたわけではない。
リューは、世界が統合してミムルが復活した事により、話に食い違いがあるかも知れないので、適当に話を誤魔化しながら、確認しながらではあったが、ソフィ女王に旅の話を時間の赦す限り語って聞かせたのであった。
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次回予告
リュー (イライラはどうしているかな?)
乞うご期待!
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