第517話 懐かしのミムル

ミムルのあるガリーザ王国に馬で向かったリュー。


魔法王国ガレリアの王都、ガレリアーナを出、あいだの街をいくつも通過し、国境の街ドレッソンを出て、緩衝地帯を通過して隣国であるフェルマー王国へ入る。


ガリーザ王国に行くためには、さらにフェルマーを縦断する必要がある。


フェルマー王国には鬼教官イライラと凄腕魔道士のギルマス・ネリナの居る街バイマークや、オルドリアン・シンドラル伯爵の領都ベイジム、不死王の居るロンダリアなどの街があるが、それらをすべてスルーして、リューは最短距離でガリーザを目指した。


道も知っているし、最短ルートを急げば二週間くらいで着くだろうとリューは予想していたのだが、思ったより時間が掛かってしまった。


まぁ急ぐ旅でもない。


途中、襲ってくる魔物や盗賊を倒したり、街への入場で揉めたりと、なんやかやとお約束のトラブルもありつつ、またエリザベータに色々と竜人について教わりながら……


二人きりで旅をして、リューとエリザベータの仲も大分打ち解けたのであった。


そして、一ヶ月後、二人はミムルへの街へと到着した。




  * * * * *




街の城門が見えてきた。


そのまま門に近づいていくと、警戒した門兵から誰何された。


リュー 「久しぶりだな、タイクウ」


タイクウと呼ばれた門兵は不思議そうな顔をしたが、リューの顔を見て、一瞬の間の後、驚いた顔をした。


タイクウ 「おまえ、リューか?!」


リュー 「ああ、リュージーンだ」


リューはギルドカードを差し出す。


見慣れない色のカードを訝しげに受け取ったタイクウは、裏書きを見て驚いた


タイクウ 「え、えすらんくぅ?! 本物か、これ?」


リュー 「ギルドカードは偽造なんかできないのを知ってるだろう? 信じられないなら読み取り機に掛けて確認してみればいいだろう」


タイクウ 「あ? ああ。悪いがそうさせてもらうよ……悪いが、偽物だったらたとえリューだろうと……


…本物かよ! 驚いたな、万年Gランクと言われていたリューが! 大出世かよ! まぁ俺は、お前はいつか大成する奴だと思ってたけどな!」


リュー 「ふん、よく言う」


リューは水晶に触れ、犯罪歴等がない事を確認させると、いつまでも感慨深げに頷いているタイクウを置いて街へと入っていった。


少し歩くとすぐに冒険者ギルドが見えてくる。どの街でも、冒険者ギルドは門の近くの大通り沿いに建っている事が多い。それは、魔物が襲ってきた時の緊急対応のためである。


冒険者ギルドに入ったリューとエリザベータ。


一瞬、中に居た冒険者達の視線が集まるが、すぐに離れていく。今ではリューも舐められていきなり絡まれたりはしない程度には貫禄が出てきたのであった。


リューは中を見回したが、知っている顔は居なかった。受付を見ても、知っている受付嬢も居なかった。


リューは受付カウンターに近づき声を掛ける。


受付嬢 「いらっしゃいませ! 冒険者ギルドへようこそ! 本日はどのようなご用件ですか?」


リュー 「ギルドマスターに会いたいんだが、居るか?」


受付嬢 「アポはお有りでしょうか? ない? すみません、アポがない方とは、急に来られてもお会いできないんですよ」


リュー 「リュージーンが来たと伝えてみてくれないか?」


リューがSランクのギルドカードを見せながら言う。


受付嬢 「……なんですかソレ? 見た事のない色のギルドカードですが、ちょっと拝見しても?」


カードを受け取った受付嬢はそこに書かれていたSの文字にギョッとするも、念のため読み取り機に掛けて確認してみた。


受付嬢 「こっ、これは、本物のSランク!? 失礼致しました! 少々お待ち下さい!」


慌てて奥にあるギルマスの執務室に駆け込んで行く受付嬢。すると、執務室の扉が開き、受付嬢とともに懐かしい顔が出てきた。


キャサリン 「久しぶりね、リュー!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


受付嬢


乞うご期待!



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