第509話 あれから幾星霜

リュー 「最凶の狂剣士?」


ランスロット 「ええ、天才的な剣の才能を持ちながら、それを世のため人のために使おうとせず、人を殺す事を生きがいにしていた男です。しかも、奴は戦闘狂で強い相手を求めていると言いながら、弱い者達を蹂躙するのも大好きという、始末に負えない奴でした。一体どれほどの人間が奴に殺されたか…」


ニビル 「俺様の紹介は終わったか?」


ランスロット 「しかし、アンデッドになってまで生き延びようとは、らしくないですね。生に固執するタイプには思えませんでしたが」


ニビル 「骨のバケモンになったオメェにいわれたくねぇけどな。まあ俺より強ぇ奴もいなかったし、つまんねぇからそのまま死んでもいいかと思ってたんだがな。こんな俺を不死人にしてくれるって変な奴が現れてなぁ。長く生きりゃぁ俺より強い奴も現れるかと思ってよ。現れなかったけどな。勇者なんて称号を持つ奴らとも戦ったが、全員大した相手じゃなかった」


その時、遠くで爆発音がした。


ニビル 「おっと長話してる時間はねぇ。せっかく再会したところ残念だが、今は他にやる事がある。邪魔しねぇなら見逃してやるぞ?


どうせオメエの腕じゃ俺には勝てねぇ。せっかく骨の体になってまで生き延びたのに、また殺されたくねぇだろう?」


ランスロット 「あの時の私とは違います。あれから幾星霜、私は自分の剣技を磨き続けてきたのです。もう負けませんよ。だいたい……忘れたのですか? アナタを殺したのも私だと言うことを」


ニビル 「まともにやったら勝てねぇから相打ち覚悟で卑怯な手を使っただけだろうが。同じ手は通用しねぇ、やるってのなら殺ってやるぞ? 今度こそ、完膚なきまでにな!」


再び切り結び始める二人。


二人の動きのあまりの激しさに、衝撃波で壁が崩れてしまったが、そこから二人は校庭に飛び出し、なおも戦いを続ける。


だが、ランスロットの様子がおかしい。


ランスロット 「まさか…こんな……」


ニビル 「ほう、確かに腕をあげたようだな。だが……何万年も修行してきたのはオメエだけじゃねぇんだよ!」


ランスロットが押されているのがリューの目から見ても分かった。


リュー 「大丈夫か、ランスロット? なんか手こずってるようだが、手を貸そうか?」


リューの剣の腕はランスロットには未だ及ばない。そのランスロットが勝てない相手にリューが剣で勝てるはずはないのだが……


それは純粋に剣技で勝負した場合の話。


リューの能力スキルをフルに使えば、たとえ最凶の狂剣士であろうとも敵ではないだろう。


ランスロット 「いえ、大丈夫です。奴とは少々因縁がありまして。ここは私を信じて任せて下さい。それより、もうひとりの女が気になります。先程、生徒達を皆殺しにすると言っていました。殺した数を競うとも。おそらくあの女は魔法使いです。リューサマとは相性が良いはず……」


リュー 「そうか、分かった…」


ふと見れば、いつの間にかパーシヴァルとエヴァンスも姿を現していた。ランスロットの因縁の戦いだからか、二人は手を出さずに戦いを見守っているが。


ランスロットを信じないわけではないが、最悪、ランスロットが窮地に追い込まれても、二人が居ればなんとかなるだろう。そう判断したリューは、もう一人の女を探す事にした。


神眼を使って学内をサーチ……するまでもなかった。別棟の校舎の一階で派手な爆発が起きたのだ。そこに駆けつけるリュー。


そこでは、マグダレイアが襲撃してきた女魔法使いジジと戦っていた。


マグダレイアはその超人的な身体能力で相手の攻撃魔法を躱しながら戦っていたが、魔法使い相手の戦いはさすがに不利であった。


ジジは、狂剣士ニビルと競うと言っていただけある、化け物のような魔法使いであった。無詠唱でとんでもなく強力な魔法を次々放ってくるのだ。マグダレイアは善戦はしているものの、既にボロボロであった。


ジジ 「はぁ世の中広いわねぇ、私の魔法を剣で切り捨てる奴がいるなんてね」


マグダレイアは放たれるジジの魔法を剣圧で切り裂き弾き返し、同時に闘気で身を守ってはいたが、相手の攻撃が強力過ぎであった。防ぎきれなかった攻撃がマグダレイアの体を痛めつける。


リューが駆けつけた時、マグダレイアはもう限界に近い状態であった。


リュー 「レイア、大丈夫か? よく頑張ったな」


マグダレイア 「こ、これは!」


リューが【巻き戻し】を使ってマグダレイアの傷ついた体を治してやったのだ。


リュー 「もう大丈夫だ、後は任せろ」


マグダレイア 「駄目よ、いくらあなたが強いと言っても、あれは……旅の途中、噂で聞いたことがある。アイツは悪魔の女と言われた極悪魔女レディー・ジジに違いない! 一人二人で太刀打ちできる相手じゃない、魔法兵団を呼んできて!」


リュー 「大丈夫だ……俺は魔法使いの天敵だからな」


ジジ 「なんか今面白い事言ったわね? 天敵とかなんとか? このレディ・ジジ様に敵なんているわけないでしょう?」


リュー 「ふふっ、レディなのにジジィってか」


ジジ 「…ちょっと。アンタ、今、言ってはいけない事を言ったわね? アンタは簡単には殺さない。両手両足もいで泣きながら殺して下さいって言うまで痛ぶってやるわ」


ジジが強力な魔法をリューに向かって放ってきた。


だが……


それはリューに到達する前に掻き消えてしまう。


ジジ 「なっ、何?!」


リュー 「時間がない。アッチが気になるんでな。簡単に終わらせてしまって悪いけどな」


リューが魔力分解を使う。そう、全ての魔力を分解してしまえるリューは、まさに魔法使いの天敵と言える存在だろう。


リューがジジに向かって手をかざす。ジジはその間も手加減なしの全力の攻撃魔法を次々に放っていた。一つ一つが校舎をまるごと消し飛ばしてしまうほどの威力であるが……全てリューに近づくと掻き消えてしまう。


しかも、徐々にジジの体に近いところで魔法が消えるようになり、ついに、一切の魔法が発動しなくなる。


ジジ 「そんなっ……ばっ……くぅ、うぅ……」


急にジジが苦しみだし、膝をついた。


リューがジジの体の内部にまで魔力分解を作用させたためである。


魔力切れは、なれないと非常に苦しいものなのである。もともと魔力が極小の人間であれば、それでどうこうというものでもないのだが、なまじ多大な魔力を持っている者はショックが大きい。


膨大な魔力をその身に内在させている状態が生まれた時から当たり前のジジであった。体内から一切魔力がなくなってしまう、そんな経験はした事がない。


その苦しさに、ジジは悶絶してしまったのであった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


撃退


乞うご期待!



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