第388話 ゼヒロの奥の手とは?

ゼヒロ 「……くくくくっ、どうやら! やっと! 俺が! 本気を出せる相手に出会えたようだな!」


リュー 「今までのは本気じゃなかったとでも?」


ゼヒロ 「いや、全力だったよ。だが、真の力は秘したままだったのだ。だが、これまで封印してきた、俺の真の力を、ついに明かすときが来たようだな!」


リュー 「なんとなく言ってる事がいちいち厨二病臭い気がするなぁ…」


何をする気なのか、雄叫びを上げるゼヒロを少し離れて見ていると、ゼヒロの身体が大きくなったように見える。気のせいか? と思ったリューだったが、明らかに大きくなっている。どんどん巨大化していくゼヒロ。二倍、三倍、四倍程度まで大きくなっただろうか?


しかも、先程までとは明らかに凄みが違うようだ。リューが神眼で【鑑定】してみる。


リュー 「…なるほど、お前も人間じゃなかったようだな。鬼人族? オーガの血も混ざっている? 人間の血も入っているようだが、なるほど、お前もダークフォークの一種というわけか……」


ゼヒロ 「【鑑定】持ちか……ああ、そうだ。俺は亜人と人間を混ぜ合わせて作り出された種族なんだよ。この姿を晒さなければならないほどの相手は初めてだ。だが、能力を解放した以上、お前に勝ち目はないぞ」


身体が大きくなったせいか、ゼヒロの声は先程よりも低く大きくなり、地響きのように響く。


リュー 「しかも……でかくなったパワーが上がっただけでなく、レベル上昇の能力もあるのか、(俺以外では)初めて見たな」


ゼヒロ 「ほう、そこまで分かるのか。鬼人の血が為せる能力、鬼人レベル上昇だ。身体に負担が掛かるので、無理すると反動が大きいが、セーブして勝てる相手ではなさそうだからな」


リュー 「面白い。じゃぁもう一度、仕切り直しだな」


ゼヒロ 「…覚悟する事だ」


ゼヒロが腰を低くした。と思った瞬間、リューの背後に移動していたゼヒロが、リューをサッカーボールのように蹴り飛ばす。


否、蹴ったはずだったが、リューはそこにもう居らず、少し離れたところに移動していた。


だが、一瞬で背後を取られたリューも驚いていた。対応が遅れ、やむを得ず一瞬時間を止めなければ避けられなかったのだった。


正直、この世界に来て能力を思い出してからは苦戦するような敵には滅多に出会わないので、どうしても油断してしまうところがある。だが、相手のレベルはリューの予想を上回っているようだ。リューも相当レベルを上昇させないと対応できなさそうである。


ゼヒロ 「……おや? 確かに蹴ったと思ったんだがな」


空振りしたゼヒロも驚いていたが、リューの姿を見つけると、即座に突進してきた。今後はその巨大な拳がリューに向かって飛んでくる。そのパンチをブロックしたが、そのまま吹き飛ばされてしまうリュー。


数百メートル飛ばされたリューは、だが、ヒラリと身体を反転させて着地した。もちろん無傷である。


リュー 「もう拳は使えんのじゃないか?」


リューは一瞬、そのとんでもないパワーを受け止めてみようかと思ったのだが……リューも竜人レベルをさらに上昇させており、パワー的には受け止める事も不可能ではないだろう。だが、あまりにもパワーが強大過ぎて、地面が柔らかすぎて持たないと判断。事実、ゼヒロが走った足跡は小さなクレーターのようになっている。


それにそもそも、パワーは十分でも質量がなければ受け止められない。いつもは重力魔法を使って質量を自身に与えていたリューだが、ゼヒロの強大なパワーを受けて飛ばされないほどの重量を自分の小さな身体に与えてしまうと、地面に足がめり込んでしまうだろう。


そこで、リューはパンチを “止める” 事は諦め、受けながら飛ばされる事を選んだのだった。


そして、パンチを受ける瞬間、リューは肘をゼヒロの拳に向かって突き刺すようにブロックしていた。直径五十センチはあろうかという巨大化したゼヒロの拳の、中指の中程にリューの肘が突き刺さる形となっていた。


ゼヒロ 「…っ! きさまぁ……」


リューの肘を殴ってしまったため、ゼヒロの指の骨は砕けてしまっていた。


顔の前に肘を突き出し、ポンポンと叩いて見せるリュー。


リュー 「骨の強度は俺の勝ちみたいだな」


ゼヒロ 「まだだぁ!」


ゼヒロは懲りずにまた走り込んでくる。(もはや常人には見えない速度域の戦いであるが。)


今度はまた蹴りを放ってきた。ボールを蹴るように下からリューを蹴り上げようとするゼヒロ。


リュー 「学習しない奴だな」


リューは今回も避けずに受け止める。上から下に向かって打ち下ろすような角度になっていたので、地面の強度の不安があったが、今度は下から上に蹴り上げてきているので、土台を心配する必要も無い。リューは肘を突き出してブロックすると同時に、インパクトに合わせて瞬間的に体重を百倍にも増やした。


人間に例えるなら、とんでもなく重い小さな金属の突起を思い切り蹴り上げてしまった状態を想像すれば分かりやすいだろうか。


ゼヒロの蹴りはリューを僅かに浮かせ、数メートル飛ばしたが、インパクトの瞬間、ミリッと嫌な音がしていた。一瞬の後、ゼヒロは悲鳴をあげ、痛みで地面に巨体を転がす事になるのであった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


従魔バトル

リュー 「ランスロット、君に決めた!」


乞うご期待!


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