第369話 ミィを神眼でチェックするリュー
リュー 「確かに、俺には奴隷を解放する能力はあるけどな」
リリィ 「じゃぁさっさと解放してあげちゃいなよ。かわいそうだろ? こんな娘が、夜な夜な奴隷として男達に弄ばれてるんだよ?」
リュー 「そうなのか? 奴隷である事は秘密なんだろ?」
リリィ 「奴隷ギルドのエージェント達には公然の秘密なんだよ。それをいい事に、いやらしい真似をする奴は後を立たないのさ」
ミィ 「…ダメです…」
リリィ 「あら? アンタだって解放されたら嬉しいだろ?」
ミィ 「それは…ソウデスガ……でも…私は借金奴隷なので。借金を返さないまま隷属の魔法を勝手に解除して逃亡したら、重犯罪者として指名手配される事になるんです。それで捕まれば、問答無用で処刑されるか、死ぬよりつらい労役に送られるしか選択肢がない…と」
リュー 「だろ。借金奴隷を勝手に開放すると、踏み倒しになってしまう。俺は王に奴隷解放の許可を貰っては居るが、それはあくまで違法奴隷に関してだ。奴隷ならすべて自由に開放していいというわけでもない」
リリィ 「いいえ、大丈夫よ。だってこの娘は違法奴隷なんだから」
ミィ 「え?」
リリィ 「アンタ、
ミィ 「…契約の内容については、話す事はできません……」
リリィ 「話してはいけないって命じられているんだね、分かってる、別に言わなくてもいいよ。
だけどね、重犯罪者や戦争奴隷なら別だけど、借金奴隷については、
ミィ 「え? そうだったんですか?!」
リリィ 「やっぱり知らなかったんだね。おそらく、返済期間を短くしてやるとか言われて同意させられてしまったんだろ?」
ミィ 「……」(ミィは契約内容を明かす事ができないので黙っている。)
リリィ 「でもそれは、たとえ本人が同意していたとしても違法よ。つまりアンタは違法奴隷という事になるわけ。これは奴隷ギルドが独自に定めている内部ルールに照らしても違反となっているわ。
そして……リュー。アンタは違法奴隷ならば開放する権限を王から貰ってる」
リュー 「確かに、違法奴隷なら解放しても問題ない。…違法奴隷である事が確実なら、な」
リューならば神眼を使って心の深層部まで読めば違法奴隷かどうかは分かるのだが、それはリリィには言えない。
そもそも、例え心が読めようとも、何が違法で何が合法なのかをリューが理解していなければ、判断がつかないのだが。
リリィ 「この娘は違法奴隷よ、間違いないわ、アタイが保証する。だからチャチャっと解除してあげちゃって!」
リュー 「…そう言われても、リリィがどんな立場なのかイマイチ分からん、口頭で言われただけでは証拠がなぁ」
リリィ 「アンタは【鑑定】で違法奴隷かどうか分かるとも聞いているわよ? 分かるんじゃないの?」
リュー 「ああ、【鑑定】ね…そうだな、やってみるか」
リューは心が読める事は秘密なので、【鑑定】ができるという事にしている。(以前は【神官】が持っているスキル、
じっとミィを見つめるリュー。ミィの表面上の心理偽装も奴隷だとバレた時点で解除されているので、奴隷である事はすぐに分かった。だが、“違法” かどうかは、表面上の情報だけでは判断できない。
さらに深く心を読んでみるリュー。
すると、ミィの奴隷になってからの辛い生活が垣間見えてしまうのであった……。
隠れ奴隷の立場になってから、ミィに与えられた任務は、実はそれほど危険な事はなかった。ただ、任務のために身体を使って接待のような事をさせられる事は多かった。娼婦の真似事をさせられたりした事もある。そういう事をさせるのが狙いでミィを奴隷にしたのであるから当然であろう。また、奴隷ギルドの
それらはミィにとっては苦痛の記憶である。奴隷としてある程度感情を麻痺させられて居たのでなければ耐えられなかっただろう。
一応、警戒して傍観者的に観察する事に徹したので、リューがミィの辛い体験を “追体験” するという事は今回はなかったのだが……ミィの辛い気持ちはそれでも十分に理解できた。
リューの表情が変わった。
リューは黙ってそのままミィに向かって手を翳す。
リュー 「奴隷から解放する」
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次回予告
解放されたミィの目から涙が溢れる
乞うご期待!
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