第323話 ククク奴らは我らの中では最弱

リューを槍で刺そうとした門番ズ。口では追い払うだけのような事を言っていたが、本当に刺さっても構わないという鋭い突きであった。おそらく、仮に怪我をさせてしまっても平民相手であれば特に問題ないと思っているのだろう。


その態度にちょっと腹を立てたリューは、瞬時に亜空間から武器を取り出しその槍を弾き飛ばすと、門兵の二人をちのめした。


手に握っているのは、久々登場の素振り用の棍棒である。


未必の故意的ではあったが、明確な殺意というわけではなかった。それに、挑発的な態度でリューのほうから誘った手前、斬り刻むほどではないかと思い、リューは剣ではなく棍棒で打ちのめす事にしたのであった。


門番A 「ぶげぇっ!」

門番B 「ぐはっ!」


門番の一人は重い棍棒で横から薙ぎ払われ上腕を骨折、もう一人は胸を突かれ胸骨を骨折した。


門番A 「ぐっううぅぅ、こんな事して、ただで済むと思っているのか?」


リュー 「剣を使わず、打撲程度で済ませてやったのだからラッキーなんだぞ?」


エヴァンス 「折れてるって」(笑)


リュー 「…しかし、素振り用の棍棒じゃなくて、攻撃用の鉄の棒でも今度作るかなぁ……」


パーシヴァル 「それならば、スケルトン兵の中には鍛冶が得意な者も大勢おります故、今度作っておくように命じておきましょう」


リュー 「そうなんだ? じゃぁお願いしようかな?」


そう言いながら、倒れている門番を無視して悠々とキロンの屋敷の敷地に入っていくリュー達。


その後ろでは門番ズが門の内側の簡易詰め所に這うように辿り着き、通信用魔道具で何やら連絡を入れていた。


さすが代官の屋敷、無駄に広い。門を入ってから正面玄関までかなりある。ようやく玄関に辿り着きドアを開けるリュー。


すると、中には騎士達がズラリ並んで待っていた。また、背後にも外から騎士達が駆けつけて来て挟まれる形となった。


騎士達の隊長らしき者が叫ぶ。


ペニー(隊長) 「止まれ! 貴様ら何者だ!」


リュー 「代官のキロンに用がある。通してもらおうか」


ペニー 「アポはあるのか?」


リュー 「約束はしていないがな、居るんだろ?」


ペニー 「見たところ平民の冒険者のようだが、貴族はいちいち平民に会って話を聞いたりはせんのだ。用件なら裏に回って使用人に言え。そんな事も知らんとは、これだから下賤な冒険者は困る……


…ん? お前、以前キロン様に逆らって捕らえれたシスターではないか?」


リュー 「ああ、モリーが大分世話になったようなのでな、その礼をしに来たのだ」


ペニー 「ほう、見たところ奴隷の首輪もしていない。どうやったか知らんが、奴隷落ちを免れたか? …はぁん、なるほど?」


リュー 「?」


ペニー 「どうやったか知らんが、奴隷にされる前にうまく逃げ出したのか。それを捕らえた冒険者が小遣い稼ぎに来たというわけだな? いいだろう、キロン様には伝えておく。褒美は後で届けさせるから、女を置いてさっさと立ち去るがいい」


それを聞いたモリーが一瞬身を固くするが、もちろん、心配は無用である。


リュー 「何か勘違いしているようだが、モリーを渡す気はないぞ?」


ペニー 「ならば何をしに来た? 貴族の屋敷に押し入ってタダでは済まんぞ?」


リュー 「モリーを拷問した挙げ句、無実の罪で奴隷に落としたけしからん代官を懲らしめに来たんだよ。邪魔をするならお前達も同罪だ」


ペニー 「貴様、状況が分かっておらんようだな。門番の二人を倒して来たようだが、奴らは我らの中では最弱、だから門番などさせられておったのだからな」


騎士達の間から笑いが起きる。


ペニー 「ここに居るのは一騎当千の精鋭ばかりだ、並の騎士とは違うぞ? 平民が百人掛かりだろうが騎士一人に歯が立たんだろう…」


リュー 「ん? 一騎当千なのに百しか相手できないのか?」


ペニー 「…千人と等しいから百人では歯が立たんと言う事だっ!


大人しく武器を捨てて降参するがいい。そうすれば痛い思いはしなくて済むぞ。


まぁ貴族の屋敷に押し入ったのだから処罰は免れんだろうがな。奴隷落ちは確実かな?」


リュー 「やっぱ、こういう展開になるよねぇ……」


ペニー 「今更後悔しても遅い。捕らえろ!」


パーシヴァルとエヴァンスが動こうとしていたがそれをリューが制する。


リュー 「任せろ」


次の瞬間、眩しい光とともに雷撃が周囲を取り囲む兵士達を襲った。


エヴァンス 「おお、雷属性の攻撃魔法!」


エヴァンスは魔法が得意なので気になるようだ。見れば、いつのまにかリューは白の(光の)仮面を装着していた。


リュー 「ああ、バラス男爵の騎士達が雷撃を使っていたと聞いてな。珍しい属性の魔法だが、ちょっと考えてみたら、光の属性の派生属性なんじゃないかと思って試してみたらビンゴだったんで、隠れて練習してたんだ」


エヴァンス 「いかにも、雷属性は分類上は光属性または聖属性に属する派生属性と言われておりますな」


ペニー 「馬鹿め、魔法障壁を張っておらんかったのか、油断しおって!」


取り囲んでいた兵士達は大部分は感電して倒れていたが、何人かはダメージを受けずに立っていた。どうやら予め障壁を張っていたらしい。(電気の速度は光の速度と同じと言われている。見てから対応できるものではない。)


ペニー 「雷属性とはな……。選ばれた者しか使えん高等属性の魔法を冒険者ごときが使えるとは驚いたぞ? だが、我々には通用せん、雷撃を防ぐ魔法障壁も我らは身につけておる!」


リュー 「おやそうかい?」


そう言いながら再びリューが雷撃を放つと、残っていたペニー達も全員感電して倒れた。


ペニー 「ば…かな……防御障壁が…消えた?」


リュー 「先を急ごう、キロンに逃げられても困る」


奥に進むリュー達。階段を登り、奥の部屋に進む。時折、待ち伏せている護衛の騎士が襲ってきたりしたが、隠れているのはリューの神眼でバレバレであるので、瞬時に雷撃スタンで倒していく。


リュー 「電撃、なんか便利だな。一瞬で相手を無力化できる」


エヴァンス 「電流多すぎると死んでしまいますけどね」


屋敷の中を進み、最奥の部屋の前まで来たリュー達。部屋は、子爵の執務室である。


その扉を、リューは勢いよく開いた。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


下衆ゲスな貴族はお仕置きだ~!


乞うご期待!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る