第219話 事後処理2
■余談(各方面のその後)
勇者の情報を止めていたバシマは、懲戒免職の上、国が払う事になった賠償金の半額を請求される事となった。半額とは言え、国家予算規模の金額となる。そんな借金を払えるはずもなく、バシマは借金奴隷に落ちる事となった。借金を返し終えるまでは奴隷の身分から解放される事はない。そして、金額的にはおそらく死ぬまで開放される事ないであろう。
また、王宮内で働く者の中で思想調査が行われ、勇者教信者は全員王宮から排除された。信者たちに罪はないという者も居たが、勇者を罰する事になる以上、信者たちが反乱を起こす可能性がある。安全確保のため、排除は仕方がない事であった。狂信者には法律など関係ないのだから。
勇者パーティのメンバーは、一時拘束されたものの、勇者の権能で隷属させられていただけという事が認められ、解放された。聖女を汚された事実を知った教会からは厳重な苦情があり、国が賠償金を払わせられる事になった。
勇者が人々を幸せにすると信じて勇者パーティに参加したアガタ。勇者の実体を知りショックを受けるも、隷属の影響で自由を奪われながらも、なんとか勇者を諭し、道を正そうと努力していたのだが、結局徒労に終わってしまった。あげく、お前の努力が足りなかったせいではないのか? と “汚れた聖女” という汚名まで教会から浴びせられる事となり、とうとう教会に嫌気が差し、教会を去って行った。
本来聖女が教会を脱退するなど許される事ではないのだが、教会としても、汚れたイメージの聖女を歓迎しないという事情もあったため、特例として認められたのであった。
その後アガタはその治癒能力を活かしながら市井の中で生き、街角の聖女として人々に敬愛される事になる。
聖盾騎士のジョディは、王宮で働く事を希望し、王宮騎士団に入隊が認められた。
魔女シャルと拳闘士ココは今後は冒険者として活動するらしい。二人とももう勇者は懲り懲りのようだ。もともと二人共極めて優秀な者たちであったので、冒険者としても成功を収めるだろう。
* * * *
リューとヴェラの扱いについては、ガリーザ王国に倣って名誉国民という扱いにしようという事になった。
国民としての義務は負わないが、国民として保護するという、実に都合が良い立場である。
それは、そうまでして、リューとの関係を保持しておきたいという国の気持ちの現れなのであろう。
― ― ― ― ― ― ―
ちょっと意外だったのはヴェラもこの国の人間ではなかったと言う事。いや、リューもヴェラの正体には薄々感づいては居たが、あえて追求もしないし神眼で探る必要もないと思っていた。
もともとヴェラはリューから見てあまり心が読めないところがあった。神眼の影響で、なんとなく表面的な心の動き程度は平常時でも敏感に感じ取ってしまうリューであったが、ヴェラについては読めない事が多かったのである。
もちろん、リューがその気になれば――神眼をフルパワーで使えば見えるとは思うが、身近にいる人間の心を読んでも人間不信になるだけな気がして、リューはなるべく心は読まないようにしていたのである。
― ― ― ― ― ― ―
リューの叙爵の話は取り下げられ、褒章としては大量の金貨が支払われる事となった。
それを受け取ったリューとヴェラは、しばらく王都を観光した後、シンドラル領には戻らず、そのまま旅立つ事にした。
シンドラル伯爵は当然リューには自領に戻って欲しいところであったが、決意が固い事を知り、無理に引き止める事はしなかった。
もともと、バイマークでの報告が終われば旅に出る予定であったリューとヴェラである。せっかくフェルマー王国の王都フェルマリアまで来たのだ、今の所、また辺境のシンドラル領の方向に戻る理由がないのであった。
もちろん、ネリナからは、一度バイマークの冒険者ギルドに報告に戻るよう要請があったのだが、リューが転移でバイマークに戻りネリナに報告し、報酬を受け取ってこの件は終了となった。
バイマークの冒険者ギルドとしては次の仕事を斡旋したいところだったが、リューはバイマークではもう仕事は受けず、報告後すぐに転移で王都に戻ってしまったのであった。
* * * *
王宮を出たリューとヴェラ。
王と宰相からは「いつでも王宮に遊びに来て良い」とは言われたが、用もないのに王宮に遊びになど来るわけがない。王も宰相も本当はアポを取るだけで一苦労なほど多忙な身なのだから……。
リューとヴェラは宰相に紹介された、王都でも最上級の宿に宿泊する事にした。
王宮が宿泊費を持つと言われたが、最初リューとヴェラはそれを断った。国の予算を使うと言う事は、国民が払った税金を使う事になるのではないかと思ったからである。だが、国の予算とは別の、王族の資産から出すから問題ないという。王に是非そうさせて欲しいと強く言われ、断れなかったのであった。
だが、一泊しただけで二人は宿を引き払い、旅立ってしまったのであった。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
王都の冒険者ギルドに王宮から推薦?
リューはどこに???
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます